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#109 遺跡の中

アル=ゼリオ第七遺跡群――

それが、ここについた名前だ。

魔力が血管のように蠢き、生命の存在を拒んでいた他の遺跡とは異なり、ここだけが生命が生い茂っている。

まるで、箱舟のように。

「綺麗な場所ね。今まで見つかっていなかったのが不思議なぐらいだわ」

「多分、綺麗すぎて何もない普通の場所だと思っていたんじゃないですか?」

木を隠すなら――ではないが、一見何も無いように見えてしまう。

「そうかも知れないわね。情報確認(パラメーターチェック)だと、こちら側から反応が出てるわ。行きましょう」

反応の方に進む。

きっと、"聖霊王"がいると信じて…


遺跡の中は思ったより広く、程よい光が入ってきている。

きっと、外からは見えない窓があるのだろう。

空気も、特にこもってはいなかった。

「良かったわね。毒ガスが充満していなくて」

「本当にです。そもそも、自由行動なんかしていいんですか?」

本来は増援という名目だったのに…

「許可は取っているわ。それに、不用意に人に見られないほうがいいわよね?」

頷く。

「ありがとうございます。何から何まで…」

少し、申し訳ない気分になっていた。

「弟子のことも、私のことも一度救ってくれているじゃない。困った時はお互い様よ」

これが人望。

持ちつ持たれつ…この感覚はどこでも変わっていないのかもしれない。

「進むわよ。どんな罠が潜んでいるか分からないから、気をつけて…」

フィアナさんが一歩進んだ、その時…

――カチッ

どこかで、スイッチが押された音がした。

「なにか作動したようね…」

警戒し、二人で辺りを見渡していると…

ドオーン!

目の前に、巨大な岩が現れた。

そして、それは少しずつ――転がってる!?

ゴロゴロと、不気味な音を立てながら。

すぐさま我に返り、走り出す。

「フィアナさん!どうにかしてください!」

「無理よ!下手な魔法使えないし――」

魔法を下手に使うと、暴発して遺跡が傷つく可能性があるのは明らか。

しかし、このままだと轢かれてしまうだけ。

「何かないか…?手頃な武器――」

手に取ったのは、いつもの剣。

「――どうやって斬ればいいんだ」

向きを変えた瞬間、踏み潰されるのがオチだ。

しかし、考えている間にも岩との距離は縮まっていく。

「…仕方ないわね。今から湊君を飛ばすわ」

フィアナさんが変なことを言った。

「それってどういう…」

嫌な予感がする。

「炎華爆発(エクスプロージョン)」

フィアナは、小さく呟く。

身体の被害が最小限に、そしてすぐ復帰できるように…

「うわっ!」

白石のすぐ後ろで、小さな爆発が起きた。

岩は何とも無いが、白石は…

少し転がり、立ち上がる。

「早くして!」

フィアナさんは益ますます追い詰められていた。

距離は十分。

「今しかない!」

剣に力を込め、大きく掲げる。

刀身が光る。

そして――次の瞬間には、岩が斬れていた。

「遅いよ」

「感謝ぐらいしてください」

「それはできないわ。嫌な存在になるのが大人の役割だから」

わざわざならなくてもいいのに。


その後、フィアナさんは次々と罠に引っかかっていった。

糸に引っかかって矢を打たれそうになったり…

「防御結界(ディフェンス)!」

落とし穴に落ちたり。

「浮遊移動(エピリオン)!」

更には、押しつぶされそうになったりまで。

「むぐぐ…炎華爆発(エクスプロージョン)!」

――よく考えると、対応能力は一流だな。

"多彩な魔法に経験。後はもっと若くて、用心深かったらモテてたでしょうね"なんて、口に出してはいけない。

「何か考えた?」

「何もありませんよ」

悟られないように答えるが――

「虚偽確認(オブザーバー)」

《結果:嘘》

「失礼なこと考えてた?」

「…いいえ」

《結果:嘘》

「年齢に関すること?」

「…はい」

《結果:真実》

まるで誘導尋問だ。

「失礼なこと考えないでよ。コレでもまだ30代だから」

30代は十分――いや、言わないでおこう。

越えても綺麗な人もいるからな。ルナとか…


遺跡も、奥に行くに連れ暗くなる。

しまいには陽光も入らない、完全な闇。

「フィアナさん。何か明かり持ってませんか?」

「ちょっと待って…照明天火(ライト)」

ボワッと、光が浮かんだ。

それは、自然に舞い上がり、周囲を明るく照らす。

「こんな魔法もあるんですか。人口太陽みたいですね」

さらに、自動で動いてくれる機能付き。

これで光を気にせず進めるようになった。

「この遺跡、ずいぶんと深いわね。他とは大違い」

「なにか、守りたかったものが在ったんでしょうか」

考えれるのは一つだけ。

やはり、"聖霊王"だ。

「"聖霊王"なんていままで伝承の中でしか聞いたこと無かったわ。縁があるものね」

「伝承の中のって、どんな人だったんですか?」

「世界を守るために自らを封印した守護者――って感じだわ」

「変わらないですね…」

"聖霊王"エスピリト=ポラリス。

まるで聖母みたいな人だ。

「その剣の中に魂がいるのは確実なのよね?」

「はい。今まで何度か会ってますし」

剣が、ほんのり光る。

「ということは、今はミイラ化しているんじゃない?それか腐っているか…」

「いや、だって神格者ですよ。流石にそんな事…」

あったらどうしよう。

「回復魔法(ヒーリング)でどうにかなるかしら?」

「流石に無理でしょう…」

そう言いながら、少しずつ進んでいくのだった、

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