↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔道士なんて聞いてない!  作者: 香月千夜
銀狼と桜花
PR
55/141

咲き初める想い(4)

夕食を食べ終えたチドリは、シャイル、ステラ、ファリアの三人と共に風呂に入っていた。

満点の星空の下で入る露天風呂は格別だった。聞けば、これも先代の魔道士によってつくられたのだという。湯面には色とりどりの花びらが浮かべられていた。


「はー……なんか、どっと疲れたわ。泣くのって、案外体力使うのね」

「二人とも、赤子のように泣いておったのう」

「……目がヒリヒリする」

「後で冷やした方が良いですわ。腫れてしまっていますもの」

「服も涙でグショグショだしね」


四人が顔を見合わせて笑う。

チドリは胸のつかえが取れたような、清々しい気分を味わっていた。


「ねえ、チドリ……お兄様に、伝えるの?自分の気持ち」


ステラがそっと尋ねる。しばらく夜空を見つめてから、チドリはしっかり頷いた。


「……怖いけど、言うよ。このままの状態でお城にいるより、きちんと告白して玉砕して、お友達に戻れたらいいなって思ってる」

(なんでフラれる前提なのかしら……)


疑問に思ったが、笑顔のチドリに水を差したくはなかった。


「……でもまだ、決心がつかないの。告白なんて初めてだし…………だ、誰かを好きになったことなんて、なかった、し」


チドリの頬が染まる。三人がニヤリと笑った。


「へぇ~?そうなのぉ?」

「え、あ、いや」

「チドリは、あの王子のどこが好きなのかえ?」

「まあ!それは私も聞いてみたいですわ~!」

「え!?」

「ほらほら、白状しなさいよぉ」


ステラがチドリの脇腹を擽る。チドリはたまらず奇声を上げて身を捩った。


「ス、ステラ!ちょ、ちょっとやめ……ふびゃっ!」

「おほほほ!言わないならこのままよ!」

「や、やめ、い、言う!言うから!離してっ!」

「それで、どこがお好きなんですの?」

「え、えっと、あの、や、優しいとこ……とか?」

「無難すぎるわよ!」

「ぎゃあっ」


そのうち、擽られ過ぎてチドリの息が上がった。湯の縁にグッタリともたれ、恨めし気にステラを睨む。


「も、もうダメ……のぼせた、かも……」

「先に上がってる?涼んでていいわよ」

「ステラのせいなのに……」

「白状しないチドリが悪いのよ」

「もー……」


ふくれっ面のまま、チドリが一人湯から上がった。その背が脱衣所に入るのを見届けてから、三人が額を寄せ合う。


「どう思う?あれ」

「ふむ……完全に玉砕する気でおるの」

「前向きに後ろ向き、って感じですわね」

「ホントよね……でもまあ、告白する気になってくれてよかったわ」

「傍目から見れば、完全にすれ違いを起こしておるようじゃからのう」

「あとはレアン様次第、ですわね」

「そこなのよねー……お兄様も、何か相当な勘違いして落ち込んでるみたいだし」

「それならば、妾に良い考えがあるぞ」


ヒソヒソと話すシャイルの声に耳を傾けた二人の表情が、パッと明るくなった。


「すごい……!シャイルさん、そんなことできるの!?」

「これでも一国の魔道士じゃからの」

「その方法なら、誰の邪魔も入らなくて済みますね!」

「よーし……じゃあ、それでいきましょ!」


星空に向け、三人は小さく拳を突き上げたのだった。



着替えを済ませたチドリは、珠桜の部屋を訪れていた。

夜空の下、いくつかの蝋燭が幻想的に桜の花を照らしだしている。淡い橙色の火の明かりが、薄紅を染めていた。

その根元に腰を下ろし、幹に頭をもたれさせる。優しい香りに包まれ、心が穏やかになっていく。

空気が揺らぎ、精霊王達が姿を現した。


「みんな……?」

『チドリ……!も、もう大丈夫なのか!?』

『ずっと泣いてて、皆心配してたのよぉ……慰めてあげたかったけど、出て行けるような雰囲気でもなかったし……』

『…………心配、したぞ』

『全く、蜂に刺されたような目をしおって……』

『元気に、とは言わないけど、せめて笑えるようになってよかったよ』

『う、うん……安心、したよ』


六人の言葉に、チドリの頬が緩む。


「ありがとう、皆」

『いいのよぉ。チドリちゃんが笑ってくれて、私達もほっとしたわぁ』


翠妃がチドリの頭を撫でる。それに続いて、紅焔と琥珀もチドリを撫でた。

夜桜の下で、チドリは何とも言えない満たされた気持ちに浸る。


まだほんのり熱い瞼を、花風が優しく冷ましていった。

「咲き初める」の「初める」は「はじめる」ではなく「そめる」と読みます(^_^;)一応、言わせて頂きたく……すみません(-_-;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。