ep.13
嵐という名のヴェルデットロ様が来訪してから数日。どうやら本当に第二王子であるイディオータ殿下から拝命した任務であるらしいのだが、流石に公爵次期当主であるヴェルデットロ様を外に放り出すわけにもいかず。ロッソィーノ侯爵家の屋敷で歓待していた。といってもお互いがいつものことらしく、体裁を整えた最低限のものであるというのはシエルの言である。
「ただでさえ王都から場所を移られたのに、このような大貴族様がいる環境はファルミーナ様の胎教が心配ですわね。」
「あら、ファルミーナ様はヴェルデットロ公爵ご子息様と同僚でいらっしゃったのでしょう?他の貴族方よりは気兼ねしないのでは?」
ええ、とフィオナの問いに応えながらぼんやりしていた。なんだか、体調が悪い気がする。きちんと睡眠を取ったのにすごく眠いのだ。どちらかというと、ショートスリーパーな方だと思っていたんだけどな、と回らない頭で考えていた。
あらあら、と何かに気付いたシエルとフィオナに促されるまま、ベッドへと逆戻りしたのであった。
***
「……ルミナス嬢、一人足りないと思うが?」
「あら、『平民風情が席に着くなんて』と言っていたのはどこの誰かしら。」
「平民だろうと一人消えれば気になる。人として当たり前だろう。」
「あら、貴方に人の心があったのね。特に女性に対して。」
モーニングの時間。席に着いた時に覚えた違和感でルミナス嬢と一度やり合った後、不機嫌さを隠せなかった。図星といえば図星なのだが、面白くない。ただ、違和感を覚えたこと自体が不思議ではあるので、そういった意味では首をかしげていた。そして総合すると思うのは、どうしてこうなった、である。
ベルナルト・マジカ・ヴェルデットロは、イディオータ第二王子からカーラことルミナス嬢の護衛役の命を受けてロッソィーノ領の屋敷へと訪れていた。正直、彼女の周りには護衛は沢山いるのだが、彼女の様子が知りたいというイディオータ第二王子の命令により此処にいるという訳である。しかしながら、こういった命令を拝命するのは初めてではなく何度もあるため、そろそろ何とかならないかと思いつつ。今回はどう報告しようかと頭を悩ませていた。
「ベル、今日のことは伝えて構わないわよ。」
「……承知した。」
それにしても、と思う。なぜルミナス嬢はあの平民を気にするのであろうか、そしてなぜ自分まで気になってきてしまっているのだろうか。いや、自分が気になっている?有り得ないだろう、だってあの女はただの平民だ。段々迷宮入りしていくような錯覚に陥った。
ただ、少なくとも。ルミナス嬢の機嫌を損ねないようにしなければならないのは、確かなのだ。そうでないと、イディオータ第二王子に申し訳が立たない。
「いつも通り、後で日記でもくれ。」
「構わないわよ、いつも通りの日記ね。」
それまでは、鍛錬でもしていようか。雑念を振り払うように、頭を振った。




