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狩り人48

瞬く間に現れた悪夢。

暴風と、それにて巻き上げられた瓦礫に襲われたのは人のみでは無い。

バリスタなどの討伐用装備にも多大な被害が。

矢を射出可能なバリスタは2台をのみとなっている。

その内の1台はダメージを受け、補修せねば数度ほど矢を放てば使い物にならなくなるであろう。

それは高台棚上に設置したバリスタでった。

幸いな事に、残りの1台は無事である。

そのバリスタは高台最奥へ苦労して設置した、あのバリスタであった。

辛うじて2台のバリスタが残ったと言う所か…

この2台が残ったのは、高台の棚上へと設置した為であろう。

その立地の良さにて、被害を免れたと考えられる。

ただ…

その2台のバリスタは、同方向の近似位置へと設置されていた。

故に同じ様な場所と角度からの射出となってしまう。

つまり獣竜ガルオーダを狙える範囲が限定されてしまっているのだった。

では、他の位置から狙えるバリスタはと言うと…

中には部品交換を行い修理すれば使用可能な物も存在する。

だが…

肝心な交換用部品自体が瓦礫飛来による損傷を。

それを免れた交換用部品も存在したが、バリスタを操る射手に被害が及んでおり、例えバリスタを修理しても再びバリスタを運用するのは難しい状態となっていた。

更にだ。

他にも準備していた仕掛けに被害が及んでいた。

また、既にガルオーダへと掛けられていた投網にも被害が。

ヤツの動きを阻害していた投網であるが、あの烈風によりズタズタになっている。

既にガルオーダの動きを阻害できる物では無い。

「クソッ!

 何だってぇんだっ!」

高台最奥の棚上へと設置されているバリスタの射手…ガリアンが悪態を吐く。

あの獣竜が、あの様な能力を使用するなど聞いてはいない。

完全な未確認情報である。

だが今迄の経緯は聞いている。

その情報には、この度の情報は含まれておらず、また、彼らが情報を秘匿している気配もなかった。

元ハンターという猟師のゼパイル氏などは、実に友好的かつ協力的でもあったのだ。

そんな彼が、この様に重要と思われる情報を隠すとも思われない。

では彼が知らなかった?

いや。

それこそ無いであろう。

彼が獣竜の発見者であり、この作戦を立案したという。

御領主様からの信頼も厚いと聞いた。

故に彼が知らない獣竜の情報があったとは考えられない。

つまり依頼者側も知らなかったのでは…

そう考えると…

「希少種か…亜種か…」

ぼそりと。

その考えに至り、ガリアンの顔は蒼白に。

その額にはビッチリと冷や汗が浮かぶ。

挙動には表さない様にしており、獣竜の挙動に視線が釘付けとなっている兵達には気付かれてはいない。

「くっ。

 遣るしらねぇか…」

呟き…ながら…獣竜を…狙うっ!

バシュッ!

既にセットされていた鉄矢が放たれる。

狙うは頭部。

目か口内へでも当たれば儲け物。

他の剛毛や甲殻にて覆われ、分厚い脂肪に守られた部分に比べたら、一か八かのギャンブルに近い標的を狙うのも良し!

そう考えて放った1矢であったが…

「なん…だっ…とぉっ!?」

ガリアンから驚愕の声が漏れる。

剛毛や甲殻、または角にて弾かれたならば、まだ納得できたであろう。

だが…

今放った矢は、獣竜の肉体にまで至っていなかったのである。

獣竜が纏う風が、その獣竜を中心に渦巻く勢いにて矢を巻き込む。

その様にして獣竜へと至る事も無く、矢が逸らされてしまったのだ。

つまり、現時点では獣竜をバリスタにて狙う事は不可能と言う事だ。

この驚愕の事実は、村長や騎士隊長、ゼパイルなどの指導者達も目撃していた。

村長も想定外の事態に頭を抱えたい気分である。

そしてゼパイルは…

「ダリル、行くぞっ!」

唐突に。

「えっ!?

 何処へ?」

一瞬、何を言われたのか理解できずに聞き返す。

「決まっておろう。

 晶武器による討伐だ」

ガルオーダを顎で抉るゼパイル。

「はぁっ!?

 師匠…

 マジで言ってます!?」

信じられ無い様にゼパイルを見るダリル。

そんな彼を一瞥してゼパイルが言い放つ。

「当たり前だっ!

 逆に、今遣らずに何時遣ると言うのだっ!

 ヤツは飢え、体調は最悪であろう。

 そして晶石解放。

 おそらくヤツは希少種。

 今迄は、その気配とて無かったが…

 追い詰められて、その能力が顕現したと思われる。

 晶石解放は多大な体力を消費する。

 現在も解放の余波により風を纏っているが…

 あの状態は常に晶石の力を放っている状態だ。

 故に体力を常に消費しているのに等しい。

 そんな弱っている現在が、最も討伐に適している状態…

 いや…

 ラストチャンスとも言えよう。

 今の状態であるヤツを逃したら…

 万全の状態となったヤツと対峙せねばならぬのだぞ。

 しかもだ。

 手負いで人肉の味を覚えたヤツとだ。

 俺は今しか討伐の機会は無いと思うのだがね」

その様に。

確かにゼパイルの言は正しいのであろう。

だが…

それでも、あの化け物を晶武器片手に挑み勝てるとは…

だが、だが、それでもだっ。

今遣らねば、被害は村へと及ぶであろう。

他の村や町の事ならば別である。

だが…産まれ育った故郷であり、親兄弟が住まう地である。

自分を導き育ててくれた師達が住まう地…

ダリルは…覚悟を…決めたっ!

「分かりました。

 師匠…

 行きましょう!」

そこには覚悟を決めた戦士が。

今、正に…死地へと繰り出すのであった。

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