#10 決戦
塔の最上階は、思いのほか広かった。
天井はない。
広がる空は、夕焼けに染まっている。
「先輩ー!」
声が空に溶ける。
返事はない。
胸がざわつく。
そのとき――
「動かないで」
背後。
首元に、冷たい感触。
ナイフ。
「……っ」
いつの間に。
気配すらなかった。
「離れろ!」
反射的に振り返り、剣を振る。
――空振り。
女は、既に数歩先にいた。
「やっぱりな……」
確信する。
こいつが――全ての元凶。
「先輩を返せ!僕らを元の世界に戻せ!」
剣を構える。
女は、静かに呟いた。
「あと少し……本当に、あと少しで完成するのに」
フードの奥は見えない。
だが、その声には迷いがない。
「仕方ないわね」
ゆっくりと手を上げる。
「スキル:時空跳躍」
次の瞬間。
身体が、宙へ放り出された。
(落下攻撃!?)
空中で無理やり体勢を整え、剣を振る。
衝撃を殺す。
――着地。
「ぐっ……!」
地面に叩きつけられながらも、何とか耐える。
だが――
休む間もない。
女が、無造作にナイフを放った。
軌道は単純。
だが、その先にゲートがあった。
「……!」
ナイフが、消える。
次の瞬間。
真上に現れる。
「この……!」
避ける。
だが、落下地点にもゲート。
また消える。
また現れる。
「終わらない……!」
「無駄よ」
「避けても、弾いても、結果は同じ」
淡々とした口調。
「諦めたほうが身のためよ」
「……ふざけるな!」
叫ぶ。
足が動く。
恐怖を押し殺して、前へ。
(テレポート中は止まる……!)
(なら――距離を詰める!)
一気に踏み込む。
ゲートの合間を縫う。
あと一歩。
届く――
「甘いわね」
女が、消えた。
「っ!?」
背後に現れる。
「動けないとでも思った?」
低い声。
「あれは劣化版、本物には劣る」
(……そんな……)
一瞬、思考が止まる。
勝てない。
そう思った、そのとき――
爆発。
空気が揺れる。
「情けないな、白石君」
聞き慣れた声。
「私が助けに来たよ」
「先輩!」
「……何故だ」
女の声に、初めて揺らぎが混じる。
「抜け出すくらい、簡単だよ」
軽く笑う。
「ちょっと魔力を放出するだけ」
(絶対簡単じゃないだろ……)
「白石君」
真剣な声。
「私が抑える。君は――一撃だけ考えて」
「でも先輩――」
「女に沢山聞くのは、野暮ってもんだよ」
言葉を遮る。
その手には、杖。
「攻撃魔法:閃光!」
光が走る。
一直線に、女へ。
「……っ」
女が回避に集中する。
その一瞬。
迷いはない。
恐怖も、全部置いていく。
踏み込む。
距離を詰め、剣を振りかぶる。
女の反応が、わずかに遅れた。
「――っ!!」
振り抜く。
空気が裂ける。
それは、全てを込めた、一撃だった。
明日も投稿
今回で終わらせれなかった…




