#131 罪と罰
「すみません。私は止めることは出来ませんでした」
"社長"室で申し訳なさそうな顔をしたセレナが言った。
外を見ていた "社長"は椅子をくるりと向け、そして言う。
「――分かっていた。努力も運命には抗えなかったな」
「全て、分かっていたのですか?」
「ああ。信じたくはなかったが、これから歴史に成ろうとしている」
そして、そのまま言った。
「…今までご苦労だった。今日限りで君を秘書から解任とする」
「…責任、ということでしょうか」
セレナがおずおずと言った。
「いいや。余生を少しでも潤沢に過ごしてもらうためだ。故郷にでも…」
「いえ。私はまだ、この仕事を辞めれません。仕事がまだ残っています」
すると、社長が訝しんだ。
「仕事も何も、最早することさえ…」
「あの子達が厄災を振り払った時、誰が後始末をするんですか」
「異世界のバグがそう上手く作用するとも思えないがな…」
セレナは自身に満ちた声で言う。
「バグにも、それこそ世界を変えてしまうような変化を起こす時が有ります。打開するにはそれが一番です」
それを聞いた"社長"は、フッと笑った。
「…そうだな。託してみるか」
「まずは避難誘導から始めましょうか」
「どうしてワタクシを呼ばなかったのです?」
「いや〜ちょっとね」
ルナの目は泳いでいる。
完全に忘れていた。
「ファント様に言われるまで気付かなかったのですわよ。先にアポイントメントを取ってほしいものです。ワタクシ、授業がまだ残っているのですわ」
「ごめんて」
すると、口を挟んだのは"時間王"ヴァンガード。
「ま、そこまでにしてあげたらどうです?"荘厳王"さん」
一瞬、誰が"荘厳王"なのかは分からなかったが――
見た瞬間、何となく分かった。
「もしかして、ワタクシのこと?」
すると、遠くから見ていたシフリスが言った。
「"荘厳王"ですか。驕り高ぶっている貴方にぴったりですね」
「何を言いますか!?ワタクシは教養ある良家出身ですからこの様になっているのですわ!」
「良家の方は口調を荒くするのが得意分野ですか。私達の方がよっぽど聡明ですね」
最早レスバトルのような雰囲気である。
「まあ、"空間王"さんも落ち着いて――」
「"空間王"ですか。悪くないですね」
シフリスは、珍しく勝ち誇ったような感情を出していた。
「――早く終わらせて寝よう。まだ魔力切れてるんだよ」
フェイタルが寝ぼけ声で言った。
「――何してたの?」
「色々あったんだ。シフリスのスキルが奪われて――」
「静粛に!」
フェイタルの声は、"魂久王"によってかき消された。
「これより、"復活の儀"を執り行います」
12人が、それぞれ円を描くように立つ。
「白石様は円の中心に剣を持って立っていて下さい」
「え、僕も参加するの?」
「勿論。使用主が儀式の中心となる事で達成されるのです」
緊張しながらも、円の中心へと進む。
十一柱の前に立つのは…怖い事だ。
「それではいきますよ」
白い光を放った魔法陣が展開され、丁度僕の足下で光が集まり――
アレ?ここ中心じゃ無い気が――
「流石は烏合の衆。最後まで騙されていることに気が付かないなんて!」
因縁のある声が周囲に響いた。
立っていたのは…レイズだった。
「また君?一体何するつもりなのよ」
先輩が呆れたように言った。
「フン。余裕でいられるのもここまでだ。コレを見るがいい!」
そこには、氷漬けにされた女性が浮かんでいた。
「神格者達ならコレが誰か分かるだろう。400年前の災害の発生源にして、お前達が創り出した存在――」
「まさか!」
ルナが叫んだ。
「今ここで、復活させるつもりなの!?」
それを聞いたレイズは歪みきった歓びを上げた。
「その声が聞きたかったのですよ!わざわざ"魂久王"と手を組んだ甲斐が有りました」
「ファント…裏切ったの!?」
ファントは何も言わない。
そうこうしている間にも、儀式は進行していた。
「止めれないの?」
「無理です。今回儀式を起こしているのはファントなので…」
ファントの意思がないと止められないって事か…
魔法陣が、益々光を放った。
この日、400年前の災害が現代に再び現れたのだった。




