枢軸型録通信販売の本領
別の世界線となります。
カタログは同じものです。
枢軸型録通信販売の本領
1945年4月7日。戦艦大和が沖縄に向け海上特攻を敢行し沈没した日、新たな内閣が発足し、深夜に閣議が開かれていた。
そこへ突如として枢軸型録通信販売なる分厚い本が出現した。
ドスンッ!という音と共に現れた分厚い本は、落ちた拍子に開いており、一見ただの本のようであった。
しかし中に書かれていた内容は、追い詰められている日本にとって、縋りつきたくなるような内容だった。
既に日本はB-29爆撃機の空襲にさらされ、沖縄には米軍が上陸し、沖縄の米艦隊に向けた末期的な特攻作戦が繰り返し行われていた。
もはや巻き返す可能性すら見出せない状況で、この型録が現れたのである。
この型録には、別の世界線の枢軸国で開戦から終戦までに、開発・生産・輸入できた兵器や戦略物資などが、現金を対価に購入でき即座に届けられると書かれていた。
謎は多かったが藁をも掴む思いで型録が試され、あっさりと九○式鉄帽が現れたのであった。
「…ッ!」静かな室内に、息を呑む音だけが聞こえた。
何もないところから現れた九○式鉄帽を見て、一転して一同騒然となり、同時に絶望的な戦局を覆せるかもしれない救いの手に、一縷の望みをかけるのだった。
「これで必要な物はほぼ全て揃うということですな」
「ええ、枢軸の兵器、弾薬、燃料、資源、工作機械など欲しいものばかりだ」
「しかし、8月15日までなのだな…。…あと4ヶ月程しかこの型録は使えない」
8月15日という日付に、何となく察するものはあったが、今考えるべきはこの型録をいかに活用して、現状を打破するかであった。
「銀河と桜花、そして零戦を1千機ずつ購入すれば、沖縄の米機動部隊を撃滅できるのでは?」
「やはり特攻ですか…」
「しかたあるまい、それが今取りえる米機動部隊を確実に攻撃できる方法だ」
「正確に場所を指定とあります。ちょっと試してもよろしいでしょうか?」
「うむ。思いついたことは、あらゆることを試していこう」
急ぎ現金が集められ、型録を試すことになった。
「紙幣はいくらでも刷ればいい、いっそ裏白片面の簡易な高額紙幣を作ればよい」
「そうですね。千、万、いやいっそ一億円札でよいのではないですか?お釣りが出ないということは、紙幣の金額がいくら超過していても購入できるということでしょうし」
「確かに。その方が手間が省けるな」
程なくして、九○式鉄帽が型録を試していた者の頭に被さった。
「成功ですっ!私個人を指定して、頭の上1センチに指定できました!つまり、米空母の上に巨大艦艇を落とすことが可能です!」
それは即座に検証され、事実艦艇に直接購入した物を届けたり、落とすことが出来ると分かったのである。航行中の艦艇に落とす場合は、真上に静止した状態で出現するため、高さと航行速度によって落下位置がずれた。
しかし、米空母の情報は偽情報なども入り乱れて把握し切れておらず、巨艦を落とすという質量攻撃は難しいと考えられた。
しかしながら、確実に判明している艦名もあり、それに対しては実行可能とも考えられた。
「いっそ、弾薬輸送船を弾薬で満たした状態で、米空母の上空に出現させられないものか?」
「なるほど?確実に爆発するかはともかくとして、弾薬輸送船と共に弾薬を詳細に場所を指定して購入するのですね?試してみましょう」
九○式鉄帽が2つ重ねで試した者の頭に出現し、2つの鉄帽の間に軍手が挟まれていて、軍手の中には軍用たばこの誉が入っていた。
「成功です。おそらくですが、物資を搭載した状態で兵器を購入できるのでしょう」
この事からさらなる検証が行われ、丁型海防艦を購入する際に、弾薬・燃料・蒸留水を詳細な場所を指定して購入し、それらが適切に配置されているかが試された。
実験は成功し、弾薬輸送船に弾薬を搭載した状態での購入が可能と判明した。
