狩り人104
アンソニアが案内した店は小ぢんまりとした店構えではあるが、落ち着いた雰囲気のシットリとした空気の漂う店である。
値段は少々張ると思われ、客層も選ぶ感じが。
どう見てもダリルやカリンにとっては敷居が高そうな店構えと言えよう。
店へと落ち着く以前に、店の前にて入店が憚れたダリルが戸惑い告げたものだ。
「お、おい。
流石に、俺達の身形では…」
そう、ダリルは鎧を纏い武装している。
しかも大量の荷を背負ってもいる。
少なくとも綺麗な身形とは言い難い。
それはカリンも同様だ。
だがしかし…
アンソニアは店員を呼び出し、玄関口とは違う予備の入り口から店内へと。
普通は、その様な対応を行う店では無い。
そう、普通では無いのだ。
流石は高貴な貴族の息子といった所か。
彼の名で特別に通されたと言う形である。
そんな待遇にてカリンが不安に感じたのだろう。
ダリルに小声で尋ねる。
「ね、ねぇダリル兄ィ」
「んっ?
何だ?」
「あの人ってさぁ…
どんな人なの?」
ダリルとの繋がりが今1つ分からない。
一般人が係わり合いになる人種だとは到底思えないのである。
そんなカリンの疑問にダリルも困った様に応える。
「俺にも良くは分からん」
「はぁっ?」
呆れた様に、マジマジとダリルを見る。
そんなカリンへ肩を竦めて続ける。
「獣竜討伐にアイツも参加していたのだが…
俺の戦いが気に入ったので、俺に同行したいとな。
なにやら貴族様らしいのだが…
正直、迷惑している所だ」
そう告げ、肩を竦める。
そんなダリルとアンソニアを唖然と口を開けて交互に見遣るカリンであった。
その様子を面白そうに見ていたアンソニアが告げる。
「取り敢えず、昼食にしようじゃないか。
私のお勧めはローゾーと言う汁に浸した麺料理だ。
これは中々に美味い代物だと私は思っていてね」
そう進めて来る。
「ほぅ。
汁に麺を浸すか…
それは面白そうだな」
どうやらダリルは興味を抱いた様である。
カリンはダリルに追随する形で同意を。
暫し待つと、3人の下へ料理が運ばれ提供される。
「ほぉぅ。
これがローゾーかね?」
此方の世界でのラーメンに近い品だと言えば宜しいか?
ただ麺は小麦粉で作られてはいない様であるが…
汁は薄緑掛かった白である。
麺の色も翡翠色と告げれば宜しいか。
具材に木の実や香草を混ぜて炒り合わせた挽肉と炒め野菜などが。
食すカトラリーとしてスプーンと先端が櫛状になった物が添えられている。
ダリルが始めて見る品だ。
それを手に取り、シゲシゲと観察を。
「ふむ。
棒状の先に横へ複数の棒を伸ばした形か…
鍵の形状を模倣して単純化したのか?
ううむ。
コレに麺を引っ掛け棒の部分を回せば容易く麺を掬えると言う事か…」
その様に。
それを聞きカリンが驚いた様に。
「あっ!
そっかぁ~
ダリル兄ィ、あったま良ぃ~」
などと。
そんな能天気なカリンの言葉を聞き、思わず噴出すアンソニアであった。
その後、ローゾーを堪能するダリルとカリン。
ダリル的には十分満足したのだが…
「う~ん…」
少し不満そうなカリン。
「どうした?」
そんなカリンを不思議に思い尋ねると…
「うん、美味しいんだけどさぁ。
最近食べていた料理に比べたらさぁ」
そんな事を。
そんな彼女の言葉に、ピクリと反応するアンソニア。
ダリルが困った様にカリンを見るが、彼女は気付かぬ様だ。
微妙に空気が変わる。
そんな中、アンソニアが切り出した。
「そう、彼と何処で知り合ったかもですが…
今迄、何処に居られたのですかな?」
ニッコリと微笑みながら追求してくるアンソニア。
ダリルは渋い顔で。
「何故、それを告げねばならぬ」
冷たく突き放す様に。
そんなダリルに微笑みながら。
「単なる好奇心ですよ。
なにせ、ロアンデトロスの革やボアングの革が見受けられる。
容易く狩れる獲物とは思えませぬし、大体、此処ら辺で遭遇する相手では無いでしょう。
この短期間で如何にして獲る事が出来たのか…
実に興味深いですな」
そう微笑み告げて来るのであった。
ダリルが背負っていた荷から、それらを見取っていたとみえる。
中々に食えない男だ。
「確かに、おまえが告げた品だが…
それが、どうしたのかね?」
そら惚けるが…
「私は貴族でしてね。
しかも未見の地にて発見した物によっては所有権を得る事も可能でしてねぇ」
何やらカマを掛けるか如く。
そんなアンソニアを睨め付ける様に見ながら。
「何が言いたい?」
そうダリルが告げる。
「いや、貴方の様な優秀な方が、此処まで時を掛けて此処へと到った。
それを考えると、何かを発見したと想像したまでの事。
病や怪我にて辿り着けぬのかもと考えはしましたが…
捜索を行うには、もう暫く待とうかどうか…
そう考えておりましたら、元気に現れましたしね。
そう考えると、何かに巻き込まれたか…発見したか。
その様に考えたしたいで」
その様に。
そんなアンソニアを呆れて見るダリル。
「中々にブッ飛んだ考えだな」
そんな呆れた様に告げられた言葉に続ける様にカリンが…
「それで分かっちゃうなんて凄いやぁ」
そう告げてしまう。
そう、告げてしまったのだ。
「ほぉぅ。
本当に、何かを見付けられたと?」
驚いた様に。
思わず、片手で顔を覆い天井を見上げるダリル。
「えっ!?
あれ?
どゆ事?」
混乱するカリンであった。




