#134 各々の災害
発災、2日目――
各地で対応に追われていた。
ある人は、遠くの地へと。
またある人は、それも運命と信じて受け止めた。
各々が、後悔しない末世を送ろうとしていた。
そして、ゼルティアでは…
「西区、北区の退避完了しました!いつでもいけます!」
「了解!魔力吸収弾第一陣、打て!」
ヴェルナの号令と共に、街から一斉に銃弾が放たれる。
目指すは、全て上空の雲。
それらは雲の中へと飛び込み――雲を消した。
「やったか!?」
思わず、手を握った。
しかし、また別の雲が表れる。
「――今回も失敗のようね」
低く呟く。
「どうやら、空中にある魔力が雲を生み出していて、それらを同時に消し去るしか、すべてを対処しきることはできないようです」
「困りましたね。まだ校舎の復旧すら進んでいなかったのに」
「災害は待ってくれないわ。たとえ人災でも同様よ」
ヴェルナは再び机へと向かう。
隣に座った男性が言った。
「試しに、国旗を真っ白にしてみます?今なら通ると思いますよ」
おどけて言ったつもりなのだろうが、冗談を言っていられる場合ではない。
「――最善を尽くすわよ。降伏するのはその後」
華麗にスルーと言うより、威圧が混じっていた。
「すみません。気をつけます」
「いいわよ。冗談も言いたくなるものね」
発災、3日目――
未だカノン不在のローラスは、各地の守護者が一堂に集められていた。
理由は単純である。
過去最大規模の結界を張る――それでしか、この場を護ることは出来ないと、カノンは考えたのだ。
具体的には、世界樹周囲の結界を引き伸ばす。
その為には、ワダツミ率いる竜人族の協力は不可避。
と言うことで、ユレールは忘れられた地を訪れていた。
「…だいたい、法皇様本人を連れてくるってのが筋じゃないのか?」
そして、猛烈に怒られていた。
「カノン様は今、ユラリアへ行っていて、代理で私めが――」
目が泳ぎきっている。
「それは俺様でも知ってる。そうじゃない。法皇様はまたいつか来てくれるんだろうな?」
「はい。恐らく…」
「…分かった。明日から取り掛かろう。適当な所に泊まっておいてくれ」
そう言って、ワダツミはユレールを帰らせる。
「…これで良いのか。母様…」
その目は、もう暗い空を向いていた。
発災、4日目――
ラグナ魔法国家では、とあるデマが蔓延していた。
アル=ゼリオ第七遺跡群発見と、再発災の関係性についてである。
『遺跡に踏み入れた事により、神の逆鱗に触れた』
などの妄想や、
『ユラリアとラグナが手を組んで世界を支配しようとしている』
など、陰謀論めいた物まで。
そして、ラグナ国立大学では――
「このようなデマに惑わされる愚か者は、我が校には一人もいないと信じている。経験と記録の裏に真実がある事を忘れないように!」
理事長が相変わらずの熱弁をしていた。
「いつまでこの話をするのだか。そろそろ避難させてもいいと思う」
講堂の後ろ側から冷観しているフィアナ。
「理事長の性格からして、事実無根な蜚語に操られるのが許せないのは分かるけど…」
隣にいた先生に言った。
「今日から避難が始まるんです。我が子達に会えなくなると思ったら言葉が溢れてくるんでしょう」
見ると、理事長は涙ぐんでいた。
「大変だね…」
乾いた声が出た。




