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#154 本気

「ああ…やってるし…」

ルナが呆れたように言った。

「一方的に甚振られるのが我慢できなかったんです」

「いつも自分がやってるのにね」

ポラリスが睨んだ。

「とにかく、これで落ち着きはしたでしょう」

"命の危機"とまでは行かないが、相当なダメージを負ったはずだ。

「お得意の"説得"の時間ですよ」

いつもなら間違いなくやっていたであろう。

僕は人を不用意に傷つけたくないから。

しかし、今回は乗り気になれなかった。

「今回悪いのはどう考えても"神格者"の方だし…」

勝手に生み出された存在を憎むのは、何か違うと思ったのだ。

「それに、それこそ自分のエゴの気が――」

その時、口を挟んだのは"氷の魔女"だった。

「その甘さが、己を敗北させるのだよ」

見ると、回復して立ち上がっていた。

「見ての通り、貴様らがトドメを刺し倦ねている間に傷は癒えた」

余裕に満ちた声で言う。

しかし、それは虚勢だった。

息は荒ぶり、立つのもやっとと言った感じだろう。

それでも、まだ武器と殺意を向けてくる。

「もう勝負は着いた!武器をおろして――」

「私には私の恭司がある!このような所で果てる訳にはいかない!」

目は真っ直ぐ湊に向けられていた。

その勢いに、思わず後ずさる。

「"氷華"」

その場にいた、湊以外全ての拘束。

「先輩!」

ポラリスを剣へと戻し、蔦を斬る。

しかし、コンと音を鳴らすだけだった。

「勝負だ」

魔女は杖を向けて叫ぶ。

「私と貴様――いや、白石湊!」


自分の攻撃のほとんどは、もう相手に知られている。

一方、相手の手数は無限大。

「先程のは、能力(スキル)の一部だ」と言わんばかりに、新たな攻撃を仕掛けてくる。

剣で斬りかかろうとすると、足下の凍結。

ウリエルを呼び出して溶かしてもらうも、その全てが後手後手の対応。

やっと動けると思うと、上空には氷の足場が出現していた。

空気中の水蒸気から生成したのだろうか。

その足場を伝い、四方八方から攻撃してくる。

再び、受ける事しか出来なかった。

攻撃能力だけで見たら、相手を封殺出来るスキル。

それを恐怖に感じたが、疑問もあった。

それだけの技量があるならば、僕を氷に埋め込む事も可能だろう。

しかし、それをしない。

それに、一対一で戦う――それこそが、もっとも非合理的なことだ。

拘束されている内は、簡単に殺れる。

その事に、ずっと違和感を持っていた。

「"氷霧"」

考えている間に、次の攻撃…!

大気が光る。

まさか!ととっさに判断し、目を瞑った。

光っているのは、光を反射した氷の粒だ。

目に入ると失明、吸い込むと気道破壊。

地味ながら、まさに必殺技。

――「四大霊王(ホーリー・バシリアス)!」

ラファエルとミカエルを召喚し、目が見えない間の剣と盾になってもらう。

しばらくは持ちこたえれるはずだ。

どれだけ飛散しているかは分からないが、とにかく屈む。

「ウリエル!焔化灯命(フレア)!」

大気中の氷が、水滴となって辺りに降った。

実質六対一。

しかし、魔女はその事には何も言わない。

スキルとして割り切っているのか、それとも…

「…"氷塊"」

周囲の雪や水滴が、一箇所に凝縮されていく。

全体攻撃…!

一度聖霊をしまう。

それはまるでハンマーの様に、直上から勢いをつけて振り下ろされた。

受ける…?いや!

"足下が凍結されないように、攻撃範囲外まで跳ぶ"

無茶だがやるしかない。

一瞬の間に跳ぶ。

幸い、雪が積もっていて着地ダメージは少なかった。

それでも、痛かった…

しかし、休んでは居られないと立ち上がる。

すると、そこには魔女が崩れていた。

「え?」

思わず声が出た。

何故崩れたかは、魔女自身が一番分かっていた。

「私の…負けだ」

遂に、力尽きたのだ。

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