近くて遠い
「目、覚めたか」
「……俺……」
「お前、倒れていたんだ」
「……破耶……そうだ!」
起き上がろうとするが身体が動かない。
「無理するな。三日間も寝ていたら、動けなくても当然だな」
「三日!?」
「紅の状況に堪えられなくて、気を失ったのだろうな。そうだ、腹は減ってるか?」
「保険医、破耶は!」
「保険医の言うことを聞けないのか。紅は、既に意識を取り戻している」
「どこに居るんです!」
破耶の顔が見たい。
「病院だが、今は面会謝絶のハズだ」
「?」
「お前も見たんだろ。紅の、アノ状況を」
思い出すだけで虫酸が走る。
「……あの男は……」
「黒田 尽。我が校が警戒していた。お前も、あの日、捜していただろ」
「黒田が、あの時、破耶に!!」
「気持ちは分かる。落ち着いて聞け……紅は検査の結果、異常無し。高校生なら言わなくても理解できるだろ」
「黒田は破耶と……何もなかった」
「怪我も浅くてな。傷痕も残らないそうだ。自分で刺したから、自ずと加減していたんだろう」
「あの、どうして俺は医務室に?」
「生徒全員、教師、その他関係者に警察が聴取をして殆どの者が帰れたのだが、お前は気を失っているだけだったから、すぐに覚めるかと思って医務室で寝かせてたんだが……」
「……?……保険医は?」
「高校は臨時休校中だが、お前だけにしとくわけにはいかないから、ずっと傍に居たぞ」
「……何かしました?」
俺は押し倒された。
「シてほしいか? 私はこう見えて、まだ二十四歳だからな。欲求はあるぞ?」
よく見ると美人だ。
「相手は、決めてるんで」
保険医が椅子に座る。
「冗談だ。今年十七になる男子に手は出さんさ」
「黒田は破耶に手を出そうとした」
「同い年としては弁解の余地はないな」
「保険医が気悩むことはないです」
「すまん、なんかな」
保険医が、窓を眺めていた。
※ ※ ※
「黒田はどうなるんだ?」
理事長が校長に訊く。
「彼はアッサリと理事長を殺害しようと思っていたと供述し、紅 破耶に対する強姦未遂についても認めています。ただ、彼は既に理事長殺害未遂の前科がありますから、刑期が以前よりも長くなるのは避けられないかと」
「残念だ」
理事長は、一筋の涙を流した。
※ ※ ※
「お加減はどうですか?」
看護師さんが身体を拭いてくれている。
「傷が塞がって、だいぶ気分も楽になった」
「そうですか。それはそうと面会謝絶はどうしますか? 希望でしたら継続出来ますよ」
「誰か、謝絶中に来たか?」
「担任の先生とか、校長先生、理事長さんとか。友達も来てましたけど」
「そうか」
「もしかして彼氏?」
「へっ!?」
思わず声が裏返ってしまう。
「うむ。顔が見たい。初の面会は夏郷が良い」
「ふふ、解りました。その彼に電話して、面会出来るようにしとかないとね」
「お願いします」
「じゃあ待ってて! 車イスを持ってくるね」
看護師さんが病室を出た。
「とにかく会って話したい。会って気持ちを知りたい。夏郷の素直な気持ちを」




