#116 "魂久王"その三
すでに、ファントとガーディアンは戦い始めていた。
「不死凋霊。選べ!」
ファントが2つの選択肢を出す。
「小賢しい…」
ガーディアンは、苛立った様子を見せた。
全身の目、一つ一つが睨む。
「貴様まで支配しても良かったのだぞ。こいつの精神を遡れば簡単なことだ」
「小生は神格者なので、そう簡単には行かないと思いますけど」
「ぬかしおる。本当は守るので精一杯なのだろう?」
ガーディアンは余裕そうだが、真紅に染まった目からは、復讐心が露わになっていた。
「何してんのさ!私がやる!」
ルナも参戦していた。
そんな中、僕はまだ戦う決心がつかなかった。
「やっぱり操られてたね。黒幕連れてくればよかった」
隣の先輩が悲観して言う。
「伝操統術だったら…」
あの時は、刻印が現れたんだよな。
「――特になさそうだよね」
じっくりと観察する。
服の裏に…服?
『これは服ではないですよ。自分の身体の一部です』
そう言えばあの時も、似たようなくだりをやった。
二人と戦っているガーディアンを見た。
知らないことも多いけれど、暴力なんて絶対にしない。
「違う。これはガーディアンじゃない…」
そう自分に言い聞かせる。
「僕も戦います!」
戦場へと駆け出していった。
「スキルは無いけど、この剣なら…」
斬りかかる。が…
「霊体である我に効くとでも?愚か!」
スッ――
無惨にも、手応えはなかった。
「なら…」
即座に後ろに回り込み、様子をうかがう。
背後からの、不意打ちなら…
ガーディアンが手を掲げた瞬間――
「今だ!」
しかし、ガーディアンには見えていた。
「無駄だ。その程度では止められん!」
再び失敗。
「大人しくしていろ。記録の牢獄!」
甲高い音を立てて、湊の周囲に光の鎖が現れた。
「この程度――」
切断を試みるも、変化はなかった。
「そのまま殺してもいいが、我の趣味ではないからな。ありがたく思え」
湊、戦闘不能。
その一方、ルナは――
「神格解放!」
普段よりも冷静に、そして大胆に攻める。
「パートナー!ちょっとだけ待ってて!」
その姿のまま殴りかかる。
「無駄だ、人間もどきは我には触れられない!」
「やってみないと、分かんないでしょ!」
これは不味い。ルナまでも効かないのか――
そう思っていただけに、結果に目を疑う。
――パリン…
ガラスの割れた音。
「え…?」
ルナは確かに、触れた。
攻撃は当たったのだ。
これも異常だが、相手のほうが更に異常。
ガーディアンは、殆ど動いていなかった。
ただ、眼鏡が片方割れただけ。
事実上、神格者の一撃を受け止めたのだ。
「そんな…」
ファントまでもが、絶句していた。
しかし――
「なるほど。既にそこまで達していたとはな」
冷静に分析していたが、その声にはあるものが宿っていた。
動揺。
驚いたのは、相手も同じだったのだ。
「これは、本気で行かねばならぬようだ」
鋭い眼光。
言い終わった瞬間、全身から赤黒い魔力が現れる。
ガーディアンの頭上に集まり、一つの集合体を作って――
「なに、あれ…」
複眼の幽霊から現れたのは、正反対、単眼のバケモノ。
四対の翼?を持つ、正真正銘の――
「白石君!私もう無理!」
「ちょっと先輩!?」
「言ってるでしょ。私ホラー無理って!」
牢獄の後ろに回り込まれた。
確かに、先輩が言うのも、無理はないかもしれない。
それを一つの目で見下ろしていた敵は「そんなに入りたいのなら、良いだろう」と言った。
そして――
先輩の周りにも、記録の牢獄が生み出された。
「フハハハハ!今こそ、逆襲の時間だ」
口はないのに、どこから声出してるんだ…
幸いにも、牢獄にいるおかげで僕は冷静になれた。
しかし、いざ目の前に立っているあの二人は――
「ガーディアンって、こんな事もできたの!?聞いてないんだけど!」
「ガーディアンじゃなくて、あの上が本体です!」
冷静さを失い、言い争っている。
それを見たガーディアンは、歪んだ笑みを浮かべた。
まさに、形勢逆転。
洗脳を解くどころか、避けるだけで精一杯になっている。
「我らの恨み、思い知れ!」
そんな中、一つ、引っかかったことがある。
我"ら"?
どう見ても一体にしか見えない。なにか繋がりが――
ガァァン!
どこからか、荒々しい鐘の音が響き渡る。
もはや攻撃というより、精神攻撃…
鐘…
ルナが攻撃を仕掛ける。
それを、今度は別の音で――
まさか、楽器か?
相手は全然楽器っぽい見た目ではないが、"我ら"と言うのも、最初にピアノを引いていたのも納得がいく。
忘れ去られた楽器が復讐の心を持って、襲いかかる――
昔、ホラー小説で見た気がする。
「もう、埒が明かない!」
気がつくと、ルナも形態変化していた。
「あ、あの姿は…」
先輩が叫ぶ。
「あの時見た、本気モードだ!」
湊が知らない、滅びの記憶を使ったルナの切り札。
槍を前に向ける。
「記憶者どうし、勝負しましょう?」




