#119 ささやかな反抗と北の国
ゲルゼズ最北エリア。
そこは、年中氷に閉ざされた極寒の地。
「寒いー!」
先輩は体調管理を昇華していない。
さっきからずっと肌を震わせていた。
「こんな所に住むなんて…なんて物好きな」
「"創壊王"ちょっと変わった所あるからね…」
神格者ってほとんど変わってると思うけど。
「というより、人に会いたくなかったのかな?」
「それってどういうこと?」
すると、ルナは思い出すように言った。
「たしか…変な能力だったはず。それが危害を与えるから――だったっけ。滅多に顔を見せないから、私もよく分からないんだよね」
変な能力――
「"創壊王"っていうぐらいだから、やっぱりモノを作ったりするんじゃない?」
「でも、変じゃないですね…」
熟考。
「ま、出会えたら分かると思うよ」
また一歩進む。
――嵐の方へ。
「これ不味くない?」
視界はまさにホワイトアウト。
「こういう時って、やたらめったに動かないほうがいいんだっけ?元北海道民助けて」
それって、僕のことか?
「僕北海道に住んだこと無いんですよ。すぐ東京に引っ越したんで」
「それでも、先祖のDNAが目覚めるはず!」
そんなわけ無い。
「でも、確か"風下を向いて、メガネを付ける"ってどこかの小説に書いてたはず」
とりやえず実践――と行きたいが、あいにくゴーグルは持ち合わせていない。
「白石君次は!?」
「GPSかコンパスで場所を――」
勿論無い。
「最終手段です。緊急避難しましょう!」
風を避けれる位置を探し、穴を掘る。
装備の大切さを改めて知った。
「幸い、火は出せるね。やっぱりDNA残ってた」
「――」
何も言えない。
「それより、これからどうするの?私外見てこようか?」
「止めて!それ死亡フラグ!」
「言っとくけど私、死なないからね」
そういう話じゃないんだよな。
「1日もしたら止むから、今日はここで野宿かな」
最近ずっと焦ってたし、こういう日があってもいいだろう。
「暇だけど」
「寝たら死ぬかな…?」
先輩が不安そうに言う。
「あれ低体温症だからですよ。火があったら大丈夫なはずです」
「そうなの?」
「水分だけ取っていてください」
水――は氷から取るか。
「知ってますか?普通の雪から取れる水は10%しかないんですよ」
「知識をひけらかす相手は自分の妻だけにしときなよ」
あ、はい…
「にしても、なんでこんなに詳しいわけ?完全に北海道民だよね」
「――親がよく、"雪なんて二度と見たくない"なんて話をしていたのもあるかもしれません。だから東京に来たのかも…?」
地価高いのに。
「後、帰省問題大丈夫なの?そろそろ帰ってくるかもしれないよ」
「あ。でも、帰ってくるだけで1日かかるから…」
そうは言ったものの、やっぱり帰ったほうがいいかもしれない。
「先輩はどうやって誤魔化してるんですか?」
「そりゃ、反抗期よ。『今までどこに行ってたの』なんて言われたら、『うるさい!」って返すようにしてるの」
恐ろしや高2女子。
「ルナちゃんは…」
気がつけば隣で寝ていた。
「親とか、どうなってるんだろうね。15000以上だと…」
結婚の報告もできないのか。
寂しいなと、顔も見たことのない過去の人に思いを馳せていた。




