黒霧に沈む集会所
集会所では、徐々に異変が起こり始めていた。祐一たちは集会所への帰路を急いでいた。
***山道の出口・悪霊の群れ***
ようやく山道を抜け出すと――。
その前には、信じられない光景が広がっていた。
道路を埋め尽くすように、無数の黒い影がうごめいている。
悪霊だ。亡霊だ。
その数は、数十体――いや、数百体以上はいるかもしれない。
寮が、ハンドルを握りしめたまま呟く。
「なんてことだ……僕たちを罠に嵌めるのが目的だったのか……」
祐一の顔が、青ざめる。
「こんなに……」
小川も、声を震わせた。
「どうするんですか……!?」
その時、陽菜が静かに車を降りた。
「これくらいの悪霊……私が浄化する」
陽菜は静かに車を降り、前方の悪霊たちを睨みつけながら、両手を広げた。
「霊光弾……」
その瞬間、陽菜の周囲に、数十個の光の球体が浮かび上がった。
まるで、星々が集まってきたかのように。
亜里沙が、息を呑む「すごい……」
陽菜が、静かに呟く。
「行け……」光の球体が、一斉に放たれた。
次の瞬間、悪霊たちが、次々と光に包まれていく。
瞬時に、数十体の悪霊が浄化されていった。
悲鳴のような音が響き渡り、黒い影が消えていく。
亜里沙が、驚愕の表情で呟いた。
「すごい……こんなに一度に……」
***連携攻撃***
橘美紀も、車から降りた。そして、静かに呪文を唱える。
「朱雀よ、我が呼び声に応えよ……」
美紀の手から、赤い炎が立ち上る。
その炎は、次第に形を成していき――。
やがて、数体の朱雀が現れた。
炎の鳥が、空中を舞いながら、悪霊たちへと突進していく。
次々と、悪霊が炎に包まれ、浄化されていった。
祐一が、目を見張る。「あれが……本物の朱雀……霊府とは比べ物にならない」
春香も、車を降り、静かにお経を唱え始める。
「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……」その声が、周囲に広がっていく。
不思議な安らぎ感が、辺り一帯を包み込んだ。
すると、悪霊たちが、まるで光に引き寄せられるように、次々と浄化されていく。
争うことなく、ただ静かに消えていった。
祐一と小川が、顔を見合わせる。
「この調子だったら……」
小川が、興奮した様子で言う。
「ここに集まった悪霊を全て浄化できそうだ!」
祐一も、うなずく。
「ああ! これなら何とかなる」
しかし、寮が、鋭い声で言った。
「いや、これも何かの罠かもしれない。急ごう」
全員が、はっとする。
寮は、真剣な表情で続けた。
「おかしい。何か……別の目的があるはずだ」
陽菜も、同意する。「確かに……妙ね」
春香が、不安そうに呟く。
「もしかして……時間稼ぎ……?」
寮の表情が、さらに険しくなった。
「まずい……集会所だ……!」
***集会所・異変の加速***
その頃、集会所では、残ったメンバーたちが異変に気づいていた。
照明が、ついたり消えたりを繰り返している。
峯川が周囲を警戒しながら叫ぶ。
「なんだ……これ……!?」広末が、震える声で答える。
「怪奇現象が……強まってる……!」
星川が、札を手に取りながら言った。
「結界が……持ちこたえてるけど……
外からの圧力が、どんどん強くなってる……!」
松井あゆみが、全員に向かって叫ぶ。
「みんな、気をつけて……!」
その瞬間――。
窓ガラスが、ビリビリと震え始めた。
扉が、軋む音を立てる。
天井から、何かが落ちてくるような音が響く。
東都大学のメンバーたちも、顔色を変えた。
「これは……」
「何かが……来る……!」
空気が、一層重くなっていく。
まるで、巨大な何かが、集会所全体を押し潰そうとしているかのように。
広末が、護符を握りしめながら呟いた。
「早く……寮さんたち……戻ってきて……!」
そのとき、玄関の扉が、激しく叩かれた。
ドン、ドン、ドン。
全員が、息を呑む。
峯川が、震える声で言う。
