戦艦の固定砲台化
別の世界線となります。カタログは同じです。
戦艦の固定砲台化
1944年7月22日。この日、サイパン島の陥落を受け総辞職した前内閣に代わり、新たな内閣が発足し就任式が行われた。
その後閣議が開かれていたが、そこに突如として分厚い本が現れた。
ドスンという音と共に現れた本はその拍子に開いており、一見ただの本である事は確かであった。
近くにいた者が表紙を確認すると、枢軸型録通信販売と題されていた。
突如現れた分厚い本に驚きつつも頁を捲ると、この本が型録通信販売の本であり、別の世界線の枢軸国で開戦から終戦までに開発・生産・輸入できた兵器や戦略物資などを、1945年8月15日まで購入でき、指定した場所に即座に届けると書かれていたのである。
俄かには信じられない話ではあるが、突然現れた本に書かれている内容であり、何者の意図なのか、別の世界線が何であるかは分からなかったが、窮地に立たされている日本にとって救いの手となる可能性があるとして、半信半疑ではあるが試されることになった。
試すのは簡単であったため、実際に型録で購入してみることになった。
そして忽然と現れる九○式鉄帽。
一同騒然となり、この型録が本物であると分かり議論が重ねられていった。
「南方から苦労して輸送しなくても、この型録で資源が購入できますな」
「兵器に関しても九○式鉄帽をみるに、即座に手に入るのは間違いないのだろう」
「問題は現金だが、紙幣をどんどん刷ればいい」
「大量の現金を積み上げるのも面倒ゆえ、千円札、一万円札、いやそれ以上の高額紙幣を作るべきだな」
「ならばいっそ、金融恐慌の時の裏白札のような高額紙幣を作るといい」
「届け先を指定できるのであれば、外地や前線にも直接送れるのでは?すぐに試してみるべきだ」
「うむ。それが可能なら、次に戦場になる可能性のあるパラオやフィリピンへ、必要十分な物資が送れることになるな」
兵器や戦略物資などが外地などへも送り届けられるのか、間を置かず試されることが決定した。
「海軍の立て直しも可能です。翔鶴型航空母艦や大和型戦艦などを多数購入することで、訓練に時間は掛かりますが、米海軍に対抗できる艦隊が再建できます」
「ならば、不要になる旧式戦艦を固定砲台にしては?」
「うむ。いっそ次の戦場になりそうな、パラオ辺りに座礁させるのはどうか?」
「現地に持って行く間に、米潜水艦の攻撃を受ける可能性が高いのでは?」
「対潜哨戒を強化して運べば」
「費用対効果が薄いのでは?」
「仮に、外地の場所を指定して購入が可能なら、運び込まず型録で購入して直接現地に設置しては?燃料や水、そして弾薬も、戦艦を設置後に詳細に場所を指定すれば補充できるのでは?」
型録での購入に際して、場所を指定することで外地へも届けることができるのならば、艦を稼動させるのに必要な燃料や蒸留水そして弾薬も、正確な場所を指定して購入できるのではないかと考えられたのだった。
そして、蒸気タービン搭載の丁型海防艦を外地で購入することでそれらは試された。
結果は成功で、外地に海防艦が現れその海防艦に、重油、蒸留水、弾薬を詳細に場所と量を指定することで、それぞれ適切に目的の場所に補充できたのだった。
この実験を試す間にも型録は活用され、工作機械や資源を始めとする各種戦略物資や、研究解析目的の高性能兵器が購入されていった。
「実験の成功により、外地への型録による兵器や物資の補給が可能なことと、戦艦の固定砲台化が実現可能と分かりました」
「では、予定地を掘り下げつつ乗員を送り込み、戦艦を購入設置するのだな?」
「お待ちください。予定地を掘り下げる必要はないかもしれません。詳細に場所を指定できるのなら、その場所の地下何メートル、または海面下何メートルといった具合に指定できるのではありませんか?」
さっそく試された結果、海上では海水を押し退けるように、地上でも地面を押し退けて出現したのであった。
この結果から、戦艦の固定砲台設置場所は、海水も利用可能な比較的浅瀬の海岸部に決定し、設置場所の選定が進んでいくのだった。
そして設置する戦艦も当初は扶桑型戦艦などを考えていたが、いっそ大和型戦艦を設置すべきとなり、型録で大和型戦艦を購入し固定砲台として設置することが決定した。
さらに、型録を用いることで戦局が挽回し、固定砲台とした大和型戦艦が不要になった場合も考慮し、爆破処分などではなく自力航行または曳航などで設置場所から移動できる方法が検討された。
日本軍は大和型戦艦の固定砲台化で要地の防衛力を高めつつ、B-29や米潜水艦対策を進めていいくことになった。
