#11 流星
「やったか……?」
「ちょっと白石君!?それフラグ!」
しまった。
言うんじゃなかった。
煙が晴れる。
そこには――まだ、立っている影。
「ほらぁ……」
「すみません先輩。今はそれどころじゃないです」
先輩も、すぐに表情を引き締める。
「……だね」
確かに手応えはあった。
だが、切れたのはフードだけ。
露わになった素顔。
思わず、息を呑む。
――綺麗だ。
こんな状況じゃなければ、きっと見惚れていた。
でも。
今は違う。
その美しさが、逆に恐ろしい。
「時空跳躍」
女が呟く。
次の瞬間。
周囲に、人型が現れる。
「……八体」
空気が張り詰める。
だが、動かない。
女が、ゆっくりと手を上げた。
そのとき。
首元に、赤い紋様が見えた。
「……あれ」
先輩の目が鋭くなる。
「情報確認!」
「白石君!」
「どうしました!?」
「あの紋様……あの人以外の魔力が混じってる」
「……え?」
「多分――操られてる」
操られている。
その言葉が、胸に刺さる。
改めて見る。
確かに。
感情がない。
人なのに、人じゃないみたいだ。
「……なら」
やることは、一つ。
「助ける」
小さく呟く。
「先輩。行きましょう」
「うん!」
踏み出す。
その瞬間。
地面に、魔法陣が広がった。
人型たちを頂点に、空間全体を覆うように。
「――まずい!」
「もう遅い」
女の声。
「準備は、完了した」
空を見上げる。
光。
一つ。
「……あれは」
空から、落ちてくる。
流星。
一つじゃない。
無数。
「……っ」
言葉が出ない。
「あれ、全部落ちてきたら……」
先輩の声が震える。
(無理だ)
分かっている。
防げない。
逃げるしかない。
(危なくなったら、逃げろ)
“社長”の言葉がよぎる。
でも。
「……ごめんなさい」
小さく呟く。
足が動く。
逃げる方向じゃない。
逆だ。
「白石君!?」
走る。
怖い。
足が震える。
それでも止まらない。
(ここで逃げたら、きっと後悔する)
中心へ。
女の元へ。
魔力を使い切って、動けないようだ。
落とし前は、後で付けてもらおう。
…
どうやって止めよう。
分からない。
何も考えていない。
それでも――
剣を握る。
(どうせなら、最後くらいカッコつけたいよな)
苦笑する。
流星は、もうすぐそこだ。
涙が滲む。
怖いからか。
悔しいからか。
分からない。
一滴、落ちた。
その中に――光が映る。
赤。
青。
緑。
三つの光。
重なって――
白になる。
「……あれ」
違う。
空じゃない。
「……剣?」
光が、溢れている。
手の中から。
(これなら――!)
だが、遅い。
もう時間がない。
そのとき。
「――攻撃魔法:防御結界!」
声。
すぐ隣。
光の壁が、展開される。
「……え」
そこにいたのは。
「先輩!?」
「私を――」
少し怒った声。
でも、どこか笑っている。
「私を、悲劇のヒロインにするつもり?」
息を切らしながら。
それでも、前を向いている。
「君だけ死ぬのは、許さないから」
「……っ」
言葉が出ない。
ただ、頷く。
(間に合う)
今なら。
剣を握る。
光が、集まる。
膨れ上がる。
まるで、応えるように。
恐怖も。
後悔も。
想いも。
全部乗せて、振りかぶる。
「――うおおおおおおッ!!」
振り下ろす。
光が、形を変える。
巨大な刃となって、空を裂く。
迫り来る流星群へ――
叩き込む。
閃光。
轟音。
世界を切り裂く、一撃。
ちょっと長いかも?
明日も投稿