「弾薬輸送船を確実に爆発させるには、起爆し易い爆発物を載せればよい」
「燃料槽にニトログリセリンを満載にしてはどうか?」
「ならばいっそのこと、落とすのは油を運ぶ油槽船にして、貨物油槽と燃料槽をニトログリセリンで満たしてはどうか?」
「それはっ!?可能なのでしょうね…。とんでもない威力になることが予想できます」
「うむ。ならば実際に、ニトログリセリン満載の油槽船を試してみよう」
そしてそれは日本から数百キロ離れた海上で直ちに試され、研究中の原子爆弾もかくやという破滅的威力を発揮し、大本営はこれを戦時標準船TL型油槽船爆弾、略してTL爆弾として採用したのだった。
TL爆弾の危害範囲は広く、米機動部隊の凡その座標に落とせば、その米機動部隊は壊滅すると考えられた。大本営は、TL爆弾の使用に一切の躊躇はなかった。
「とんでもない威力です。都市に落とせば一発で壊滅です」
「地上目標へ落とす際は、ニトログリセリンの量を減らす必要があるだろうな」
「連合国軍の兵士のみだと分かれば、遠慮する必要はないのですが、そう都合のいい場所は少ないでしょうね」
大本営はTL爆弾の使用が決定したことで、特攻作戦を中止したが、米機動部隊への偵察は、特攻作戦時と同様に入念に行った。
大本営はマリアナ諸島の飛行場への使用も検討しつつ、米機動部隊の位置を確認後、早速TL爆弾を使用した。
「TL爆弾炸裂確認の報が入りました。現在、米機動部隊の状況を確認中です」
TL爆弾の投下後、爆発確認の報はすぐに届き、大本営の面々は祈る思いで続報を待った。
「米機動部隊の壊滅を確認いたしました!」
「「うおおおーっ!」」一同喝采を挙げたのであった。
結果として、米機動部隊は熱線と衝撃波そして高波により壊滅し、大本営はその戦果を受けて、さらなるTL爆弾の使用を進めていった。
マリアナ諸島へのTL爆弾使用にあたり、3月にB-29によって行われた東京大焼殺への報復が行われた。
個人を指定して送り届けられるため、ドラム缶にニトログリセリンを満載にしたものを、東京大焼殺を指揮した虐殺指揮官個人を指定して、数十cm上空に送り届けたのである。
マリアナ諸島の米軍占領下の飛行場へは、ニトログリセリン満載のTL爆弾では威力が高すぎるため、ニトログリセリンの量を抑えて使用された。
使用はされたが、虐殺指揮官への報復と同様に確認のしようがなく、B-29の襲来の有無で判断することになった。
沖縄周辺の連合国軍艦隊へもTL爆弾を使用し、陸地に近い場所からは投下地点をずらし、沖縄諸島への影響を抑えた。
大本営は連合国軍艦隊の撃滅の報を聞いて高揚し、さらにTL爆弾を使用していった。
それは、沖縄の米上陸部隊へのTL爆弾使用であった。
大本営は沖縄守備隊と連携し、TL爆弾の投下地点を選定していった。
沖縄各地の米上陸部隊の中心に落とされたTL爆弾は、ニトログリセリンの量を抑えていたが、米上陸部隊に大打撃を与えていき、米軍の沖縄攻略を頓挫させたのであった。
また、硫黄島を始めとする米軍に占領されている島嶼や、ハワイ諸島の米軍基地、オーストラリアのフリーマントルなどの米潜水艦の拠点にも、ニトログリセリンの量を減らしてTL爆弾が使用されていった。
そしてこれで、B-29の爆撃が中断したのであった。
さらに中国戦線やフィリピン、ビルマ方面にも、威力を抑えたTL爆弾が現地と連携し使用されていったのである。
さしあたっての脅威は米潜水艦だけとなり、型録で購入した対潜哨戒機東海や航空機搭載の磁気探知機を大量に配備していき、米潜水艦を押さえ込んでいった。
不足していた戦略物資なども行き渡っていき、海軍は残存艦艇と型録で購入した艦艇で機動部隊を再建していった。
日本はここにきて、型録の力で急速に立て直していったのであった。
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