番外編 シフリスとフェイタル その1
「今日はどこに行きましょうかね。どこか行きたい所ありますか?」
「どうせ世界超越使って目的地まで行くんだろ。旅の醍醐味を潰しにかかってるな」
「…気をつけます」
少し、気まずい雰囲気になってしまった。
時はユラリア。
この二人、シフリスとフェイタルは暇を持て余していた。
戦渦から逃れることが出来たのはいいが、今度はすることがなくなっている。
そして、シフリスは滅多に笑顔を見せないフェイタルのことが気にかかっていた。
(楽しくないんでしょうか…それとも、もともとこうなんでしょうか?)
シフリスの方からプロポーズして早一ヶ月。
その後に全く進展はなかった。
別にフェイタルは"普通の日常"を送れるだけで満足していた。
定期的に鹿児島にある母の家にも帰っている。
10年ぶりに安心しきれるひとときを過ごしていた。
しかし、シフリスはそうはいかなかった。
これまで殺伐とした生活ではあったものの、なんとか生きていれた。
そのために、二人でしかできないことを見つけようとしていた。
その事をフェイタルも一応気にはかけていた。
だが、そこに10年間異性はおろか同性とすら話していなかった弊害が現れている。
あの時は、不本意ながらルナが近くにいることでなんとか会話できた。
要するに、口下手なのだ。
しかも、"もともと操っていた"なら尚更。
本人がいいと言っても、それでも罪悪感は拭いきれなかった。
せめて今は楽しい生活を送らせてやりたいと思ってはいた。
それでも、過去の障壁が邪魔をし、どうしても言い出せなくなる。
結果的に、今日も1日、何でもない1日を過ごす。
「アレ以降私のことも名前で読んでくれませんし…別に呼び捨てでいいんですよ」
「…断る」
「あの時は普通に呼んでたじゃないですか。今になって遠慮することもないでしょう」
毎度このような会話になっている。
葵が見たら呆れるような生活を送っていた。
「何か食べたいものありますか?」
「…私の意見なんかどうでもいい。自分で作りたいもの考えて作ったらいいじゃないか」
「素直じゃないですね」
そんな事を言い合いながら歩いていた。
変わらないと信じて疑わなかった。
ふいに、進行方向に誰かが立っていた。
大通りなので、よくあること。
そう思って避けた。
通り過ぎようとした時に、ある事を言われるまでは。
「久しぶりだな。イシス=シフリス」
バッと振り向く。
その男は当然のように言う。
「我が娘を迎えに来た。リアエンド=フェイタル」




