ep.23
ファルミーナは、急いでいた。急いでいたからこそ、ルミナスとともに着実に前へ前へと進んでいた。
宮殿のような社の中央には、階段が続いている。そして、階段へ一歩踏み込めば空気がガラッと変わった。まるで侵入者を拒むような、重苦しい空気であり息をするのも難しいような錯覚さえするほどである。しかし、ファルミーナは胸元から鈴を取りだすと、シャランとひと振りするだけで、その空気は一変する。
「ルミナスさま、邪魔モノは消していただけますか?」
「構わないわよ、わたくしの可愛い可愛いミーナ。貴女に傷ひとつつけさせやしないわ。」
「頼りにしています、わたしのルミナスさま。」
ルミナスは、一瞬驚いたような顔をしたが、嬉しそうに破顔した。ミーナに、わたしの、と言ってもらえる喜びと言ったら他なかった。パチパチと、むしろ轟々と燃え盛る炎が出る魔力共振が起きるほどの戦意を秘め、努めて冷静に斜め後ろに手を払う。ギャッという悲鳴と共に、黒い何かが燃えて消え去る。なるほど、と頷いたルミナスは縦横無尽に現れる影を丁寧に燃やしつくしていく。
ファルミーナはその様子ににっこりと笑み、最下層を目指して進んでいく。シャラン、シャランと鈴を鳴らしながら、進んでいく。それはそれは、長い道程であった。
「ルミナスさま、もう大丈夫です。ありがとうございました。」
「あら、もう終わり?手応えのない連中ね。」
「本番はここから、ですけどね。」
「姫様方、お早いお着きどすなぁ。追いかけるのが大変どしたで。」
あら、やっぱり貴方が援護していたのね、と驚く訳でもないルミナスと、訳知り顔で頷くファルミーナ。そして、少し息を荒らげているラティー。全員が最下層に揃い、これで役者は揃ったと、誰ともなく呟く。
最下層は、中心に円を描いた泉があり、それを囲むように六角形の形に配置された6本の台座があった。その台座にはそれぞれのモチーフのような図が彫られており、美しい場所であった。
「姫様はきっとお気づきや思うが、騎士殿には説明必要かと存じる。説明差し上げても?」
「……いえ、あの方がお呼びです。ルミナスさまには、あとで説明しますがよろしいですか?」
「構いやしないわ。役目を教えてちょうだい。」
「では、ルミナスさまはこの台座に魔力を、ラティーが合図したときに灯してください。ラティーは、分かっていますね。」
「この台座ね、なるほど。承知したわ。」
「心得とります。任せとぉくれやす。」
そして、ファルミーナは謳い始める。祈るような、祝うような、艶々しい声で、奉げる詩を謳い始めた。




