#128 "空間王"と"宿命王"
一応、残りのシフリスとフェイタルも呼んでみることにしたのだが…
「セレナさん。今フェイタル達が何処にいるか知りませんか?」
音沙汰どころか消息が不明である。
「彼ら、丁度修羅になってたわよ。3日もすれば帰ってくるんじゃないかしら」
予想外の回答に驚かされる。
「…何があったんですか?」
「シフリスが攫われたのよ。"シフリスの親"と自称していた存在にね」
それを聞いて、ルナと顔を見合わせた。
「確か、家族はいないって言ってたのにね」
「アレじゃない?『こんな人達、家族なんかじゃない!』って逃げ出したとか」
先輩が言った。
「…DV?怖い」
「どうだかね。本人は動揺してたみたいだけど、それよりもあの子のほうが心配よ」
「あの子って…?」
「フェイタルのことよ。思い詰めた顔して奪還に向かっていったわ」
すると、先輩がニヤけた。
「面白そうじゃない。また後で聞かせてもらおうっと」
…きっと、話のネタにするつもりだ。
コンクリートのような壁に、一つの切れ込みが入った。
そう思った途端、轟音を立てて壁そのものが崩れ落ちる。
剱に魔力を込め、斬撃の威力を上げる技だ。
勿論、全ては最大級の威力で。
容赦はしない。
建物ごと潰す勢いで、制圧を開始する。
遠くで崩れる音が鳴った。
「誰か来たようだな。もう少しで終わるというのに…」
男は小さく呟いた。
天井から小さな破片がパラパラと落ちる。
しかし、建物が崩されているというのに、その顔は笑みを浮かべていた。
「…スキル発動。能力強奪」
体から紫色を帯びた魔力が放出される。
丁度手のような形になったと思うと、シフリスのを掴むような動作をした。
「ッ…!」
シフリスの顔が痛みで歪む。
固有能力は、本人の魂と強く結びついている。
つまり、能力を奪われるということは、魂を危険に晒すこと。
しかし、男にとってはシフリスの命などどうでも良かった。
所詮は踏み台である。
そして、その痛みは魂を通じて、フェイタルにまで及んだ。
「――!?」
突然の痛みに剱を落とす。
「何だ…?これ…」
あまりの痛みに呼吸が苦しくなる。
「神格者は…普段は痛みを感じない筈なのに」
心臓を直で握られたような痛みがしばらく続いた。
「前に…」
痛みに耐え、なんとか前に進もうとする。
「後少しの筈…」
しかし、あまりの激痛に意識が飛びそうになった。
それでも手を伸ばした、その時――
痛みが消える。
フェイタルは呼吸が整う前に、気がつく。
「…まさか!?」
"契約の絆"が消えている。
考えられること、それは――
シフリスが、自ら切った…?
剱を持ち直し、走り出す。
「何処だ。シフリス…」
世界超越の反応で場所を探し出す。
それが、もうシフリスの反応で無いことは、まだ知る由もなかった。
扉を斬り飛ばし、大声で叫ぶ。
「シフリス!」
しかし、反応はなかった。
「もうたどり着いたか。しかし、遅かったな」
遠くで横たわっているシフリスは、既に気を失っている。
「…貴様!自分の娘に対してなんてことを!」
すると、当たり前のような顔をして言った。
「娘?そんな言葉は方便に過ぎん。ただの器だ」
「どこまで冷酷な…シフリスを返せ!」
すると、男は適当にシフリスの体を掴み、そして投げた。
「くれてやる。スキルが無くなった器にもう要は無い」
受け止める姿勢を取るが…その勢いは殺しきれなかった。
二人揃って壁に打ち付けられる。
「クッ…回復魔法!」
痛みは消える。
しかし、回復魔法を受けてもシフリスの意識が戻る気配はない。
「――ッ⋯すまない。伝操統術!」
強制的に操って、体の無事を確認する。
魂も少しすり減った程度で済んでいるが…スキルが無かった。
「…貴様、何をした!?」
すると、煽るような口調で言った。
「貴様も所詮、こいつのスキルだけが共にいる存在意義だったのだろう?無くなった途端に吠えるとは勝手なやつだ」
「違う!私はそんな事…」
言葉を遮って続ける。
「自ら手にかけるのも面倒くさい。後は好きにするがいいさ。どうせ、飽きたら捨てられるだろうけどな」
「…は?」
「スキルも無ければ、生きる価値もない」
フェイタルは、何も話さなかった。
返事とばかりに、拳を握る。
「…親の姿か?これが?笑わせるな!私は貴様を"父親"とは認めない」
「どの口が言っているのだ?どうにもならない事実だ」
すると、すっと立ち上がり、叫ぶ。
「私は、リアエンド=シフリスの夫。リアエンド=フェイタルだ!」




