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#130 乱入者

「あ、いたよ」

ルナが指したその先には、気を失ったフェイタルと、それを背負っているシフリスがいた。

「…今魔力切れを起こしているので、そっとしてあげて下さい。要件は全て私が聞きます」

「そう?ならまた明日呼ぶと思うから、その時には来てね」

それだけ聞くと、シフリスは早足で去っていった。

「…何だったんだろうね」

「乱闘騒ぎ――そう言えばセレナさんが言ってたような…」

昨日の言葉を思い出す。

「確か…寝取られたんだっけ?」

先輩。あまり素で言わないで下さい。

「でも、無事に帰ってきてるよね」

「円満解決できたんだったらいいんじゃない?」

…そうだな。

ひとまず帰るか…

「にしても、神格者に喧嘩を売るなんて命知らずな奴がいるもんだね。下手したら殺されちゃうってのに」

ルナがサラッと怖いことを言っていた。

…気をつけようと、改めて認識したのだった。



明朝、いつもより清々しい朝を迎えていた。

これは、達成感から来るものだろうか。

「ルナちゃん。早く呼んじゃって!」

いつものように先輩が急かし、ルナがそれに答える。

ルナは手を前で組み、念じるような動作をした。

「…これが呼び出し?」

「そうだよ。1時間もすれば来ると思う」

となると、待機時間になるわけか。

「ま、ゆっくり休もうよ。今まで急いでばっかりだったし」

先輩が腰を下ろす。

釣られて僕も気を抜いた、その時――

「動かないで」

首元に冷たい感触を感じた。

――刃物。

「…誰?」

返事は、一向に帰ってこない。

真っ先に思い浮かべたのは、シフリスだ。

以前同じ手口を使われたことがある。

でも、今同じ事をするとは考えにくい。

なら一体誰が――

思いついたのはもう一人。

「――まさか、セレナさん…?」

変わらず、答えようともしなかった。

「秘書さん!何が目的なの!?白石君を離しなさい!」

やっぱり、セレナだったのか…

認識した瞬間に、背中に冷や汗が垂れる。

おそらく、プロなのだ。

ちょっとでも反抗すると――殺られる。

「…貴方達に罪はないのだけど、もう時間がないのよ」

やっと口を開いたのだが、何を言っているのかよく分からない。

殺意ではなく、使命感が籠もっていた。

「単刀直入に言うわ。その剣を渡しなさい」

「剣って…なんでそんな事しなくちゃいけないのよ!」

「危険だからよ。有ってはならない存在なの」

そう言いながら、拘束していた湊の剣を片手で奪う。

「壊してしまったほうが――」

セレナが剣に触れた途端に、言葉が止まる。

拒んでいるのだ。

思わず剣を落とした。

そして、少しだけ警戒が緩んだ隙に脱出する。

「パートナー!」

勿論、剣も拾っている。

セレナは驚きはしたものの、声には出さなかった。

流石はプロと言った所だろうか。

「…どうやら、強硬手段に出る必要があるみたいね」

ブンと刃が空気を切り裂く。

武器は槍鉾(ハルバード)。

重い武器を軽々と巧みに扱うその姿は、暗躍者ではなく執行者のように見えた。

「殺しはしないわ。でも…覚悟しなさい」

短く言って、すぐ切りかかってきた。

上から振り下ろす。

咄嗟に、剣で受けた。

そして、受けて分かった。

本気で剣を折りに来ている。

受けるのは逆効果だ。

「先輩!援護お願いします!」

「OK!離れて」

杖の先から、極大の火球が放たれる。

「炎華爆発(エクスプロージョン)!」

広い草原に、爆音が響いた。

「やったか!?」

「先輩…それフラグ…」

見事なまでに、フラグを達成してしまった。

煙が晴れると、そこにはまだセレナが立っていた。

前に武器を出し、受けたのだ。

「生身の人間が受けて無事でいられるはずが…」

間髪入れずに、横向きに一振り。

回避は間に合わない。

再び剣で受けるが、今度は武器を滑らせ、斧との間に挟まれる形になってしまった。

(不味い!折られる!)

即座に手を離し、剣を浮かせる。

「パートナーから離れて!」

セレナの真横からルナが殴りかかる。

すると、セレナは斧の部分でガード。

まさに攻守一体の武人である。

「…どうして、そこまでしてこの剣を守ろうとするの?所詮は貰い物じゃない」

「だって、中に魂が安置されているんですよ!助けようと思うのが普通です!」

「その結果どうなるのかも知らずに?滑稽ね」

哀れみ――というより、切羽詰まってるような感じがした。

「この儀式は終わらせなきゃいけないの。世界が滅ぶわよ」

そう言って、更にスピードを上げる。

もう、受けるだけで精一杯。

何処か逆転の――

「白石君!?」

一瞬の思考が、身を危険に晒す。

刃は再び、白石の首元へ。

「…終わりよ」

完敗だった。

それでも、まだ渡す気はない。

「ルナ!これ…」

ルナの手にわたった剣は弓へと変化する。

つまり、まだ抵抗する――

その事を悟ったセレナは言った。

「そう。まだ抵抗するつもりなのね…」

その後、なぜか武器を降ろす。

拘束まで解いてくれた。

「…どういうつもり?」

「何も。私は忠告したわよ。神格者が何をしでかすか、とくと見させてもらうわ」

そう言って、何処かへ去っていった。

「…何だったのアレ。全然意味わかんない」

そして、改めて見ると、体に傷は一つもついていなかった。

「本当に、傷つける気は無かったんだ…」

セレナが一体何をしたかったのか、何を言っていたのかも分からない。

ただ、到底嘘とは思えなかった。

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