#102 世界樹と竜族
一人目は、畑作業をしていた男性。
「あの――ちょっと良いですか?」
恐る恐る声をかける。
「何だい?手短に頼むよ。私は今忙しいからね」
一人目ゲット!
「地獄の氷河のこと、なにか知ってませんか?」
単刀直入に聞く。
「ああアレかい?確か…400年前の」
「そうです!」
「アレなら――帝国で事故が起きて発生したことしか知らないな」
「どんな感じでしたか?」
「今と同じで畑作業をしてたら。急に空が暗くなったんだ。そしたらあんな事になってたと。こっちに被害がなかったのが幸いだったな」
「そうでしたか。ありがとうございます!」
二人目は、道行くおばあさん。
「なにか手伝いましょうか?」
「あら、いいのかい?」
渡されると、想像よりも重い。
流石は竜族だ。
年をとっても怪力。
「あの…質問いいですか?」
ここで踏み込む。
「もちろんだよ。なんの事だい?」
「地獄の氷河のことですが…」
「ああそれかい。いきなり来たときはビックリしたけど、あの世界樹様が、護って下さったのよ。あんなの今まで見たこと無かったわ」
その後、おばあさんは世界樹の方を向いた。
「今生きてるのも世界樹のお陰。感謝してもしきれないわ」
「そうですか。ありがとうございます」
もちろん荷物の運搬も忘れてはいない。
「ここまででいいわ。どうもありがとうね」
「いえいえ、こちらこそ」
深く礼をして、去っていった。
三人目は、寄宿舎にいた世界樹の傭兵。
「あの――ちょっと良いですか?」
訪ねてみると、この前に僕を案内した傭兵だった。
「ああお前か。俺のことをチクってないだろうな?」
「そんな事しませんよ――いや、言っちゃおうかな?」
意地悪で悪魔的な閃きが浮かんだ。
「口封じしたいなら――世界樹の事を教えてくださいね」
この笑みも相手には効くはずだ。
「クソガキが…」
傭兵はため息を付いて言った。
「分かった。ゼッタイに言うなよ」
机に座り、話し出す。
「あの樹は、ただの樹じゃない」
いきなり、そんなことを言い出した。
「それは知ってますよ。地獄の氷河から守った――とか」
すると、傭兵は首を横に振った。
「たしかにそうだが、別にあの樹はここの守護者ではない。ただ、自らを守ろうとしただけなんだ」
「それってどういうことですか?」
「あの樹は、文字通り世界樹だ。世界を支える――とかではないがな。あの樹を登ると、"天界がある"と言われているのだ」
天界――?
「ただ、直接見た人はいない。言い伝えが殆どで、"妄想の産物"と言われていたりもする。それでも――」
傭兵は上を向いた。
「いつかは、登ってみたいものだ。たとえ、どれだけ無謀でもな」
「無謀って…」
「天界は遥か上空にあるんだ。生きて帰れるものなど、それこそ超人でもない限りは無理だろう。そのために、俺達のような傭兵がいるんだ」
「ああ、そういうことですか」
また謎が解けた。
「ほら。もういいだろう。念を押すが、ゼッタイに言うなよ!」
「白石君、調べ物は終わったの?」
部屋でゴロゴロしていた先輩に言われる。
「竜族も人と同じで優しい人たちばかりだった」
水龍兄妹みたいない人が多いかと思っていたので、内心ホッとしていた。
「先輩も、外に行ってきたらどうですか?」
「嫌だよ。しばらくはこのままで…」
堕落に満ちている。
「明後日ぐらいには帰りますからね。忘れられた地を堪能しておいてくださいよ」
明日ぐらいは普通にバカンスしたいし――
「あれ?もう帰ってきたの」
部屋にルナが入ってきた。
「もう調べ終わったよ。明日ぐらいは真面目なバカンスでもする?」
「――しよう!」
もともとそういう理由だし。
「秘書さんは…多分着いてくるか」
結局、ほとんど一緒に行動していないなと思ってしまったのだ。




