#143 純粋な意思の悪ふざけ
「カノン様を連れてまいりました。訳あって霊体での参加となります」
…読んできてって言ったっけ?
「ポラリス様がそう言いました。では私はこれで」
そう言ってガブリエルは退出した。
流石"任務"を名乗るだけある。
そして、残った聖霊の内の一角――"戦闘"のミカエルが引き継いだようだ。
「貴方達が我が主と神格者を復活させる方法は二つ。一つが、術者――つまり、発生源を倒す。もう一つが、スキルで上書きすることです」
たらい回しにされた割には当たり前の回答が返ってきた。
「え、もっとこう…劇的に変わるものとかないの?」
身振り手振りで表すも、「そんなことができるならとっくにやってますよ」とだけ言われてしまった。
ぐうの音も出ない。
「つまり、解散してユラリアで決戦ってこと?」
「そうなりますね。ポラリス様の事を頼みましたよ」
呆気なく作戦会議は終わってしまった。
その後、ミカエルは何か考え込んでいた。
「ポラリス様、本当によろしいのでしょうか」
「問題ないわ。寧ろ、本当の事を教えて上げて。少し可哀想だもの」
「しかし、彼らには到底――」
「いいのよ。それで」
「はい。分かりました…」
帰ろうとしたタイミングで、ミカエルに呼び止められた。
「白石様。少しこちらに…」
カノンはもう帰った。
ワダツミは少し言ったところで待ってくれている。
「待たせているから簡潔に…ね」
念を押すと、ミカエルは頷いた。
「――過去の話になります。二人の神格者が生まれました」
"運命王"と"配縁王"
その二人は世界の為、二つの意思を生み出します。
それこそが、"憶奏王"と"聖霊王"。
それぞれは生まれも知らず、ヒトとして生きることになりました。
滅多に姿を見せない"運命王"と"配縁王"の代わりとして、地と天を司るように――
その後、何の因果か"能力王"が生まれます。
今までとは違い、誰かの意思によって生まれた存在ではありません。
お互いを想う力で…と言えば聞こえはいいですが、元人間の神格者は厄介な存在でした。
その後、500年前に戻るまで更に三人が生まれました。
長い時間の中で止めどなく神格者が生まれてしまっては、世界のバランスそのものが崩れる――そう考えた二人は、"法則王"の力を使って明確な定義を定めました。
魂を犠牲にし、選ばれた者だけがなれる存在。
では、魂は何処から来ているのか。
そんな気まぐれのような思いから、当時のラグナ帝国で禁断の研究が行われます。
スキルの強制付与――
"能力王"が創り出した神格能力を、ただの人間の魂に与える。
その犠牲となったのは一人の子供でした。
ポラリス様は一度だけ、貴方に見せたことがあります。
夢として、形が残らない抗いとして。
しかし、実験の失敗によりラグナ帝国は滅亡し、我が主がその力を使って封印することで力を抑えました。
その後は、語るべき言葉がありません。
「――というようにポラリス様が仰っしゃりました。全てを伝えるべきだと」
話のスケールが壮大すぎて、困惑している。
しかし、一つだけ――
「ルナも、ポラリスも、人間じゃない…?」
「…はい。作られた存在です」
こんな事…あって良いのか。
もう、神格者を信じれない。
わざわざガーディアンがあの絵を見せた理由が分かった。
間接的に敵だと伝えたかったのだ。
真実に打ちのめされていると、再びミカエルが口を開いた。
「ルナ様は、人と触れ合うことで感情を知りました。その感情の中に、貴方が好きだと…これは真実です」
そんな事…分かってるよ。
「ありがとう。どうするかは自分で考えるよ」
何とか身体を起こし、ワダツミの所へ行こうとする。
「…ポラリス様は、貴方の味方ですよ」
鉄面皮のミカエルは、悲しそうな顔をしていた。
いや、きっと自分もだろう。




