#110 人形
「これ、どうする?」
「困りましたね…」
二人の目の前には、大きな壁が立ち塞がっている。
「分岐とかもなかったから、多分ここのはずだけど」
取っ手も、レバーも見つからない。
「壊してみましょう。何か手がかりがあるかもしれません」
剣で斬ろうとした。その時――
「壊すのは駄目。ここは遺跡だから、下手にやったら怒られるよ」
耳が痛くなる言葉、"遺跡だから"
これで、力技は不可能だ。
「じゃあ、どうしよう…」
休憩がてら、壁に寄りかかった時だった。
――ガコン
何かが作動した。
罠だろうか。いや、違う。
壁だと思っていたところが、開いた。
――全く関係のないところが。
「湊君。コレどうするのよ」
フィアナさんが言う。
その中には、土製人形が居た。
「ウガァァァ!」
ゴーレムは雄叫びを上げ、一歩進む。
「これは、戦わないといけないやつね…」
白石は剣を、フィアナは杖を取り出す。
「いいわ。さっさと終わらせましょう」
こうして、土製人形戦が始まる。
開幕後、動いたのはフィアナ。
「空圧制御!」
狙うは足元。
空気の厚で、移動を不能にした。
「湊君!」
「分かりました!」
一瞬の言葉。
しかし、思いは伝わっていた。
そのまま、剣を構える。
「うおらっ!」
固定されているうちに斬る。
ゴレームは土からできていて、非常に脆いはず――
刀身が、人形へと触れる。
「このまま…」
――スッ
剣の勢いにつられ、転倒。
「湊君!?ちゃんとやってよ!」
そのころ、湊は混乱していた。
おかしい。さっきは確かに当たっていたはず。なら…
「まさか、土だから斬っても意味がないのか」
あくまで"人形"ということだろう。
「なら、木っ端微塵に吹き飛ばすわよ」
ちょ、ちょっと待って――
「炎華爆発!」
ああ、やっちゃった。
とっさに身をかがめるが、衝撃が来ない。
勿論、ゴーレムにも届いていなかった。
「な、なんで!?確かに発動したのに!」
もう一度発動させるが、結果は同じ。
「フィアナさん!次の攻撃をしてください!」
すぐさま、入れ替える。
「私には空圧制御しか無理!攻撃は任せたよ」
そんな無責任なこと…
そうは言えど、こちらも攻撃は通らない。
もともと巨体で攻撃が通りにくいのに、ほぼ無敵とか…
その時、手元が光った。
『――弱点は、必ず見える。何処に在っても、隠しきれない』
今のは…
「湊君!」
フィアナさんの必死の叫びが耳に届く頃には、すでに遅かった。
「グォォォォ!」
フィアナは、ゴーレムに捕らえられている。
「痛い!」
そして、ギリギリと攻められる。
「フィアナさん!」
剣を振っても、届かない場所。
どうすれば…
その時、さっきの言葉が脳裏に浮かぶ。
"弱点"…?
ゴーレムを見る。
足元でもない。
腕でもない。
どこか一箇所、他と違う所はないか?
頭か?それとも…
――首か。
「フィアナさん!首元、何かないですか?」
「首…?あ!」
フィアナは気付いた。首元に、魔力が集中している事に。
「魔力が集まってる!たぶん弱て…ウッ」
ゴーレムが、握る力を強めた。
「…早く」
「フィアナさん!」
剣の反動を付け、無我夢中で跳び上がる。
「フィアナさんを…離せ!」
首を狙って、剣が弧を描く。
ザクッ――
土が斬れる音が響く。
「最後に、もう一回――」
しかし、勢いは明らかに減っていた。
次には間に合わない。
湊が焦ったその時、後ろで爆音が響いた。
「…炎華爆発」
フィアナさんが、爆発で加速させてくれたのだ。
剣速が増す。
刹那、ゴーレムは土と還った。
そして、重力に逆らえずフィアナの身体も落ちる。
そして――着地した湊が急いで走り、真上に落ちてくるのだった。
「危なかった…」




