ep.22
そこには、異様な空気が流れていた。壮麗であり少し崩れかけている宮殿らしき場所を中心に家々が立ち並ぶ、こんな状況でなければ見とれてしまうような美しい大きな街とも呼べる場所であった。しかし、その街の入り口に立つファルミーナとルミナス、ラティーの周りには、ラティーと似たような色合いの端正な男女が、3人を囲むようにじりじりとにじり寄っていた。しかし、ファルミーナはうっそりと笑みを浮かべながらラティーに命じる。
「わたくしの勇敢な騎士よ、授けましょう、どうぞこの力を行使してください。」
「ありがたき幸せ、このラティー、存分にあんた様のこの力を振るいまひょ。」
その言葉を聞いて、驚く顔をする者が数名。怪訝な顔をしていた者たちが、ラティーが魔法を待機状態にして戦闘態勢に入ったのを見て、いきり立つ。
姫様お進みください、というラティーの言葉に何の憂いもなく頷いたファルミーナは、真っ直ぐに宮殿の様な社へと進んだ。この崩れかけた宮殿が、社であり、あの方が居られるのは分かっていた。そんなファルミーナの行く手を遮ろうと動き出す村人を吹き飛ばしたのは、ラティーの古代魔法。
「ラティー!あんたは、あんたはっ、村を棄てるんか!」
「何を言うてる、姫様に認められた騎士やで。何を思えばその言葉をえずけるか、この誉が分からへんか!」
「我々は……っ!」
「分からへんなら、武で話し合うのみ。――侮りなや、わしは今、姫様に護られてるんやさかいな。本気で来い。」
「ラティー、貴様……!」
ラティーは笑う、嗤う。おとぎ話のように聞いていた伝承に、自分も混ざれたのだ。しかも姫様の実力は本物、漲る魔力によし、と誰にともなく言う。別に、倒す必要は無い。時間が稼げれば十分。ラティーは悠々と社の前を陣取ると、不敵に笑い、こちらに来いとジェスチャーして挑発した。
***
(嗚呼、なんで気付かなかったのかしら?姫様はこんなにも近くに居たのに、わたくしとしたことが……。)
そして、はたと気付く。今、自分はなんと思ったのか。ファルミーナを、ミーナを、姫……さま?なぜそんな思考に陥ったのだろうか、と不思議に思い首を傾げた。確かにミーナを可愛がっているが、姫様と敬称をつけるほど彼女を崇めたことはない。あくまで、友である。
ちらっと前を歩くファルミーナを見遣る。ミーナは、何かを探すように時々足を止めては周りを見渡し、しゃがんで何かを拾っていた。やがて、全て集めきったのだろうか、ミーナは中心へと歩を進めていた。
「ルミナスさま、整いました。わたしが持ちうるすべてを授けて、お護りします。あとは、お願いいたしますね。」
「……ええ、任せてちょうだい。」
なんとなく、戦闘になるのだろうという気はしている。しかし、ロッソィーノの珠玉の姫と言われているのは伊達ではないのだ。守られるだけの姫じゃないこと、証明して見せましょう。
ルミナスもまた、不敵な笑みを浮かべ魔術を展開したのだった。