「……誰だ……?」
返事はなかった。
ただ、叩く音だけが、執拗に続いていた――。
***集会所・防衛戦***
集会所の中では、寮が持ち込んだ魔よけのお香が焚かれていた。
煙が、部屋全体に広がっている。
そして、橘美紀が作成した霊符と、春香が書いたお札が、壁や柱、窓に貼られていた。
峯川が、札を握りしめながら叫ぶ。
「今度は、前の時より、こっちもパワーアップしているはずだ……!」
その言葉通り、扉を叩いていた悪霊たちは、結界に阻まれて中に入ることができずにいた。
結界が、淡い光を放ち、悪霊たちを押し返している。
広末が、少し安堵した様子で言う。
「本当だ……前より、ずっと強い結界ね……!」
星川も、うなずく。
「春香さんと美紀さんの札……すごい効果だ……!」
峯川は、すぐに浄化スプレーを手に取った。
「でも、油断はできない……!」
そう言って、窓の外に向かって霊符を投げつける。
霊符が光を放ち、窓の外にいた悪霊が浄化されていった。
次々と黒い影が消えていく。
広末も、別の霊符を投げた。「エイッ……!」
また一体、悪霊が浄化される。
広末が、少し驚いた様子で呟く。
「これだったら……なんとか持ちこたえられそうね……」
***連携防衛***
松井あゆみも両手に霊力を込める。
光の球体が浮かび上がった。
「行きなさい……!」光の弾が放たれた。
一体、また一体――。
悪霊が、光に包まれて浄化されていく。
松井が、真剣な表情で答える。
「でも、何かあるかもしれない。気を抜かないで!」
その時、1年生の山田が浄化スプレーを手に取った。
「僕も手伝います!」山田は、窓に近づき、スプレーを噴射する。
霧状の浄化液が、窓の外へと広がった。
すると、霧に触れた悪霊たちが、次々と浄化されていく。
まるで、霧が悪霊を溶かしているかのように。
山田が、驚きながら話す。
「すごい……!今度の浄化スプレーだったら、この程度の悪霊、なんとかなる……!」
東都大学のメンバーたちも、それぞれ霊符や護符を使って応戦している。
集会所全体が、一つの要塞のようになっていた。
峯川が、周囲を見回しながら叫ぶ。
「この調子だ……!寮さんたちが戻ってくるまで、持ちこたえるぞ……!」
全員が、声を合わせる。
「おう……!」
***異変の予兆***
しかし、その時、星川が何かに気づいた。
「……待て……」全員が、動きを止める。
「どうした?」峯川が尋ねる。
星川は、窓の外を見つめながら言った。
「悪霊の数が……減ってる……」
「え?」広末も、窓の外を確認する。
確かに、さっきまで群がっていた悪霊たちの姿が、少なくなっていた。
松井が、呟く「まさか……逃げた……?」
「いや……」峯川が、緊張した声で答える。
「そんなはずは……」
その瞬間、集会所全体が、激しく揺れた。
まるで、地震が起きたかのように。
全員が、バランスを崩す。
「な、何だ……!?」山田が、恐怖に震える声で叫ぶ。
照明が、激しく点滅し始めた。
そして、天井から、重苦しい気配が降りてきた。
まるで、巨大な何かが、集会所の真上に現れたかのように。
広末が、顔を青くして呟いた「これ……」
星川も、震える声で答えた。
「さっきの悪霊たちとは、別の何かが来る……」
空気が、一気に冷え込んでいくのをメンバー全員が感じ取った。
峯川が叫ぶ。「くそっ……!みんな、結界を強化しろ……!」
しかし、その瞬間、結界が激しく震え始めた。
まるで、何か巨大な力が、結界を押し潰そうとしているかのように。
松井が、悲鳴を上げた「結界が……持たない……!」
***再びの耳鳴り***
集会所全体に、あの耳鳴りが響き渡った。
キィィィィィン――。
高く、鋭い音が、頭の中に直接響いてくる。
松井あゆみが、頭を押さえてうずくまくった。
「痛い……頭が……痛い……!」
東都大学のメンバーたちも、次々と同じ症状を訴え始める。
「うっ……!」
