ep.25
泉に現れた、我が目を疑うほどの壮麗な美しい人である彼女の前に跪き頭を垂れるファルミーナと付き人。まばゆいばかりの7色の光は、先ほどよりは落ち着いたとはいえ、まだ眩しく光り光の珠が踊っている幻想的な空間となっていた。
彼女は、うふふと愉しげに笑いながら大きな鈴をシャランと鳴らす。
「これで邪魔モノは来ません。大丈夫ですよ、楽にしなさいな。」
「はい、御前失礼いたします。精霊妃様。」
「嗚呼、なんということ。もっと顔を見せてちょうだい、愛し子。
――……あなたは、あの子の血を継いでいるのですね。よかったです、血が途絶えたかと思いました。」
光が落ち着いてきてその姿をちゃんと見えるようになった彼女――精霊妃は、深い碧色の長いドレスを纏い銀色の美しいティアラを身に着けていた。そして、にっこりと微笑みファルミーナを愛おしげに見つめている視線にファルミーナは少したじろぐも、だんだんと意識がはっきりとしてきていた。
(勢いでここまで来てしまったけれど、これはどうしたらいいんだろう。ルミナス様を巻き込んで、ラティーという男性まで……。)
背を冷たい何かがつたう感覚がした。記憶が無くなるなんてことは無く、きちんと覚えているからこそ自分が起こした様々な行為に顔が引き攣る。先程、自分は精霊妃様と名前を呼んだ時に、ふっと何かが戻ってくる感覚がして、自分の行動を思い返しては顔を青くしていた。天下のロッソィーノ侯爵家令嬢を振り回しただけでなく、知らない人まで巻き込んでしまった。普段では考えられないほどの恐ろしい行動力だと頭が痛くなってきた。
「愛し子、心配しないで。わたくしが、貴女を呼んだだけなのよ。貴女の血が覚えているだけなの、だから心配しないで。」
「血……、血縁ということですか。」
「そうよ。きっと貴女は話を聞いていないでしょうね。嘆かわしい事を人の子がしているのを観ていてとても不愉快だったのだけど、貴女は血をつないでいます。とても喜ばしいですね。
――でもね、愛し子。その子の父も連れて来て良かったのですよ?」
ばっ、とルミナス様が勢いよく私の方へ向いた気がした。たぶん気のせいではないが、この方――精霊妃様は全て御存じということなのだろうか。私があの人に、その、キスをして身ごもったことも御存じで……。顔から火が出そうなほど頬が熱くなる気がして、両手を頬に添えた。
照れている私を微笑ましげに見ている精霊妃様、痛いほどの視線を送ってくるルミナスさま、父という言葉に疑問符を浮かべているラティー。この空間はいわゆるカオスというのではないだろうか。
「独りでよくぞ、儀式までたどり着きました。身重にも関わらずわたくしの声に応え、騎士を2人も連れて、立派です。」
「あ、ありがとうございます。」
「それと、愛し子。その子は無事に産まれるから心配しないでくださいね。夫の祝福があるもの。その子の父にも、祝福があるから大丈夫ですね。」
……爆弾発言ばかり、辞めて欲しい。ヴェルデットロ様って祝福あるんだ、すごいな。そして私の心を読んだように、語りかける精霊妃様。
「愛し子にも、騎士2人にも祝福していますよ?愛し子だもの、当たり前です。
――さあ、では本題を話しましょうか。」




