#113 帰宅の気持ち
気が付くと、そこには"聖霊王"――ポラリスが横たわっていた。
魂はこの剣に収められているはずなので、脱け殻と言った方が良いのかもしれない。
――剣が不服そうに光った。
この剣も、随分活動が活発になったものだ。
最初の頃なんて、死にかけたときしか反応してくれなかったのに…
やっぱり、元の肉体が近くにあるからなのかな?
「この体は私が持っていくから、先導よろしく」
フィアナさんが、ポラリスの体を担ぎ上げた。
「分かりました。どうにかして誤魔化して下さいね」
「誤魔化す?」
フィアナさんは、よく分かっていないようだった。
「入ったときに二人だったのが、出てきたら三人になってるんですよ。そりゃ驚かれますよ」
「オッケー。適当に考えてみるわ」
そうは言ったものの、不安は拭えない。
「出てきたか。何かあったか?」
出ると、理事長がいた。
「理事長!?なんでこんな所に…」
すると、彼は当然のように言った。
「我が校の生徒もこのプロジェクトに参加している。視察しているのだよ」
視察か…
厄介なものが増えた。
「ところで、その方は?」
やはり、視線はポラリスに向いた。
「この人ですか?この人は…」
すると、口が止まった。
「まさか、なんにも考えてなかったんですか?」
小声で尋ねると、揺れた声が帰ってきた。
「あの…気がついたら、倒れてました」
自信がなさそうな声。
特に面白くもない、それでいてよく分からない理由。
「そうかそうか」
しかし、理事長はなぜか納得した。
「大魔導師の君が言うなら、間違いではないのだろう。今日はもう帰るのか?」
「そうですね、お先に失礼します」
そう言ってから、フィアナさんは逃げるように走り出した。
「――ギャグセンス無いんですね」
「うるさいわね!この人結構重いから、考える暇無かったのよ!」
すると、剣が眩しいほどに光る。
「怒ってますよ」
「事実よ」
再び、剣が光った。
家の近くに着いた頃には、もう日は完全に落ちていた。
「ちょっと…ホントに重い」
フィアナさんは、さっきからずっとあんな感じ。
「もう少しで家ですから、頑張ってください」
「そもそも、肉体と魂があるならこの場で復活させればいいじゃない!」
「それができないんですって。神格者全員集める必要があるそうです」
「だからって…じゃあ持つの変わって」
「え!?」
「それぐらい頑張ってよ。私は家まで案内するからさ」
そう言って、押し付けられる。
仕方なく持つと、何故か剣が光った。
「――持たられるの、嫌なんじゃない?」
フィアナさんがニヤける。
「いやいや、まさか…」
否定しきれない。
「ほら、進むよ!後少しなんだからさ!」
フィアナは歩き出した。
まるで、さっきまでの疲労が嘘のよう。
「待って下さいよ」
しかし、止まる気配がない。
帰宅時の社会人も、こんな気持ちなのだろうか?
喜びと疲労。
家が既に見えている分、2倍増しで襲ってくる。
「剣まで持ってて、大変なんですよ――」
その声は、フィアナに届かなかった。
もう鍵に手をかけている。
「お帰り。どうだった?」
家に入ると、ルナが迎えてくれた。
「それは、コレを見たら分かるでしょ」
フィアナの言う、コレ――ポラリスに向く。
「見つかったんだ…」
ルナは、力が抜けたように座り込んだ。
「良かった…二度と会えないかと思ってた」
その声には、安堵と歓びが混じっていた。




