#151 数多のエネルギー
…次!
とにかく急げ!である。
"法則王"は成すすべなしでバタリと倒れた。
「残りは…貴方」
ポラリスが向いたのは、"創壊王"ディミニスター=ロール。
あまり話したことはない。けれども、分かる。
…強い。
対滅仮現は、物事の破壊と創造を司る能力。
触れたものを崩壊させる左手。
新たに物体を構築する右手。
それはイメージだけで自由自在。
特に左手は厄介だ。
崩壊――つまり、生物を簡単に消せるということ。
さすがの私も、触れたら終わり。
――ならば、触れなければいい。
「"福祉"のラファエル。あの人を…湊を守りきって。誰も近づかせないで」
続いて、"属性"のウリエルと"戦闘"のミカエルを呼び出す。
「手加減はしない。特に左手には気をつけて」
二人はコクリと頷き、戦場へと駆け出した。
「先に私はこちら…」
"任務"のガブリエルとともに、あの四人衆とセレナの所へと向かう。
丁度、シフリスが起きたところだった。
「ん…ここは?私は…?」
「やっと起きたか。調子はどうだ?どこか傷まないか?」
実は戦闘開始から1時間も立っていない。
それでも、その時間はとても長く感じれた。
「…近いです」
すると、慌ててフェイタルは距離を取った。
少し気まずくなった時に、セレナが言う。
「彼、だいぶ心配していたのよ。涙まで流しちゃって…」
「流してない!」
「あら、そうだったかしら?それでも、心配は否定しないのね」
フェイタルが言葉に詰まった。
そして――"聖霊王"がやってくる。
「ラブラブな所お邪魔する」
「全然構わないわ。ドロドロの恋愛感情者が何のようで?」
「なに、氷を取り除くだけだ」
ガブリエルはそういって、氷を掴む。
「遠回りなことをせずに、無理矢理破壊してしまえばいい」
乱暴に握る。
「心に影響は出ないから安心して」
ポラリスがつけ添えた。
そして…小さく音を鳴らして割れた。
「しばらくしたら起きるだろう。あとは任せた」
「ごめんね。言葉足らずで」
そして、嵐のように去っていった。
「…ポラリスは何がしたいんだろう」
鈍感な白石湊は気付かないだろうが、矢印が特大サイズ。
湿度があるというべきだろうか…
「私の感情には気付いてくれなかったですよね…」
恨みが募った声が聞こえた。
「他人には敏感なくせして私のことには最後まで気が付かなかっただなんて…」
低く、押し殺した声だった。
「案外気が付かないんだよ。許してくれ」
「嫌です」
即答。
そっぽを向いている。
「…分かった。1日だけ何でもしていいから…」
その言葉を聞いた途端、口角を上げて醜い笑みを浮かべた。
慌てて言ったが、間違いだったかもしれない。
「なんでも、いいんですよね?」
大失態をやらかしたのだった。
再び戻ってきたポラリスは、その姿にあまり似つかわしくない黒い剣を出す。
湊の剣とどこか似ているようで、全く違う剣だ。
しかし――本当の武器はこれではない。
あくまでミスリードを誘うためのものだ。
それを見たロールは、右手から銃剣を創り出した。
すかさず発射。
一瞬で作った物だと思えない精度と速度で、それは飛翔する。
そして――ポラリスに当たった。
しかし、効いた素振りは見せなかった。
今度は、左手を地面へと触れさせる。
足場を切り崩す作戦。それは、ポラリス…の奥にいる湊へと向けられた。
「ええ!?」
急な襲来に慌て、危うく避け損なった所に…
ラファエルがいた。
「防御結界」
湊を包むように、球状の結界が出現した。
「あ、ありがとう…」
ポラリスは距離を詰める。
地面を切り崩すときは屈まなければならないため、避ける隙が生まれる。
ならば接近戦闘。
左手を向けられないように気をつけて…
すると、ロールは左手と右手を体の前で合わせる。
合掌――刹那、高エネルギーの波動が放たれる。
「ッ――!」
創り出した物体を破壊する時、エネルギーが生まれる。
それを再び創り出し、破壊――
それを繰り返すことによって、多量のエネルギーを生み出せるのだ。
予想外の攻撃に、ポラリスは距離を取る。
「…真打、登場よ」
"属性"のウリエルにより、大量の水が放たれる。
どのような気温でも凍らない、魔力が含まれた水だ。
崩壊させることはできれども、全てを消すなど困難。
続いて、ロールが立っていた地面が割れる。
「…!?」
ここからが本番。
ウリエルが火を出す。
水は蒸気へと変わり、視界を0にした。
そして、"戦闘"のミカエルとポラリスが、両死角から攻撃――
蒸気が晴れると、ロールが横たわっていた。
普段運動していなかったからだろうか、息が荒かった。




