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オカルト研究部 田中祐一 今日も怪異あり  作者: waku


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消えた悪霊

 祐一たちは集会所に戻り、他のメンバーを探した。。。

***再会***


霧の向こうに、うずくまる峯川の姿が見えた。

広末は壁にもたれかかり、星川は倒れた山田を抱き起こしている。


「みんな無事か……!?」


祐一の叫びが、重たい空気を震わせた。


「……なんとか……!」


峯川が苦しげに応じる。


その瞬間――


集会所の中央に、あの女性の亡霊が立っていた。


白い着物が黒い霧の中でゆらりと揺れる。

その瞳は、底なしの闇。


「ここまで辿りつくとは……」


低く、湿った声が響いた。


床がミシリと軋む。

黒い霧がさらに濃く、渦を巻く。


同時浄化


「同時浄化だ。今しかない!」


寮が即座に告げる。


「霊光弾!!」


祐一の光が霧を裂く。

ほぼ同時に、陽菜の霊光弾が放たれた。


「霊光弾!」


美紀が素早く印を結ぶ。


「青龍召喚!」


蒼い霊獣が顕現し、亡霊へと襲いかかる。


春香も数珠を握りしめ、祈りを込めて叫ぶ。


「はっ!!」


幾重もの霊術が同時に叩き込まれる。


「ギィィィィィ……!」


絶叫とともに黒い霧が爆発的に拡散し、窓ガラスが砕け散った。


閃光。

轟音。


そして――静寂。


霧は、消えていた。


残された痕跡


集会所は元の姿を取り戻している。

床に散らばる霊符と荒れた室内だけが、戦いを物語っていた。


「……終わった……?」


祐一が息を呑む。


陽菜が静かに首を振る。


「いいえ」


美紀も険しい表情で周囲を探る。


「消滅していない……」


「逃げたな……」


寮の低い声が落ちる。


春香が小さく頷く。


「一瞬の差で……」


広末が震えた声を漏らす。


「でも……あれだけの霊術を受けて……」


寮はゆっくりと天井を見上げた。


そこには、黒い焦げ跡のような染みが残っている。

まるで、何かが上へ抜けたかのように。


「完全には浄化できていない」


陽菜が目を細める。


「……怨念が、まだ残っています」


寮の視線が鋭くなる。


「……まだ終わっていない」


祐一が護符を握りしめた。


「どこに行ったんだ……?」


冷たい空気だけが、集会所を満たしていた。


消えた気配


女性の霊は消えた。

だが、確かに、さきほどまでここにいた。


寮が静かに息を吐く。


「……気配が消えた」


陽菜が目を閉じる。


「完全に……途切れています」


「痕跡すらない……?」


美紀が眉をひそめる。


「さっきまで、あれほど強い怨念だったのに……」


春香の声は小さい。


峯川が壁に背を預け、苦笑する。


「……助かった、のか?」


誰も答えなかった。


明らかになる意図


祐一が拳を握る。


「でも……あの霊は、ここまで来た」


小川が震える声で言う。


「山道の出口まで悪霊を使って足止めして……」


「集会所を襲って……」


亜里沙が続ける。


広末が呟く。


「ここまで追って来るとは……思ってなかった……」


沈黙。


「本来なら、山の結界から出られないはずだった」


寮の声は重い。


「……あの霊は確実に力を増している」


陽菜が言う。


「しかも、私たちの動きを読んでいた」


美紀が険しい顔で続ける。


「山道の悪霊も……罠だった可能性があります」


祐一の背筋が冷える。


「じゃあ……最初から……」


「ああ。目的は分断だ」


寮が断言する。


「集会所を無防備にするための」


峯川が歯を食いしばる。


「執念、か……」


山田が小さく呟いた。


「……怨念、ですよね」


憎しみ。

怨念。

執念。


それが、結界を越えて追ってきた。


次なる脅威


「だが、今は手掛かりがない」


寮が全員を見渡す。


焦げ跡も薄れ、霊的残滓もほとんど感じられない。


「まるで……わざと痕跡を消したみたい」


陽菜が低く言う。


「知性がある……」


美紀の声は緊張を含んでいる。


祐一が息を呑む。


「また……来るんですか?」


寮は一瞬黙り、そして告げた。


「来る」


全員の顔が強張る。


「しかも次は――もっと準備を整えてな」


見えない視線


そのとき。


廊下の奥で、


コトン。


小さな音が響いた。


全員が同時に振り向く。


だが、そこには誰もいない。


