#120 "創壊王"ディミニスター=ロール
「そろそろ止んだんじゃない?」
一晩寝ると、風の音も消えていた。
「ちょっと見てくる」
穴から顔を出すと、そこには銀世界が広がっていた。
「眩しっ!」
陽光の反射が目に刺さる。
「晴れてはいたけど、多分歩けない」
「なんで?」
「眩しくて目を開けない」
すると、ルナが言った。
「じゃあ私が運ぼうか?」
「運ぶって…どうやって?」
答えとばかりにルナは神格化した。
「――大丈夫なの?」
先輩は不安を示す。
「大丈夫、なハズ」
と、言うことで――
「ルナ、重くない?」
「へっちゃら。これぐらいなら…」
その裏で、今まで見たことないほどに翼をはためかせている。
総重量100Kgを持ち上げて飛ぶって中々大変だろうに。
「ゴメン。装備しっかりしてきたらよかった」
「どんな所か伝えてなかった私も悪いし、別にいいよ」
先輩を背負い、僕を細い腕で抱える。
本人は平気だということを僕が一番知っているのに、胸が痛んだ。
静かな青空には、バサバサと音が耳に響き続けた。
しばらく飛んでいると、ゴツゴツした岩が沢山ある山岳地帯までやってきた。
「そろそろ降ろすよ」
ゆっくり着地。
「ありがと。疲れてない?」
「大丈夫。たしかこの辺りのハズだし行こうか」
「この辺りって――建物一つも見えないけど」
草一つすら見当たらない。
「本当に住めるの?」
「だって神格者だよ」
――妙な説得力を感じた。
「それに、多分迎えに来てくれると思うよ」
「礼儀正しい人なんだね」
先輩が感心した。しかし、ルナの反応は違う。
「ロールのバカー!!!!」
突如として暴言を叫びだしたのだ。
「ルナちゃん!?ロールって誰!?」
しかし、まだまだ続く。
「早くこないと黒歴史言っちゃうからねー!」
空に向かって一通り言った後、ケロッとした顔で向いた。
「多分、もう少しで来ると思うよ」
「な、なんで?」
「だって、そういう性格だし…」
だからって、そこまで言わなくてもいいじゃないか。
もっとも、小学生レベルの暴言だが。
「次からは気をつけようね…」
「来なくない?あんなこと言ったから傷ついちゃったとか」
「うーん。いつもなら来るんだけど…?」
これをいつもやってたのか。
ちょっとかわいそうになってきた。
「そうだよね。相手の気持になってみなよ」
「…気をつけてね」
三人から叩かれていた。
「誰!?」
そこには、及び腰の女性が立っていた。
そして、視線が向いたことに気が付いたのか――
「こんな根暗が近くにいるとやっぱり嫌ですよね?私なんかが来てすみません…」
そして、帰ろうとしている。
「待って待って。ちょっと用があってここに来たの。私だよ、ルナ!」
その"ルナ"という言葉を聞いてから更に縮こまってしまった。
「げ。なんでこんな辺鄙なところまで追っかけてきたんですか。帰ってください。寝ていたい…」
しかし、押しでルナに勝てる人など存在しない。
「あのことまだ引っ掛けてるの?もう500年も前の話じゃない。そんなことより――」
次から次へと話を進める。
「ほら、自己紹介して」
すると、これまた嫌そうな顔を浮かべる。
「早く!」
急かされ、決心がついたようだ。
「…"創壊王"ディミニスター=ロール。好きなことは一人でいること。以上です…」
「スキルとか言ってよ」
ルナのダメ出しを受ける。
「――スキルは、対滅仮現。モノを作ったり壊したりする能力です。寝たいので帰っていいですか?」
「駄目!私たちに着いてきてもらうよ」
「面倒くさ…」
つまり、内気で面倒臭がりな神格者と。
「これは…確かに変わってるね」
「でも、変にエキサイトしてなくて良かった」
ミヅハみたいなのだったら笑えないからな。
「わざわざついていかなくても、集め終わったら教えてください。その時には行きますから。多分…」
「――分かったよ」
今度はルナが折れた。
「それじゃ、また今度ね」
そして、ロールは帰っていった。
「あれ、これで終わり?」
いつもより呆気なく終わってしまった。
「次は、"能力王"にでも行こうか。帰ろう!」




