#106 夢と希望の遺跡
「どうだ。少しは仲良くなれたか?」
秘書と"社長"が向き合って報告をしている。
「それが…仲良くなれたのは事実ですが、思ったよりも勘の良い奴らでして、後少しで私の計画がバレる所でした」
すると、"社長"は少し顔をしかめた。
「それは困るな。私も運命を乱すわけにはいかない。全てはシナリオ通り行われなければ意味がないのだ」
そして、椅子を後ろに回す。
「しかし、歯がゆいものだな。託すことしか出来ないというのは」
表情こそ見えないものの、声は翳りを帯びていた。
「そうですか。でも、彼らは意外と――」
外はまだ、朝焼けが光っていた
『本日も、ラグナ魔法鉄道をご利用いただき、誠にありがとうございます。次は終点、ソル=ラグナです。お降りの際は、お忘れ物をなさいませんようご注意ください』
二回目のアナウンス。
窓からは、田園のすぐ側に立つビル群。
「まさか、もう一回来ることになるとはね…」
先輩が景色を見ながら言った。
「先輩の師匠は元気ですかね。泊めてもらわないと寝る場所がなくなりますし…」
今回のは調査も何も絡んでいない。
つまり――自腹で全て解決しなければいけないのだ。
「壮大なヒッチハイクとは恐れ入ったね。流石はパートナー」
それは褒めてるのかどっちなんだ…?
「あと、ここは私たちにとって特別な場所だよ」
そう。ルナと初めて出会った場所だ。
「いきなり飛び出してきたときはビックリしたけど、まさかこんな関係になるとはね。恋愛エキスパートの私ですら想像できなかったよ」
「へへん!」
なぜかルナがふんぞり返っている。
「それに、とんでもない過去持ってるとか、中々重すぎない?」
「パートナーだし、受け入れてくれるでしょ」
とんでもない信頼のされ方をしている気がする。
「…そろそろ降りるよ」
案内板が空を飛び、人が見た目に伴わない速度で移動する相変わらずの情景。
「――変わらないねここも」
最初の時のように、ソル=ラグナはいつも通りの顔を見せていた。
「行こうか。早く行かないと説得できなくなるかも――」
言い終わる前に、前回と同じ見た目のロボットが近くにいた。
「フィアナさんの家までお願い!」
そして、音も立てずに魔法仕掛けのロボットは進み出した。
中心街からさほど遠くない位置に、フィアナさんの家は建っている。
「早くインターホン押しちゃって下さい」
先輩を指す。
「…なんかドキドキする!」
インターホン押すときなんてみんなそうだと思いますけど…
《ピーンポーン――》
電子音が響く。
「はーい…って!」
カルナの声が聞こえた。
――ブツン。
「あれ、切られちゃった?」
そんな音が聞こえた。
「先輩何かやったんじゃないですか?」
「でも、向かってきてるっぽいよ」
確かに足音は近づいていた。
「でも、何か言おうとしてたよね。何だったんだろう」
ただビックリしただけかもしれないし…
その時、鍵が開いた音がした。
「葵ちゃんー!久しぶり〜!」
フィアナさんが出会い頭に先輩に抱きつくところは変わっていなかった。
――これぐらいは変わっていて欲しかったな…




