応援要請と新たなる戦力
祐一は、自分達だけでは、対処できない事を感じていた。対処する為には強力な助っ人が必要な事を。
***支援要請***
祐一は、少し離れた場所でスマートフォンを取り出し、すぐに発信した。
数回の呼び出し音のあと、通話がつながる。
「……寮さん。僕です、祐一です」
『どうした? 様子がおかしいな』
祐一は、深く息を吸い込み、これまでに起きた出来事を、できるだけ正確に説明した。
女性の亡霊。無数の悪霊。効かなかった霊術。
戦国時代の悲劇と、不完全な封印――。
すべてを話し終えると、しばし沈黙が流れた。
『……なるほどな』
電話の向こうで、遼が低く呟く。
『了解した。かなり厄介だな。すぐ動く』
祐一は、ほっと息をついた。
「ありがとうございます」
『春香にも声をかける。それから……親戚の陽菜にも連絡しておく』
「陽菜さんも……?」
『ああ。今回は、それくらいの戦力が必要だ』
寮の声は、真剣そのものだった。
『僕たちが着くまで、無理はするな。そこで大人しく待っていろ』
「……わかりました。お願いします」
通話が切れ、祐一は、静かにスマホを下ろした。
***防衛準備***
一方、集会所では、他のメンバーたちが、浄化結界の設置を進めていた。
床に護符を並べ、柱に札を貼り、結界線を張っていく。
星川が、ため息交じりに呟く。
「……正直さ、昨日のことを思い出すと……
この結界も、気休め程度だよな……」
「魔よけのお香も……どこまで効くか……」
山田が、不安そうに周囲を見回す。
「今の僕たちの戦力じゃ……正直、厳しすぎますよね」
広末が、小さくうなずく。
「……早く、寮さんたちが来てくれるといいんだけど……」
***聞き込み調査***
その頃、亜里沙たちは、近所の住民への聞き取りを続けていた。
「すみません。
あの場所について、何かご存じありませんか?」
年配の女性は、顔を曇らせて首を振った。
「あそこかい……」
声を潜める。
「お化けがいっぱい出るって、有名だよ。
この辺の人間は、誰も近づかない」
亜里沙が、息を呑む。
「……そんなに、危険なんですか?」
「危険どころじゃないよ」
女性は、真剣な目で言った。
「興味本位で近づいちゃダメだ。
……何人も、行方不明になってるんだから」
一瞬、沈黙。
「……あんたたちも、気をつけなさいよ」その言葉が、胸に重く残った――。
***集会所・夕刻***
夕方になり、集会所の中では、全員がそれぞれ宿泊の準備を進めていた。
毛布を敷き、荷物を整理し、簡易ベッドを並べる。
慌ただしい中にも、不思議と落ち着いた空気が流れていた。
やがて、大原会長が手配した夕食が、業者によって運び込まれた。
弁当箱や保温容器が、次々とテーブルに並ぶ。
「……けっこう豪華だな」
峯川が、目を輝かせて言う。
「ま、それだけ期待されてるってことだろ?」
小川が苦笑しながら続ける。
「それとも……失敗できないって意味かもな」
「ちょっと、小川くん」
松井あゆみが、たしなめる。
「せっかくの料理なんだから、素直においしくいただきましょうよ」
その言葉に、場の空気が少し和らいだ。
亜里沙たち、東都大学のメンバーの表情にも、久しぶりに笑顔が戻る。
「それにしても……」
東都大の一人が、しみじみと呟く。
「今回の調査は、想像以上に困難になってきましたね」
「青空大学のみなさんが協力してくれたから、ここまで無事に来られました。
本当に、ありがとうございます」
祐一は、首を振って答えた。
「いえ……東都大学のみなさんがいたからこそです。
お互いに、助け合えたんだと思います」
峯川が、腕を組んで言う。
「とはいえ……
これだけの人数が集まっても、歯が立たなかったってのは……先が見えねえな」
