#125 "配縁王"ディストリス=エレン
「これをこうして…この人は此方に向かわせるようにして…」
ファルトは何も無い空間に指を置いて、呟きながら何かをしている。
「…忙しそうだね。要件だけ言って帰る?」
「うん。そっちの方が良さそうだね」
これでも神格者。仕事が山積みになっているのだろう。
「とは言え、ファルトはあんな感じだし…暇なのはエレン…」
ルナは何やら顔を震わせていた。
――風邪か?
「パートナー代わりに言ってきて」
「何で!?仲いいんじゃないの?」
「ついさっき苦手になった」
「ええ…」
でも、ここで話したところで埒が明かないのは確か。
「行ってくるよ。簡単に協力要請だけ出しとく」
そう行って歩き出した湊を、ルナが止めた。
「…ゼッタイに、変な話はしないでね」
その言葉の意味が、僕には分からなかった。
「…あの、エレンさんですか?」
さっきから話を聞く限り、とても気の難しい人だと思っていた。
「うん?君は湊君か」
よく分からない声とともに返事が来た。
もしかして、寝ていたのか?
神格化は寝れないはずだと聞いたけどな…
頭の中にしばらく疑問が浮かんだ。
いやいや、そんな事より…と思い直す。
「僕達は今、この剣の…"聖霊王"の、復活を目指しているので…協力してください!」
湊は頭を下げた。
そして、その上でエレンは小さな笑みを浮かべていた。
「…いいよ。大義には大切なことだから」
「大義…?」
「人が行う行動に着いて回るものさ。エゴイズムとも言うが、これが人を導く」
難しい話になっている気がする。
「勿論私にも、ファルトにもある。それが、たとえ相容れないものだとしても」
…?
「それに、運命に導かれるのは人だが、運命はその道を選んだりしないだろうな。もし選ばれていたら…それは決して逃れることの出来ない"宿命"だ。」
この人が一番扱いにくいと率直に思った。
「ともかく、何かあったら呼ぶと良い。私は"君の"味方だから」
「――ありがとうございます」
元の場所に戻る。
「変な話してないでしょうね」
ルナが睨んできた。
「勿論。最低限の社交辞令だけ済ましておいたよ」
それを聞いたら、安心したような表情に変わった。
「…何考えてるか分からない奴らだから、あんまり関わらない方がいいよ」
「そうかな。ただのポエニストだったけど…」
疑問が絶えないながらも、一行は次の目的地へと進むのだった。
同刻、"能力王"ユークレル=トリス――
「頼まれていたスキルだ。何に使うかは知らないが、悪用だけは…って、言っても無駄だな」
相手は特に何も言わずに、大人しく受け取った。
「ファルトは何でこんなやつに新しくスキルを付与するんだか。全く理解できない」
すると、相手は体を翻し、何処かへ去っていった。
「…お兄様。今のは?」
「ただの客だ。あのスキルを渡した」
「礼の一つも言わないなんて、無礼な奴です!」
怒ったリーシャを、トリスがたしなめる。
「そうだな。次はリーシャが作りたいって言っていたアレにでもしようかな」
聞いた瞬間、トリスに抱きついた。
「お兄様…!」
目をキラキラさせている。
「分かった。ちょっと離れてくれ」
そう言って、無理矢理引き剥がした。
「一体どんなスキルになるのか楽しみだ」




