番外編 シフリスとフェイタル その4
「そこを…退け!」
おそらく、いや完全にそこにいただけのドラゴンと今戦っている。
退散することも考えた。
だが、動きを見るに到底逃げさせてはくれなさそう。
ドラゴンは、苛立っている。
「…もしかして、世界超越は使えるのか?」
とりやえず行動。
「世界…」
その時、断絶された。
繋がりがごく僅かなものに縮小していっている感覚。
もう、探知しか使えなくなっていた。
その事実に、胸を突かれる。
ドラゴンが吠える。
その威圧感に、思わず後ずさるが…
「私も神格者だ!神格化!」
そう叫んだ瞬間に、子供のような姿から、青年ぐらいの背丈へと体が変わる。
黒い翼を持った、最後の神格者へと。
「伝操統術」
格下の全制御。
神格者と竜族、どちらが格下なのかはフェイタルにはまだ分からなかった。
今、分かる。
ドラゴンは、抗おうと苦しんでいるようだった。
一方のフェイタルも、膨大な力を前に制御しきれていない。
どちらが先に崩れるかの勝負。
周りから見れば一瞬のとてつもなく長い時間が流れた後…
崩れたのは、ドラゴンだった。
頭を垂れる。
勿論、全て制御の内だ。
「これが終わるまで、操らせてもらうぞ!」
返事代わりに、咆哮を一つ放つ。
そして、大空へと飛び立つのだった。
「時間だ。出てこい」
牢屋の鍵が開く。
鎖は繋がれたままだ。
(従順なフリ、従順なフリ…)
シフリスは、心の中で何度も言い聞かせていた。
警戒されないように、じっとその時を待つ。
「実はな、私にもスキルが手に入ったのだ」
"親"は、まるで独り言のように言った。
「これで私を見下してきた奴らを見返す事が出来る…と、言いたいんだがな」
口だけのため息を出した。
「まだ、足りていないのだよ」
そして体を翻し、歪んだ笑みを浮かべていった。
「魔力量も、能力自体も」
指をパチンと鳴らす。
すると、金縛りのような感覚が体を襲った。
「――!?」
その場から動けなくなる。
「だから、私の娘には…消えて貰うことにした」
手枷を外しながら淡々と言った。
親としての感情は微塵もない、ただの復讐心の塊だった。
「それまで、しばらくここで固定させて…」
"親"の声を遮ったのは、シフリスだった。
「そんな事をされ生き恥を晒すなら、私自ら自決して…」
懐に忍ばしていたナイフをテレポートさせ、首元へと持っていく。
そのまま下ろそうとした時、"親"が止めた。
「それは困る。最後まで私のために動いて貰わなければいけない」
慌てる動きもなく、ナイフを回収。
最早、成すすべはない。
シフリスは、フェイタルを頼るしか残されていなかった。