「頭が……割れそうだ……!」
広末も、顔を歪めながら耐えている。
星川が、必死に護符を握りしめた。
峯川が叫ぶ。
「また……アイツが来る……!」その言葉に、全員の表情が凍りついた。
耳鳴りが、さらに激しくなる。
そして結界が、激しく震え始めた。
バリバリと、何かが割れるような音が響く。
山田が、恐怖に震える声で叫ぶ。
「結界が……結界が……!」
次の瞬間、結界が、完全に破られた。
光の壁が、粉々に砕け散った。
***女性の亡霊・再降臨***
静寂。一瞬の恐ろしいほどの静寂に呑まれる。
そして、集会所の中央に、白い着物の女性が現れた。
あの、悲しげな表情をした女性の亡霊。
しかし、今の彼女は以前とは、何かが違っていた。
その瞳には、深い憎悪と怒りが宿っている。
女性の亡霊は、ゆっくりとメンバーたちを見回した。
そして、低く、恐ろしい声で呟いた。
「……見つけた……」
峯川が、後ずさりする。
広末も、震える手で霊符を握りしめる。
女性の亡霊の口が、ゆっくりと開く。
「憎い……お前たちを……消してやる……」その声は、集会所全体に響き渡った。
まるで、無数の声が重なっているかのように。
松井が、震える声で叫ぶ。
「やめて……!」
しかし、女性の亡霊は、聞く耳を持たなかった。
***黒い霧***
次の瞬間、女性の亡霊の周囲から、黒い霧が噴き出した。
それは、瞬く間に集会所全体を包み込んでいく。
視界が、一気に奪われ真っ暗闇の闇に包まれる。
何も見えない。
峯川が、叫ぶ。
「みんな……! 離れるな……!」
広末の声が、闇の中から聞こえる。
「見えない……何も見えないよ……!」
星川も、必死に声を上げる。
「こっちです……! こっちに……!」
しかし、声だけが虚しく響くばかりだった。
黒い霧の中で、何かがうごめいている。
冷たい気配が、すぐ近くを通り過ぎていく。
山田が、恐怖に震える声で叫んだ。
「何か……何かが……いる……!」
松井が、必死に霊力を集中させる。
「光よ……!」
彼女の手から、微かな光が放たれた。
しかし、その光は、すぐに黒い霧に飲み込まれてしまう。
東都大学のメンバーたちも、闇の中で悲鳴を上げていた。
「助けて……!」
「誰か……!」
絶望的な状況に峯川が、歯を食いしばる。
「くそっ……!寮さん……早く……!」
***到着***
その時、集会所の外に車が急停車した。
寮たちが、車から飛び出す。
集会所を見た瞬間、祐一の顔が青ざめた。
「何だ……あれ……!」
集会所全体が、黒い霧に包まれている。
まるで、巨大な闇が、建物を飲み込んでいるかのように。
陽菜が、霊刀を抜く。
「まずい……!」
春香も、緊張した表情で言う。
「みんな……中に……!」
寮が、すぐに指示を出した。
「急ぐぞ……!春香、美紀、陽菜、結界を張りながら突入する……!」
「はい……!」三人が、それぞれ霊力を集中させる。
祐一も、護符を握りしめた。
「僕たちも……!」
小川と亜里沙も、覚悟を決める。
六人は、黒い霧に包まれた集会所へと駆け込んでいった――。
***突入***
扉を開けた瞬間、濃密な闇が襲いかかってきた。
視界が、完全に奪われる。
祐一が、叫ぶ。
「峯川……! 広末……! みんな……!」
しかし、返事はなかった。
胸の奥が、締めつけられる。
――間に合わなかったのではないか。
そんな最悪の考えが、祐一の脳裏をよぎった。
ただ、遠くから微かな悲鳴が聞こえるだけだった。
寮が、冷静に指示を出す。
「春香、浄化の光を……!」
「はい……!」春香が、両手を合わせる。
そして、お経を唱え始めた。
「光明遍照……十方世界……」
その声が、闇の中に響き渡る。
すると、春香の周囲から、柔らかな光が広がり始めた。
闇が、少しずつ晴れていく。
視界が戻ってくる。
そして――。
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