#160 動く小さな捜索隊
捜査一日目――
僕らは、対策本部の名付けに悩んでいた。
893の人が、「好きに名前をつけていい」と言ったのが始まりだった。
「やっぱり、"ゲルゼズ史上未曾有の危機解決部隊"がしっくりくる」
「いやいや、シンプルに"特別捜査本部"でいいでしょう」
「それだと、何を追っかけているのか分かりにくい」
「なら、"未確認物体対策本部"とか…」
「それだとUFOじゃない!」
そんなやり取りを繰り返して、およそ30分。
「アホか。秘密組織に名前は着けない」
取締役の鶴の一声で、議論は終わりを告げた。
聞いた途端に、三人の顔は真っ赤になったのだった。
「あんな子供たちが、役に立つんでしょうかね?世界を救ったからって、流石に我々のような知能戦は無理があるのでは…?」
そう思われるのも当然だった。
しかし、893は確信を持っていた。
「どうだろうな。普段があんなでも、やる時はやるのが彼らだ。出なければ2度も世界の危機に対処出来ないだろう?」
そう言い、パンと手を叩く。
「捜査を始めよう。まだ出現情報が出ていない街は三つ。郊外"レナーズベルグ"と"カラコス"。そしてもう一つが、ここ"ゲルゼスタン"だ」
その声に、緊張が走る。
目の前の特大モニターには、それぞれの街の位置が示されていた。
「調査によると、同じ街には現れないという規則性を持っていることが分かります。さらに、一日に現れるのは一つの街のみです」
つまり、あと3日の内に来る可能性があるということ。
「じゃあ落ち着いて待とうよ」
ルナが椅子を回しながら言った。
しかし、893は顔をしかめて言った。
「そうしたいところだがな、予算が取れなくて2日分しか無い。他の省が渋ってるんだよ。"実際に何も被害を出していない奴を捕まえるのにそこまでする必要があるのか"――って」
んなアホな。
「ともかく、今日と明日しか残されていない。気を引き締めていくぞ!」
「オゥ!」
意気に部屋が揺れた。
「それぞれの街に捜査員が到着したようです」
出現は夜中。
それまでにどれだけ情報を集められるか。
襲ってきたらどう対処するかが求められている。
勿論、送られたのは精鋭中の精鋭。
しかし――
「どうして首都担当が僕なんですか!」
僕は今、街に放り出されていた。
「仕方がないだろう。おそらくこの中でもっとも戦闘力があるのが君だ」
「そんなこと言ったって、町中の戦闘は慣れてない――」
「大丈夫だ。夜中なら何とかなるだろう」
信用しすぎでは…?
「とにかく頑張れ!オールオーバー」
切れてしまった。
――観光だな。
だって何すればいいか分からないし。
「お供しましょうか?」
町中で出てくるんじゃない!
「独り旅は寂しいものでしょう。私がついていきますよ」
「ルナに誤解されると面倒な事になる。大人しく戻ってくれ」
「私はそれ以上の関係でありたい」
…てこでも引く気はないようだ。
「変な事するなよ。おそらく見られているからな」
「了解です!」




