番外編 シフリスとフェイタル その5
異世界の夜も、もう慣れた頃。
焚き火の周りには、光に釣られたのであろう虫達が集まっている。
気がつけば、一人の夜は久しぶりだった。
最近は常にシフリスがつきまとい、一人の時間そのものが無かった。
だが…あまり良いものではない。
10年間孤独でいたが、今になっても寂しいものだと思い知らされる。
視線を火に戻すと、ある虫が鳴いた。
命が冬までだと分かっていても、苦労して生きようとしている事が伝わってきた。
私も、きっと疲れているのかもしれないな。
そういう時は、センチメンタルな感傷に浸りたくなるもの。
しかし、今苦労しているのはシフリスだ。
私がこんなところで弱音を吐いていもいられない。
必ず明日には届くようにと、それまで耐えていてくれるようにと願うことだけが今の私に出来ることだ。
そして、なるべく早く向かうこと。
"契約の絆"は、一本の糸のようになりながらも強固に繋がっていた。
決意を示していた。
きっとシフリスも、持ち堪えて…
言いかけた時に、あることに気が付いた。
心の内では名前で言えるが、口には出さない。
まだ慣れていないのかと思ったが、あの時は普通に呼んでいた。
つまり、特殊な関係になったからだろう。
不器用なこと…
この時、ふと思った。
不器用なのはシフリスの方だ。
そう考えると、今までの行動に合点が行く。
"様"付けして呼ぶのは、不快にさせたくないから。
あんなにも名前を呼んで欲しがったのは、この関係を終わらないようにするため。
時々見せる"押し"は、離さないようにするため…?
これは、考えすぎかもしれないな。
とてもそこまで考えているとは思えない。
本当に…
火は、パチパチと音を立てて小さく燃えていた。
明け方の空は美しかった。
残月がまだ輝く頃に、フェイタルは出る。
未だに昇らない明かりを探しだす為に。
10年間とは逆の旅が始まった。




