#150 五大属性の片割れ
…
しかめっ面で経過を見守る人が二人。
そして、そのプレッシャーに耐える人が一人いた。
被検体は計三人。
ファント、リゼリア、シフリス…
それぞれに慣れた手つきで魔力を注ぐ。
しかし、顔には緊張が宿っていた。
最終目標は、氷を取り除くこと。
そのためにも、心の状態を知らなければならない。
故に、フェイタルは操る事で知ろうとしているのだ。
「…よし。これで問題ないはずだ」
少し休む。
"どんな事を考えているのか筒抜けになる"そのことには少し抵抗があった。
誰もが皆、心に傷を追っている。
それを土足で覗かれるのはとてもいい気はしないだろう。
なので、最も信頼している存在――シフリスで様子を見ることにした。
脳波の一種を読み取ってその時の感情を知る。
幸いなことに、他の神格者は皆、彼奴等に惹きつけられている。
私は落ち着くだけでいい。
「カノンさんは白石達の援護に向かってやって下さい」
そう最後に言って、瞼を閉じる。
薄命美人。
そんな言葉が似合う人生だった。
自分で言うのも恥ずかしいが、私は美しい方だと思っていた。
その美貌こそ、呪い。
勝手に好きになって、勝手に諦める。
纏わりつく欲情も、私には関係ない。
だから、私に向けないで!
みんなそうだ。
私に親切心を向けてくる奴らは敵。
何が傾城傾国だ。
所詮上辺しか見ていないんだろう?
金も権力も全ていらない。
私は常に独りぼっち。
「みんなそういうものなんだから」
私には割り切れなかった。
もういなくなって。
どうしようもないんだから。
だから、だから…
ヒトリにしないで。
「所詮、飽きたら捨てられるだろう」
あの男の言葉がまだ残り続ける。
「スキルがなければ生きる価値もない」
思い出すたび、おかしくなりそう。
重い女は嫌われる。
それでも、あの人は私を分かってくれる。
だって、始めて私を突き放した人だった。
始めて私が好きになった人。
彼にとってもそうだと嬉しい。
そう心から思った。
いつの間にか、暗い感情は消え失せる。
この人だったら、幸せになれる。
「マズいことを聞いたかもしれない…」
「何?浮気してた?」
どうしてセレナさんはこうなんだ。
「めっちゃ好かれてた。下手に覗くんじゃなかった」
あの女もいつもこんな感情になったのか?
「ま、嫌われるよりもよっぽどいいことじゃないの?」
すると、セレナは立ち上がった。
「私は向こう側を見てきますよっと。ドロドロの感情が渦巻いているわよ」
何となく誰のことか分かった。
「あの、"聖霊王"とか言うやつか」
「ええ。彼女、とんでもないわよ」
そう言って、大人しく去っていった。
…気持ちよさそうな寝顔を見てると、どうしても心が苦しくなった。
本当に、私が幸せにできるのだろうか。
こんな私が。
どうせ此花葵が見たら背中を叩いてくるだろうけど。
…そう言えば、いないな。
「ともかく、早く起きてくれ」
またあの顔を見せてくれ。
その時まで、ずっと側にいてやるから。
「淵源彗霊!」
直上に、雪さえ溶かしてしまいそうな巨大な火球が出現する。
僕が記憶を失った時に使われたあの技。
絶望感が半端ないのだ。
しかし、流石は神格者。
冷静に避けて…いや。
"避ける"という言葉には違和感があった。
瞬間移動の方が正しいのか、それとも…
"時間王"イラストリアス=ヴァンガード。
時を止める能力、光陰如箭の所持者。
「だからって、そんな長い時間止められるわけじゃないはず」
本人が以前苦情を言っていたのだから間違いない。
しかし、それとは別。
明らかに広い行動範囲がそれを裏付けている。
「…今まで本気じゃなかったのか、それとも誰かが関わってるとか?」
スキル助長系といえば真っ先に浮かんだのはフェイタルだが、今は正気に戻っているらしい。
ならば違う。
やってきそうな"能力王"もあんなところでバテている。
「…そもそも、どうして僕らを狙って来ないんだ?」
時が止まっている間に僕らを攻撃すればいい話じゃないか。
「"聖霊王"がいるからできないのか、それとも…」
その時、ルナと同時に閃いた。
「「無理していて、余裕がない!」」
それならば、解決できる。
手数で押し切る。
「じゃあ私も行ってくる。パートナーはここにいて」
軽く、大地を一蹴り。
そして、氷槍を構える。
「なにしに来たのよ」
ポラリスが不服そうに言った。
「手伝おうとしている人に向ける態度じゃなくない?」
「フン。足だけは引っ張らないで」
そう言って、"属性"のウリエルを呼び出す。
「久しぶりだね。一個足りない聖霊さん」
ルナは嫌みったらしく言う。
「火、水、地、天が唯一無二の最適解。わざわざ氷を付け足す意味があったのかね」
「それを私がフォローしてあげるんだからさ」
「禁忌に触れておいて何を言うかと思えば、平凡な答えだ」
早速険悪である。
それでも、一つの敵に向かう時には連携が取れる。
逃げ道を全てなくす攻撃をすればいい。
淵源彗霊は大技、隙も逃げ道も大きくなる。
そこに針を通すようにルナが潜り込んで、相手を封じる。
止められる前に動く。
止めても動けなくする。
それが、唯一で最大の解決法だ。
「淵源彗霊!」
「とおっ!」
火球が地面に触れた頃、他と同じように目を回して倒れているVANの姿があった。
「よくやるじゃない。魔力切れしないようにね…」
「余計なお世話だ」
そう言って、ウリエルは消えた。
ルナが駆け寄る。
「残りはあの二人と、ロールと、プローフだけ。楽勝…」
そう思っていた。
再び、"氷の魔女"が復帰するまでは…