場に、再び重たい沈黙が落ちる。
――そのときだった。
「こんばんは」
玄関のほうから、落ち着いた声が響いた。
一同が、はっと顔を上げる。
祐一、松井、広末、星川が、急いで玄関へ向かい、扉を開けた。
そこに立っていたのは――寮だった。
その後ろには、橘美紀、春香、そして陽菜の姿もある。
「……来てくれたんですね!」
祐一の顔が、一気に明るくなる。
「待っていました。ありがとうございます!」
寮は、軽く肩をすくめて笑った。
「ちょっと遅くなったけどな。
急ぎで飛んできたんだ」
その言葉に、祐一たちの胸に、確かな希望が灯った――。
***集会所・奥の部屋***
寮たちは、集会所の奥の部屋へ案内されると、改めて全員の前に立った。
寮は、軽く頭を下げて名乗る。
「こんばんは。寮と申します。
普段は、オカルト雑誌の編集者をしています」
その名を聞いた瞬間、東都大学のメンバーの間に、ざわめきが走った。
「あの……もしかして……
あの有名なオカルト雑誌の、寮さんですか?」
「本物だ……」
「テレビにも出てた人だよね……」
次々と小声が漏れる。
他のメンバーも、思わず目を輝かせていた。
寮は、照れくさそうに苦笑する。
「いやいや……大した者じゃないですよ」
その後、しばらく雑談が続き、場の空気は次第に和らいでいった。
やがて――。
祐一が、話題を切り出す。
「……それで。
これからの調査について、相談したいんですが」
部屋の空気が、再び引き締まる。
寮は、腕を組みながら言った。
「明日は――
僕と陽菜、春香。
それから、祐一君、小川君、亜里沙さんと一緒に現地調査へ向かう」
その言葉に、峯川が思わず声を上げた。
「えっ……!?
それだけの人数で行くんですか?
危険すぎませんか?」
寮は、落ち着いた口調で答える。
「いや。逆だ」
一同が、息をのむ。
「人数が多すぎると、互いをフォローしきれなくなる。
動きも鈍くなるし、判断も遅れる」
視線を巡らせながら、続ける。
「このくらいの人数が、一番動きやすい。
連携も取りやすいし、撤退判断もしやすい」
静かな説得力があった。
祐一は、ゆっくりとうなずく。
「……確かに」
寮は、最後にきっぱりと言った。
「明日は、短時間・集中調査だ。
無理はしない。危険を感じたら、即撤退する」
その言葉に、全員が改めて気を引き締めた――。
***決戦前夜・準備***
夜も更け、集会所には静かな緊張感が漂っていた。
各自が装備や道具を確認し、最終確認を進めている。
祐一は、腕時計を見ながら小さく呟いた。
「……よし。明日は、少し早めに起きよう。
それと……これを」
そう言って、祐一は遼から差し出された包みを受け取った。
中には、春香が書いた護符と、橘美紀が作成した霊符――
それぞれ、数十枚ずつ入っていた。
遼が、静かに言う。
「今回のは……さらにパワーアップしている」
真剣な眼差しで続けた。
「それに、こっちの結界札もだ。
これも、美紀が書いたものだ」
祐一たちの前に、別の束を置く。
「少なくとも……
君たちが今まで使っていた結界よりは、はるかに強力なはずだ」
その言葉に、場の空気が引き締まる。
祐一は、一枚ずつ丁寧に取り分け、自分のポケットにしまい込んだ。
そして、他のメンバーにも手渡していく。
「一人につき、必ず持っていてください」
全員が、無言でうなずいた。
祐一は、残った札を机の上に置く。
「残りは、ここに置いておく。
もし…….留守の間に襲撃されてもなんとかなる筈だ……」
誰も、冗談とは思わなかった。
それほどまでに、状況は切迫していたのだ。
静かな決意が、集会所を満たしていった――。
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