ep.26
「わたくしは、精霊妃でありますが、元々は火の精霊です。」
「では、他にも……?」
「ええ、全属性に精霊妃が居ます。その取りまとめをするのが、精霊王様なのです。」
精霊王やら精霊妃やら、聞いたこともない概念がいっぱい出て来て頭が痛い。先程までとはうって変わって、理解しなければ前に進めそうにないことばかりなので、噛み砕いて理解するよう試みる。そんな私の様子を見て、くすくすと愉しそうな精霊妃様。楽しんでないで、そのふわっとしたナニカをきちんと説明してほしい。しかし、彼女は精霊であるから、難しいかもしれない。
精霊とは、人間の観念には当てはまらない彼らのルールに則って動いているのだ。だから人間は、ひいては魔術師は精霊のことを理解する努力をしなければならない。――これは魔術院学園で最初に学ぶことである。であるからして、精霊妃である彼女に説明を求めるのは愚の骨頂と言っても過言ではない。
「その精霊王様は、苦しんでおられます。だから、儀式を終えた愛し子には全ての箇所を回って欲しいのです。」
「全て、というと他の属性すべてでしょうか。」
「その通りです。わたくしのところが最初で良かったわ、順番がありますからね。」
「――姫様、そんねきの手順や事情はわしが把握しとります。精霊妃様、お話を続けとぉくれやす。」
「そういえば、表裏の騎士は護りの村出身でしたね。なら、貴方に任せましょう。――わたくし達精霊妃の願いは、精霊王様をお救いすることです。」
「心して、このファルミーナめが拝命いたします。」
任せましたよ、とふわふわと笑いそして精霊妃様は泉へと消え去って行った。それと共に、光の珠はどんどん光を失っていき、淡く消えていった。
ラティーが明かりを灯してくれて、その時にこの空間は暗かったことに気付く。そして、まじまじと彼を見ると不思議そうにこちらを見返してくるが、そこは重要ではない。私の周りは美形ばかりだなと思わずにはいられないほどの、ラティーは端正の整った精悍な男性だった。茶色い髪を前髪もすべてひとつに束ね、その束ねた先はちょっとした短い尻尾のような方々に散っていた。それ故に綺麗な薄墨色の瞳が輝いて見えている。ルミナスさまといい、ラティーといい、綺麗な人々をこき使っていたのかと思うと自分に恐ろしささえ感じる。
「姫様、騎士はん。ここでお話しさせていただいてもよろしいでっしゃろか。生憎と村では、その……姫様を受け入れる体制整うとりまへんさかい。」
「構わないです。お願いできますか?」
「ああ、わしには敬語は必要あらしまへん。わしはあくまで姫様の騎士どすさかい。」
「その、騎士とはなんなのでしょうか……?」
その質問を投げた時。ルミナスさまからは信じられないモノを見る様な視線をもらい、ラティーはあちゃーそこからか、と頭を抱えていた。こちらが、何故こんなにもすんなり話が進んだのかが知りたい位であり、心外である。……ちょっと、トランス状態が過ぎた気もするけども。記憶があるから余計に、意味が分からず困惑しているのであって。
そんな私の状態を見て、ラティーはどっから話したらええかわからへんけど、と前置きしながら説明し始めた。




