#140 天国の住人
「着いたぞ。天界への入口――ヘブンズゲートへ」
地上からははるか高い雲の上、突然輝く門が現れた。
「これが、天界?」
「そうだ。全ての魂が安らぎとともに眠る地でもある――と、ローラス教では言われていたな」
そう言って、龍形態を解除した。
――白石を乗せたまま。
「ちょっ!?落ちる…」
次の瞬間、ボワンと音を立てて体が跳ね上がった。
「雲には乗れるんだぞ」
「先言ってよ…」
「すまんすまん。立てるか?」
ワダツミが手を伸ばす。
それをしっかりと握り、起き上がった。
そして、立ち上がってから見た景色は、無味乾燥の一言。
「…何も無いな」
さっきまでは天門に気を取られていたが、周囲は全く違った。
天国のような所だと思ったら、一面雲しか無い。
「入ったら景色が変わるぞ。楽しみに待っとけ」
天門をくぐる。
なぜか番人からの視線を感じたが、きっと気のせい…
「ちょっと。どこから来たの?生きてるっぽいけど…」
やはり話しかけられた。
「僕達はこの世界を…ムガッ!?」
「馬鹿正直に答えるな。しばかれるぞ」
ワダツミが口をふさいだのだ。
「俺達はローラスの使徒だ。紋章もあるぞ」
そう言って僕の腕をまくり、カノンから貰った紋章を見せた。
それを見た番人はじろりと見つめ、「ふーん」と一言言った。
「…通って良し」
門が開く。
「なんで本当のこと言ったら駄目なんですか」
小声で聞く。
「言い方がアレだが天上人からすると、死んでくれた方が都合がいいんだよ。自分たちの仕事になるからな」
「え!?」
まさに衝撃のカミングアウトだった。
「特に、天門の管理人なんかは通れば通るだけ仕事――ひいては金になる。そこに俺達みたいな奴が来てみろ?絶対通してくれなくなるぞ」
うーわ。
聞きたくなかった。
「天上人も金の亡者なんだよ。この世界も金の作り物ってことだ」
ワダツミは金とか興味なさそうだもんな…
「それでも天上人の上位存在、聖霊は別だぜ。見てみろ」
向こうを差す。
すると、忘れられた地の樹海でも見たような聖霊が飛んでいた。
「俺も仕事柄たまーに見かけるんだが、裏がないんだよな」
さすが聖霊。天上人とは大違い…
「ただ、表もない。全部単刀直入に言ってくるし、辛辣なときも普通にある」
やっぱり、人の心がなかった。
「最近はツンデレだと思って過ごしてるが、恋愛感情すら見せないからそれよりも厄介なんだよ」
こっちも地獄か。
真の意味での天国などないと気付かされてしまった。
今では周囲の草原ですら目が向かなくなっている。
「そう気を落とすなよ。ちょっと話しかけてみようぜ」
そう言って一番近くにいた聖霊のもとへと行った。
「オッス!元気そうだな」
ワダツミの気さくな挨拶。
すると、機械的なトーンの返事が帰ってきた。
「ワダツミ様。本日は何用ですか?」
「あんたらの上司――"聖霊王"を復活させる方法が知りたいだけだ。勿論、人柱も連れてきている」
すると、小さい翼を一度だけはためかせた。
「確認が取れました。ここを直線に進み、最初に見えた建物の中に入って下さい。その後、要件を言うことで受理されます」
聖霊はそう言ってどこかへ消えた。
「だってよ。簡単に認めてもらえてよかったな」
そう言ってバンと背中をたたく。
「行こうぜ。時間は少ないんだからよ」




