再会
「なんか緊張してる」
破耶の病室の前にいる。電話がきたときは嬉しかった。久しぶりに声を聞けたから。
「うし!」
扉を開けた。
「よう、元気か?」
「ああ、心配かけたな」
しばらく無言になる。
「悪かった。どうも人と会うのが億劫になってな」
「話は聞いた。ごめんな、助けてやれなくて」
「自分を責めないでくれ! わたしは、お前を責めたりなんてしない」
「けど」
「わたしなら大丈夫だ。犯されかけたが無事だった、怪我だって!」
破耶が服を脱いでみせた。
「まだ縫って三日だから包帯も着けているが、一ヶ月後には糸も包帯も取れて、傷口も綺麗になっているハズだ!」
「解ったから、服を着ろっ」
「馬鹿! なぜ黒田が見た裸を、夏郷は見てくれないのだ!」
「そういう問題じゃ」
「わたしは、夏郷に抱かれたい」
破耶が真剣に言った。
「俺は、そういうつもりで破耶と付き合ってる訳じゃない! 純粋に好きだから、大切だから付き合ってるし、傍に居たいんだ」
俺も真剣に答えた。
「嬉しいのだ。けど、やっぱりお願いだ。一ヶ月後、怪我が癒えたら、わたしを抱いてくれ」
「わっ、わかった!?」
「ありがとう、夏郷」
破耶が手を握る。
「今日は何の日か、分かるか?」
「何かあったっけ? ……あっ!? ……誕生日!」
「そうだ、今日は、紅破耶の十七の誕生日だぞ」
「……すまない、色々在ったから、すっかり忘れてた。プレゼント、何が欲しい?」
「そうだな……じゃあ、キスがいい」
俺は困惑した。
「こんなこと言うのは誤解を生むかもしれないけど、キスなら何時でも出来るだろ!?」
「夏郷は女心を知らないな。特別な日にするキスは、いつものキスとは違うのだ!」
正直、よく分からなかった。
「良いのか。キスで?」
「馬鹿、もう何も言わせるな」
破耶が瞳を閉じる。
「するぞ」
俺は破耶とキスをした。
※ ※ ※
「退院おめでとう!」
千景先輩が声をあげる。
「本当に無事で良かったです」
羽舞さんが声をかける。
「全くだ」
新田 副会長が頷く。
「そういえば、副書記の宇留田、広報の矢島さんと副広報の三田に、一年生の加藤 愛生さんは?」
「宇留田は遠慮して、奏は広報として破耶の退院を報せるって忙しく、玲衣は副広報だから奏の付き添いで、愛生ちゃんは、入って間もないから先輩たちで……と、こんな感じかな」
千景先輩が教えてくれた。
「無理もないです。高校の再開は一週間後ですし、
急に生徒会だけで破耶さんの退院祝いをしようって集まったんですし」
羽舞さんがフォローした。
「新祝祭から一ヶ月経ったけど、まるで昨日のようだな」
新田副会長が言う。
「わたしは辛気くさいのは苦手だぞ」
※ ※ ※
「身体、平気か?」
帰り道に俺は破耶に訊いた。
「案ずるな、わたしは健康そのものだ!」
「ハハハ」
「それはそうと夏郷、病院での約束、覚えているか……?」
「う……ん」
「実はな、明日は家に誰も居ないのだ。だから、その……どうなのだ?」
「うーん。やっぱり、今度にしないか?」
「嫌だったか?」
破耶が哀しい顔をした。
「嫌じゃないけど、嬉しいけど。今じゃなくてもいいかなって思えてさ」
「……そうだな、わたしは何処か焦っていたのかもしれない」
「その代わりさ」
「なんだ?」
「お互いさ、キスしたくなったら遠慮無しっていうのはどうだ?」
「うん!」




