#161 三点
街のあちらこちらで水を吸い込む機械の音がする街、学園都市ゼルティア。
雪解けが進み、誰一人して被害を出すことのなく大災害を乗りきった――のだが、それは表向きの話。
「こっちも配線イカれてるし、もう嫌!」
イリスの喚き声が聞こえる。
「文句言わない事。大穴が空いてたセンターベースに大雪が降ったのよ。無事な訳ないじゃない」
雪の重みと雪解け水で配線が絡まったり、はたまたショートしたりと、散々な結末になっていた。
「…火事が起きなかっただけマシかもしれないわ」
雪が空気を塞ぎ、消火も兼ねてくれたことは不幸中の幸い。
「リゼリアも悪いわね。復活したばかりなのに酷使させて」
「問題ない、ですわ!ワタクシ結局何もしていなかったですし、ぜーんぜん…」
強がってはいるものの、やはり疲労が見えていた。
「適度に休んでも構わないから、しっかり休息を取るのよ」
「ちょっと私は!?」
「貴方はもっと働きなさい」
そして、またもやイリスの喚き声が響いた。
「静かにしてくれ。疲れてるんだよ…」
ガルドの嘆きは、イリスには届かなかった。
そして、もう一人――
時を同じくして、こちらはファント。
久しぶりに帰ってきたついでに、他の七不思議達に報告しに行こうと思ったのだが…
普段は綺麗に掃除されているはずのミネルヴァの廻廊が荒れていることに気がついた。
正確には――放置されたように見えた。
「――何があったのでしょうか。彼女が掃除を怠るだなんて珍しい…」
普段は、全く掃除をしない3番や4番の事を叱っている。
そんなミネルヴァがやっていないということは、何かしらの大きな事情が――
「まさか…!」
不意に一つの考えが浮かんだ。
「もう消えてしまって…」
そこで、ファントは思い止まる。
「いや、消えたなら廻廊ごと消滅しているはず。それでも…」
走り出さずにはいられなかった。
廻廊、最奥――
「キッー!」
とてつもない勢いで、何かが跳んできたと思うと――
ベチン!
「…顔に張り付くのは止めてくれないか」
すると、そこで羽根をバタバタしだすのだからたまったものではない。
「…いい子だ。落ち着いてくれ。そして何があったか――」
すると、いきなり離れて飛んで行った。
「なるほど。ついて来い――と」
しばらく進むと、そこにはミネルヴァが横たわっていた。
「…無理しないでくださいよ」
今は寝ているだけなのだろうか。いや、寝ていたとしても問題だが。
「禁忌に触れたんですね。我々を救うために――」
あれ程言ったのに、どうして…
ともかく、今は維持を最優先。
それと…
「君に頼みがある」
「キ?」
ミネルヴァの上に置いて、小生は少し離れた所へ――
「これでよし。君には小生が縁を切った後、また君ぎ彼女と繋いでほしい」
よく分かっていないようだった。
「――ま、やれば分かるだろう」
一度魔力を収束させる。
「"盟友の絆"、この時を持って解除する!」
その瞬間、ミネルヴァは七不思議ではなくなった。
そして――
「君の出番だ」
「キッ!」
今までの従属関係は消え失せ、対等な関係へと生まれ変わる。
その後、再び7番が生まれたのだった。
「…後は頼んだよ。μ's君」
ゼルティアから直線距離にしておよそ1500km。
ゲルゼズ首都中心街――
「次は向こうへ行きましょう!」
どうしてか、ポラリスに連れられる湊の姿があった。
「夜中になったら任務に戻らないと――」
日はほんの少しだけ傾いていた。
「まだ2時間あります。楽勝です」
しかし、不安はそれだけではない。
「いや、いつ襲ってくるか分からないからさ…」
そもそも、この状況も見られている可能性がある。
「ルナには私が言っておきます。大丈夫ですって」
「それに、リツカの仲間も――」
その時、右腕を捕まれた。
「…」
怖い。
グッと凄まじい力で引っ張られる。
「ど、どこに――」
よろけた時だった。
今まで立っていた場所に大穴が開いた。
「なんだ、これ…」
「危ない!」
突然押し倒される。
「ポラリス!?」
その瞬間、あれが光った。
「爆発?場所の特定!急げ」
イチニノサンで動き出す本部。
そして、「首都中心街で爆発!死傷者不明。ですが――そこには、白石がいます」
「相変わらずの疫病神だな」
しかし、それだけではなかった。
「電報。二つの街でも同様の爆発が起きたとのこと」
「…何が起きている?」
まさか、な。
嫌な予感がしたがきっと気のせいだろう――
奇しくも、それは当たることになる。




