#103 バカンス
忘れられた地の空は晴れ渡っているが、僕の心の中は――
曇り、いや、雷雨と言ってもいいぐらいに荒れている。
――あんな事、言わなきゃよかった。
先輩、更にはルナにまで完全にドン引きされている。
「いくらバカンスとは言え、浮かれ過ぎじゃない白石君?」
はい。その通りです。
「まあまあ、パートナーが浮かれる気持ちは分かるよ」
しかし、その目は完全に軽蔑のそれだった。
なんであんな事言っちゃったんだろう――
『はい!ということで…今回は、忘れられた地に来てみました!――』
仲間の目線が痛いほど刺さる。
ああ恥ずかしい!
「いつまで過去のことを背負っているのです。早く生きましょう」
秘書さん、なんでそんなに淡白なんですか。
「貴方が落ち込むところを見たい人間なんか――この人ぐらいでしょう。いや、貴方は人じゃないから――」
分かりましたよ。
「すみません。もう二度とあんなことは――」
「ホントに。次やったら炎華爆発食らわすからね」
そんなに幻滅したように言わなくても…
「言っとくけど、ルナちゃんだからこうなってるんだよ?もし他の女性だったらその瞬間にフラれるからね?」
どことなく、本気の雰囲気だった。
「はい。気をつけます…」
「反省したならよろしい」
よし、もう気分は入れ替えた。
「さて。どこへ行こうか」
よく考えると、忘れられた地は山の上。海などない。
「ここらしいことがいいよね…上位存在でも観察してみる?」
ルナは超獣観察を上げた。
「でもそれキケンだし、この辺りのテーマパークとかの方が良いんじゃない?」
先輩はアトラクションを。
――あればの話だが。
「私は何でも良いわ。楽しめればそれでいいのよ」
秘書さんは何でも良いと。
「白石君はどうするの?」
言われて、口が止まった。
――なんにも考えてない。
「じゃあ僕もなんでもいいよ」
これが、悪手だった。
「なら――観察か遊園地かどっちかな訳だね」
もしかして――やっちゃった?
「――絶対、超獣観察の方が良い」
ルナが先陣を切る。
「いや、楽しむならテーマパークでしょ」
先輩も負けじと参加。
「だって、そんな感じのはこの前行ったじゃん。今後一生見れないかもしれない超獣の方が良いと思う」
それはたしかに一理ある。
「でも、見つからなかったときは時間を無駄にするだけじゃない。確定で楽しめる方が良いと思うけどな」
それも一理あるのだ。
――というか、口調が荒くなってる気がする。
今も言い合いしている二人は、完全にヒートアップしているのだ。
「やれやれ、水掛け論でないにしろ、このままだと今日の生活に支障をきたしますよ」
秘書さんが言う通り。
ただでさえ僕が変なことを言ったばっかりにおかしな空気だったのに、このままだと険悪に――
「ああもう!埒が明かない!パートナーどっちが良い!?」
ルナに突如言われる。
「なんで僕!?君たち二人で決めれば…」
「いや、それは名案ね」
ちょっと秘書さん!?
「貴方に決めてもらえば二人も納得するでしょう。またとないチャンスですよ」
「――なら秘書さんが決めて…」
「いえ。私は結構よ」
つまり――逃げたと。
「白石君早く決めて!どっちが良い!?」
どっちだ…?
正直、話を全然聞いていなかった。
運命を分けると言っても過言ではない二択は――
少し考えた後、言った。
「僕は、超獣観察かな…」
勿論、言い訳は考えている。
「だって、先輩とはこれから何度か行けるじゃないですか。でも、これは多分、今しかできない」
これは真剣にそう思っている。
「――なら仕方がないね。白石君がそう言うなら」
先輩も渋々認めてくれた。
…こうして、内容はまとまった。




