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狩り人49

身を隠していた岩陰より身を乗り出し辺りを確認するダリル。

暴力的なまでに荒れ狂っていた暴風。

その瓦礫を含む嵐を岩陰にて資材を盾に身を伏せ遣り過ごしていた。

運の悪い者は岩陰などに身を隠したにも関わらず、飛来した瓦礫による被害を受けていたりする。

逆にツイている者には退避が遅れ身を隠せ無かったにも関わらず、大した被害を受けなかった者も居るが…

人の運などと言うモノは、分からないものである。

ダリルは暴風を遣り過ごした後に、一度ゼパイルと共に岩陰より出ている。

状況確認の為だ。

正直、あの暴風が荒れ狂っていた場所へと身を曝すのには戸惑いがあった。

いや。

怖れか…

それはそうであろう。

己の身を守ってくれた盾とも言える岩。

その庇護となる陰より出でて無防備に己を曝すのである。

不安を抱かずに行動する者など稀であろう。

そして、その様に危機感の無い輩は長く生きられ無い世界でもあるが…

先程、岩陰より出て辺りを確認した際にダリルは、余りに酷い有り様に絶句した。

あの一瞬にて此処まで被害が齎される物なのかと、戦慄を覚える程である。

その状況に怖気を感じ身が竦んだが、事態を把握し対策を練らねば討伐どころか身が危険である。

己を叱咤しつつ、獣竜ガルオーダの状態を確認。

そして生き残ったバリスタより放たれた鉄矢が、ガルオーダが纏う風の盾に弾かれるのを目撃したのだった。

(化け物だっ…)

絶望感にて怯む脅えと動揺に目線が揺れる。

仕方在るまい。

ダリルは16になったばかりの少年である。

ハンターを夢見、ハンターとなる為に修行を積んだとは言え、まだ若い。

彼は、そんな自分に戸惑いながら岩陰へと戻ったのだ。

岩陰には2人以外にも討伐員が隠れていた。

そんな彼らは状況把握する為の情報を欲していた。

だが己が岩陰より出でて状況確認を行うのは怖い。

それはそうであろう。

先程の状態を体験してしまえば、誰でも同じ様になるものだ。

だが…

少年であるダリルに危険を冒させ己は安全な場所へと身を隠す…

忸怩たる思いではあった。

2人が戻り戦場の有り様を知る。

知れば知る程に絶望的な状況だ。

現に、あの巨虎を倒した勇者である少年の瞳には脅えの色が。

(心が折れたか…)

熟練の騎士はダリルを見て悟る。

それも仕方在るまい。

彼とて現状を持て余しているのだ。

経験の浅い少年には耐えられまい。

戦場では多々ある事でもある。

その様に思っている時、少年の師であり元ランカーハンターである猟師が討伐へ赴くと…

その言に驚く少年。

猟師ゼパイルは訥々と告げる。

現状の有利さ、逃した場合の危険さを。

だが、決して少年へ命じはしない。

既に1人前だと扱っているのであろう。

自分で考えろと言う事であろうか?

脅えも動揺も表さない胆力。

そして困難現状にて状況を正しく捉え動く判断力。

凄い男だ。

そして、その男が育てた少年。

いや。

戦士ダリル。

覚悟を決めたのであろう。

その瞳には、既に脅えの色は無い。

引き締まった戦士の顔。

良い表情だ。

「ならば、我も行こう。

 晶武器は無いが、牽制程度は出来よう。

 お主ら2人にだけ任せるなど、名折れよ」

つい、口に。

騎士は、自分自身が発した言葉に驚きもした。

2人を見て高揚し、つい告げた言葉だったが…

(良く言った!)

己を誉めたい気分にも。

騎士とは民を守る者。

その志しを旨に騎士を目指した若い頃。

その熱き思いが鳴りを潜めて久しかった。

だが…

今、この時に心が揺さぶられる思いにて発露した言葉。

ただ生きるだけでは無い。

何を成し生きるのか…

例え命散ろうとも、それは彼にとり掛け替えの無い価値を持つ物なのだ。

彼に感化された訳ではあるまいが、他の騎士達やハンター達も立ち上がる。

そんな彼らへゼパイルは何も告げぬ。

静かに岩陰より出て戦場へと向かうのみ。

ダリルも最早語らない。

黙って師に続く。

2人が岩陰から去り、それへ騎士達とハンター達が続く。

だが全員では無い。

無謀とも言える戦い。

それに対する怖気を抑えられなかった者達。

敢えて危険に身を曝す愚を犯す者達として蔑む者達…

そんな者達を置き去りに、彼らは進む。

渓谷下へと至る道。

木陰や岩陰へと身を隠しつつ、ガルオーダへと近付く。

相手は巨種である獣竜。

体格からして人とは自力が違う。

マトモに戦いを挑めば、戦いにもなるまい。

現状、ヤツは横腹へ矢傷を負っている。

刺さった侭の矢は、奴の行動を阻害するであろう。

また満たされていない飢餓と体内晶石を使用した影響もある。

渓谷下へと落ちた者達を必死に漁っている状態であるが、その動きは鈍い。

そんな状態である為、ガルオーダが周囲に向ける警戒は疎かになっている様であった。

正に襲撃するには御誂え向きと言えよう。

ジリジリと気配を消し近寄る2人。

餌を貪る事に夢中な獣竜。

戦いが、今、始まる!

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