↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
169/211

#155 氷漠

「私は負けたのだ。後は好きにするがいい」

戦意を完全に喪失し、受け入れるつもりのようだ。

とても、災害の発生元とは思えない振る舞いだった。

それでも、僕にはできない。

「君を倒すつもりなんて無い。地獄の氷河(コキュートス)を終わらせてくれればそれだけでいいんだ」

そのことに、"氷の魔女"は少し驚いたようだった。

「私を殺れば止まるだろう。なぜ情けをかける?」

その事が、ずっと不思議だった。

「死に執着しすぎだと思うけど⋯」

その言葉に、魔女は訝しんだようだ。

「私が何をしたのか知っているのか?」

湊が頷く。

「君のことは知ってる。400年前にありったけの人達を殺した存在」

「そうだろう⋯だから私は」

「それでも、僕は君を攻めることはできない」

たとえ、昔にほぼ全ての生命を奪った存在だとしても、それは仕方がなかったはずだ。

神格者がすべての元凶なのだから。

「⋯甘いって思われるかもしれないけれど、僕は――」

言いかけた時だった。

「ハッハッハ!」

突如として高笑いが響く。

その持ち主は――レイズだ。

「流石ですね。ラスボスですら従属させれるだなんて」

「従属⋯?」

「しかし、誰もそのような結末を望んでいない!」

憎悪が入り混じる、恐ろしい声。

「それなら、私はなんだってする」

レイズは拳を握った。

「ウッ⋯!」

"氷の魔女"が胸を抑える。

「まさか、暴走させるつもり⋯!?」

ルナが呻いた。

「それってどういう事?」

先輩が聞くと、ルナは早口で説明した。

「あのスキルは後付けで、魂と無理矢理接合しているって聞いたの。だから、遠隔からあのスキルに干渉することも出来る⋯らしい」

あまり自信がなさそうな声だ。

その時、魔女が言った。

「約束が⋯違うではないか!このスキルを消し去る約束だっただろう!?」

すると、レイズは歪んだ笑みを浮かべた。

「ええ。しかし、白石と和解してしまった。ならば約束を守る必要も⋯ありませんね」

己の利益のために使い捨てる、冷酷な笑み。

「クッ⋯しかし、こんなところで終わるわけには⋯」

横たわりながらも、魔女が手を伸ばす。

「まだ⋯仲間との⋯約束が」

「残念でしたね。それももう終わりです」

レイズは、無造作に足元に生えていた氷を踏んだ。

それは――パリンと音を鳴らして、割れた。


一方、フェイタルやセレナは、突如として感じた膨大な魔力を感じていた。

"氷の魔女"とは違う、比べ物にならない魔力。

まだ起きない二人をおいて、シフリスと共に湊の元へ寄る。

「黒幕(フェイタル)!戻ったのか」

「此花、その呼び方は止めろと⋯でも、それ以上に大変なことになってるな」

全員が、改めて魔女を見た。

和解できたと思ったその姿。

最早別人の魔力を放ち、人ならざるものへ変わろうとしていた。

「――止めるぞ」

その言葉に頷く。

"仲間との約束"がなんなのかは知らないが、せめて意識だけでも戻してやりたい。

一層、吹雪が濃くなる。

その冷気が肌を痛みつけた。

いや、これはきっと⋯

"氷の魔女"の心の痛みだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。