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#101 新人類

『第三十四工程、滞りなく履行完了。続いて、三十五工程に移ります』

機械質な声が響く。

「今回の結果は?」

誰かが言った。

「順調です。少し魔力量が高いのが懸念点ですが…」

しかし、それは誤差の範囲内に収まっていた。

「これぐらいなら問題は無さそうね。続けて」

継続を指示。

「了解。これより、三十五工程の履行を開始――」

言い終わった時だった。

《ビー!ビー!――》

けたたましいサイレンと共に、叫び声が響き渡る。

「叫び声!?一体どこから!?」

「バカなッ!意識は消していたはずだ!」

誰かの悲鳴が聞こえた。

そして、壁一面に取り付けられた計器が異常を示す。

それは目で見ても明らかだった。

モニター越しの検体から、魔力が溢れていた。

「まさか、暴走…?」

――それとも、これは暴発か。

「まずいぞ!早く停止ボタンを!」

咄嗟の判断虚しく、効果は見られなかった。

ある人の目は、検体へと向く。

「遂に、生命体の域を変えてしまったようね」

そして、静かにつぶやいた。

「自らを力そのものへと変え、意思によって自らを破滅へと導く存在へと…」

そして――検体と目が合う。

思わず、背筋が凍った。

その紅い目には、半端な感情は宿っていない。

…ただ、憎しみだけが残っていた。

検体は、ゆっくりと手を上げ――

次の瞬間には、カメラ情報は消失する。

「ありえない!最高強度のガラスを貫通して攻撃するなど――」

「そもそも、外界とは完全に遮断されていたはず!なぜ発動した!?」

しかし、あるものは冷静だった。

「――なるほど。肉体の限界値を超えた先に、新たな生命が生まれるとは」

知的好奇心にうずもれた目を輝かして言う。

「ならば、新たな人類としての資格を持つ――そう、神のようにな」

その時、ここへと通じる廊下の映像に画面が移り変わる。

その映像に、検体が映っていた。

「今すぐに隔壁を降ろせ!少しでも足止めしろ。ここに…絶対に来させるな!」

恐怖混じりの言葉が放たれるや、すぐに姿は壁によって遮られた。

「これでしばらくは持ちこたえられるはずだ。その間に、なにか対策を――」

ガァン!

どこかで、壊れる音がした。

「おいおい嘘だろ…」

次の瞬間に、再びサイレンが鳴る。

「第一隔壁、損壊!」

絶望的な報告が飛び込んでくる。

「化物だ…」

誰かが腰をつく。

ふいに、検体がこちらを向いた。

そして――

「ここはもう駄目だ!なるべく遠くに逃げろ!」

その悲鳴も、少しずつ消えていった。



ずいぶんと早い朝。

「パートナー早く起きて!」

誰かに揺さぶられ、夢から覚める。

「今のは…?」

寝ぼけ眼をこすると、そこにはルナがいた。

「あれ?いつの間に帰ってきたの?」

そういや、昨日全然帰って来なくてそのまま寝たんだっけ。

「そんなことより、分かったの。復活の仕方!」

ルナが喜び混じりに言う。

「本当?なら早く…」

ところが、僕が思っていた以上にややこしい事態だったらしく――

「それが、今は無理なの。神格者を全員揃えないとだめなんだって。つまり――集めなきゃいけないの。残りの人達全員」

「全員!?」

思わず叫んでしまい、先輩を起こす羽目になった。

「ちょっと、まだ朝なんだから静かにしてよ」

「すみません…」

先輩は再びベットに横になった。

「――場所を変えよう。また怒られる」

宿から少し出た景色は、幻想的だった。

霧がかかっていて、後方には世界樹(ユグドラシル)

まるで、ゲームの一場面のよう。

「それで、どうすればいいの?」

「えーとね。3番が私で、9番がファント。10番(リゼリア)11番(シフリス)12番(フェイタル)は多分呼んだら来てくれるから――」

「残りの人達を揃えていけばいいと」

「そう。でも、場所が分かってるのはいいんだけど、分かってないのが7番と8番なんだよね」

「なにか心当たりはある?」

「――ない。でも、他の神格者に聞くしかないね」

これで、状況はまとまったと。

「なら早速忘れられた地(フロンティア)を――」

言い出したところを止める。

「ちょっと待って。まだ僕調べたいことがあるんだ。後もう少しだけ――」

「いいよ」

ルナは思ったより冷静だった。

地獄の氷河(コキュートス)も、"聖霊王"に関わってくるからね」

「ありがとう。あと2日ぐらいで終わると思うから」

今日から、聞き込み捜査が始まる――

「その前に、まずは朝ごはん食べようよ。私お腹空いちゃった」

「――そうだね。今日ちょっと早いけど…食べますか」

腹が減っては戦はできぬ。

毎日は朝食から始まるからな。

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