狩り人50
油断しきっている獣竜ガルオーダ。
いや…
飢餓を満たす為、辺りに対する警戒が疎かになっていると言った方が良いのだろう。
故にゼパイルとダリルの接近を許していた。
そんなガルオーダではあるが、厄介な殊に風を身に纏っており、容易く攻撃が入りそうに無い。
先ずは、あの纏っている風を何とかせねばなるまい。
下手に時間を与えるのは拙い。
騎士やハンターの亡骸を貪り飢えを癒やしている。
まぁ…
生きながら捕食されている者も居るが…
ただ騎士達は硬いプレートメールを纏っており、それが邪魔して食される部分が少なくなっている。
喰われる事には変わり無いが、ガルオーダの飢えを満たすのを妨げている形だ。
それでも飢えは癒えかけ、時間が経てば体力も戻ろう。
体力切れにて風の守りを消し去るのは下策と言える。
では、どうするのか?
無策にて飛び込み接近し一撃をっ!
下手をしたら無駄死にである。
ガルオーダが移動した為、稼動している2台のバリスタからは距離が離れてしまった。
とは言え、人が振るう武器の一撃よりもバリスタより撃ち出された鉄矢の方が威力があるであろう。
そのバリスタの鉄矢がガルオーダが纏う風の守りにより逸らされ弾かれたのだ。
普通の武器では無理であろう。
そうなると手段は1つ。
そう、晶武器による攻撃である。
だが…
ゼパイルが放つ攻撃では駄目だ。
晶武器にて放たれる一撃は一般の武器ては変わらない。
普通は、その一撃が敵に達した後に武器に秘められた能力が発動するものなのである。
それが高熱であろうと冷気であろうとだ。
つまり、当てなくては効果を発しない。
現状は、その当てると言う状態が困難なのだ。
先ずは風の守りを何とかせねばなるまい。
だが、そうするにはガルオーダを攻撃するしか無く、ガルオーダを攻撃するには風の守りを消すしかない。
堂々巡り…缶詰めの中に缶切りと言った所か。
そこで打開策であるが…
ダリルが操る晶武器が活躍する事となる。
ダリルは晶武器より力を発して無機物の刃を作り出している。
炎の刃である。
晶武器より放出されたエネルギー体である刃ならば、通常武器とは違いガルオーダの肉体へと迫れるのでは無いか。
そう考えたようだ。
だが、ただ攻撃を当てれば良いものでは無い。
風の守りを取り除く一撃。
それが肝要なのである。
ゼパイルが観察し得た情報によると、風を導き操っている起点は角。
そう、ガルオーダの額の左右より前方へと拗くれる様に伸びる角。
その両角の間を抜ける様に風が移り、そしてガルオーダを包む様に舞っている。
その様な見立てである。
その見立てが確かであるならば、片方の角を折るだけで風の守りを打ち破る事が出来よう。
とは言っても、顔面への攻撃と言っても間違いでは無い。
悟られ無い筈も無く、非常に危険である。
しかも顔面を易々と攻撃できる機会など、そうある筈も無い。
現在は警戒が非常に薄く最も奇襲に適した機会と言える。
外せば警戒され、攻撃機会は減る。
いや、ラストチャンスやもしれぬ。
緊張がダリルを襲う。
そんな彼の肩を、ゼパイルが軽く叩く。
ビクッと。
振り返る彼に、ゼパイルが軽く頷く。
ダリルも頷き返し…覚悟を決めた。
静かに気配を消しつつ素早く動く。
ヤツへの距離が縮まる。
ヤツより風下をキープ。
視線をヤツから片時も外しはしない。
些細な挙動でさえ見逃してはならない。斜め後ろ…
左側の角が窺える。
ヤツからは死角。
風の守りギリギリの距離へと。
晶武器を構え、左角へと狙いを定める。
そこへ意識を集中!
晶武器制御へと力を一気に注ぎ込んだっ!
晶武器に身体中の力を奪われる感覚。
限界まで注ぎ込んだ力が晶武器の力を限界を超えて引き出したっ!
ドッバァッ!
槍型晶武器の穂先より焔の圧縮光…レーザーの様な光が放たれた。
それは左角を粉砕しただけでは無く、左側の額を抉り、右角の一部を砕き去っていた。
大殊勲と言えよう。
だが、代償は只では無かった。
それ程の力を放った晶武器は、放った圧力に耐えられずに崩壊!
その余波にてダリルは後方へと吹き飛ばされた!
力を注ぎ込み力が入らないダリルは堪らない。
抵抗も出来ずに吹き飛ばされた。
その際に意識を持って行かれる。
後方の灌木へと。
それがクッションとなったのは幸いである。
そんな彼を余所に、ゼパイル達による死闘が開始されていた。
ダリルが命懸けで切り開いた、又と無い機会と言って良いであろう。
この好機を逃してはならない!
他の晶武器使いも参戦。
攻撃より逃れ、彼らから離れるとバリスタより鉄矢が飛来。
それがガルオーダの傷付いた額へと突き立ったから堪らない。
【グギャヴオォォォ~】
悲痛な叫びがっ!
そんな死闘を行っている頃…
ハンターの1人がダリルの元へと。
己が力量では足手纏い。
そう考えダリルの安否を確認に。
状態を確認し、命に別状なしと。
っと言うか、擦り傷程度しか見受けられない。
(なんて運のより野郎だ)
呆れた様にダリルを見る。
すると、軽く唸ったダリルが薄目を開ける。
気が付いたみたいである。
「此処はぁ…」
ハッキリしない頭を軽く振り呟く。
「大丈夫か?」
ハンターが声を掛けるが…
「そうか…
俺は吹き飛ばされ…
ハッ!
獣竜。
ガルオーダは、どうなったぁっ!!」
意識がハッキリしたダリルが、慌てた様に。
「大丈夫だ。
被害が無い訳では無いが、ヤツにダメージを与えられているぞっ」
軽く応える彼の後ろでは、事態が変わり初めていた。