夜の闇だけが広がっている。


「……気のせい、だよね?」


広末の声は震えていた。


誰も、否定できない。


女性の霊は消えた。

手掛かりもない。


だが――


確実に、どこかでこちらを“見ている”。


その感覚だけが、冷たい空気となって残っていた。


集会所の外で、風がざわりと木々を揺らす。


まるで、誰かが笑ったかのように。


***夜明け***


長い夜だった。


結局、誰も深くは眠れなかった。


祐一は壁にもたれたまま、うつらうつらと浅い眠りを繰り返し、

陽菜と寮は交代で見張りを続けた。


窓の外が、わずかに白み始める。


鳥の声が、遠くで一つ、また一つと響く。


夜は明けた。


だが――


集会所の中に残る空気は、まだ冷たい。


割れた窓から差し込む朝日が、床に散らばった霊符を照らしていた。


「……朝、か」


峯川が小さく呟く。


光が差し込むと、不思議と現実味が戻る。


だが、天井の焦げ跡だけは消えていない。


昨夜の出来事が夢ではない証のように、そこに残っていた。


そのとき――


外で車のエンジン音が止まった。


「誰か来る」


寮が顔を上げる。


数秒後。


コン、コン。


玄関が叩かれた。


「高原です。朝早くすまん」

町内会長の声だった。


広末が戸を開ける。

「おはようございます、会長……」


だが、言葉は途中で止まった。


高原会長は、室内を一目見た瞬間、固まった。


割れた窓。

焦げた天井。

倒れた机。

まだ片付けきれていない室内。


「……な、なんだこれは……」


ゆっくりと中へ入ってくる。


靴音がやけに響く。


「昨夜……何かあったのですか?」


寮が答える。


「霊的存在の襲撃です」


高原の顔色が変わる。


「やはり……」


「ご存じなんですか?」美紀が問う。


高原はしばらく黙り込み、やがて重い声で言った。


「山に……最後の場所があります」


全員の視線が集まった。


「最後の……場所?」


「ええ。山を登った先の平地に昔、落ち武者たちが追い詰められた場所だと言われています」


祐一の鼓動がわずかに速くなる。


「そこで……全員亡くなった、と?」


「そうです。逃げ場を失い、討たれたそうです」


高原は、天井の焦げ跡を見上げた。


「その中に、一人の女がいたという話があります」


空気が凍る。


「女……?」


「最後まで生き延び、崖際に追い詰められ――」


高原の声が低くなる。


「強い怨みを残して死んだ、と言い伝えられています」


沈黙が広がった。


朝の光は明るい。


だが、その話は夜よりも冷たかった。


寮が静かに尋ねる。


「その場所は、今も?」


「残っています。だが、近づく者は、いません」


「なぜです?」


高原は、はっきりと言った。


「行くと戻って来れない。と噂が広まっています」


峯川が息を呑む。


「昨夜の霊は……そこから?」


高原は、ゆっくりと頷いた。


「本来なら、あの地区、山周辺から離れられないはずです。だが……」


視線が祐一たちへ向けられる。


「君たちが関わったことで、動き出したのかもしれません」


祐一は、昨日、追った亡霊の事を思い出す。


昨夜、亡霊が現れ、誘い込まれた場所。


陽菜が答える。


「……あの山道の奥ね。」


寮が決断するように告げる。


「ならば、行くしかない」


朝の光が、山の稜線を照らす。


遠くに見える頂が、静かに佇んでいる。



***不穏な空気***


高原会長の話を聞いた後も、しばらく誰も動けなかった。


山頂――落ち武者たちが最後を迎えた場所。

そして、女の亡霊が強い怨みを残した地。


祐一が静かに言う。


「……そこが、根源ですね」


陽菜が小さく頷く。

「怨念の“核”があるなら、そこよ」


美紀は腕を組み、険しい表情を崩さない。

「でも、昨日の襲撃で分かったはず。あの霊は、ただの地縛霊じゃない。結界を越え、私たちの動きを読んでいる」


峯川が苦く笑う。

「山頂調査か……昼間でも、不穏だな」


高原が低い声で続ける。


「昼でも、霧が出ることがあるそうです。風が止まり、音が消える……妙な場所と言われています」


寮が決断する。

「今から向かう。直ぐに準備を整え、日が高いうちに山頂へ入る」


祐一が顔を上げた。

「昼間なら、少しは有利ですよね」


だが陽菜は、静かに首を横に振る。


「強い怨念は、時間を選ばないわ」


空気が、また冷えた気がした。

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