B-29に対しては、型録で購入したMe262の調査解析を行い採用するとし、またそのエンジンを参考にネ20エンジンの改良を進めていった。
現状B-29への有力な対抗手段である三式戦闘機飛燕は、型録で購入できるDB605エンジンに換装し、性能向上を行うこととした。飛燕を型録で購入し、DB605に換装し、余剰となったDB601エンジンは、高速魚雷艇開発に活用されることになった。
米潜水艦に対しては、対潜哨戒機東海と磁気探知機を型録で大量に購入し、対潜哨戒を強化し対応していった。
陸軍はまるゆ潜水艦こと三式潜航輸送艇を大量に購入し、主に型録で購入できない物資などの輸送任務に就かせた。
海軍は伊200型潜水艦を多数購入し、不具合を調整しつつ機動部隊の再建と共に戦力化を急いだ。
機動部隊用の戦闘機は、型録で購入できる艦上戦闘機烈風の完成度が低いため、当面は局地戦闘機紫電改を艦載機に改修した物を採用することになった。
型録で艦載機型紫電改の試作機である紫電改二を購入して、問題なければ大量に購入し、そして通信機などをドイツ製のものに改修していくことになった。
川西にも艦上戦闘機型の紫電改の生産を命じ、性能の向上を行わせることになった。
空母は翔鶴型空母を多数型録で購入し、欠陥が発覚した大鳳型装甲空母は改修が試みられることになった。
装甲空母は、ジェットエンジン搭載の艦載機が運用できると考えられており、高速で着艦する重いジェット艦載機を運用できるようにも、大鳳型装甲空母は改修されていくことになった。
海軍はジェットエンジン搭載の艦載機としては、型録で購入したJumo004Bエンジンで局地戦闘機震電をジェット機化し、さらに艦載機化することを考えていた。
しかし開発の現場からは、Jumo004Bでも初期推力が足りないため艦載機化は困難であるとの声が上がっており、そのため翼面荷重はできるだけ低くなるようにジェット機化と共に設計されなおしていった。海軍としては、可能ならば型録で震電とJumo004Bを購入し、最小限の改修で艦載機として戦力化したかった。
1945年8月16日以降はネ20の改良版であるネ20改か、または国産化したJumo004Bでジェット機を生産することを考えていた。
とはいえ事前に必要な物は大量に購入しておく予定であり、Jumo004Bが枯渇するまでにこれを超える性能のエンジンが完成している可能性もあった。
大本営は型録を用い、戦略物資の供給、対潜哨戒の強化、四式戦闘機疾風・紫電改などの大量配備を急ぎ行った。
そして、大規模な飛行場があるパラオ諸島のペリリュー島に、固定砲台大和型戦艦の乗員を送り込み、設置場所の確定と目標となる目印の設置を行わせた。
目論見どおりその目印が型録の言う正確な場所となり、大和型戦艦の設置に成功したのだった。
パラオへは型録で購入できない物資を送り、兵器や燃料そして蒸留水や主食などは型録を用い現地に直接供給していき、米軍を迎え撃つ準備が整っていった。しかし米軍の戦力は圧倒的に多いため、水際で迎え撃つのではなく、洞窟陣地を活かした縦深防御が採用された。
それはペリリュー島でも同じ方針であり、固定砲台となった大和型戦艦もその方針に従い、持久戦に合わせた作戦を練っていくのだった。
ペリリュー島の大和型固定砲台の準備が行われる中、フィリピンでも戦力の増強が進んでいた。
ルソン島にも大和型戦艦が固定砲台として設置されることが検討されたが、パラオ本島と同様に十分な戦力がおり、武器弾薬も型録により十二分に供給されたため、ルソン島への設置は見送られた。
ルソン島・台湾・沖縄には陸海軍の航空機が続々と型録を用いて補充されていき、同様にドイツ製電探も各地に配備され、電探を活用した迎撃訓練や攻撃訓練が盛大に行われていった。
燃料・機体・弾薬の心配がないため、航空兵達は急速に練度を高めていった。
沖縄・硫黄島にも大和型戦艦は固定砲台として設置され、防備を固めていった。
ペリリュー島を含むこれら大和型戦艦は固定砲台の役目を終えた時、沿岸部に設置していることから撤収も可能なように考慮されており、艦の重量物を撤去し外側の土砂を取り除いた状態で、満潮時に移動できるようになっていた。
ペリリュー島に設置された大和型戦艦は、持久戦の方針から主砲以外は使わないと割り切っており、砲弾と装薬も主砲用のものだけが搭載されていた。
つまり、空襲を受けても一切反撃せず、艦砲射撃を受けても反撃の時まで耐え忍ぶ構えだったのである。
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