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インチキ呼ばわりされて廃業した『調理時間をゼロにできる』魔法使い料理人、魔術師養成女子校の学食で重宝される  作者: 椎名 富比路
第一章 女子魔法使いたちの春メニュー

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第7話 ダークエルフとカレー

「ですので、モクバさんの食材を抜きにして、わが校で学食は提供できません。どうか、お引取りを。お気持ちは、本当に感謝しています」


 誠心誠意、頭を下げる。モクバさんともども。


 何事かと野次馬たちも集まってきた。


「イクタおじー。おはよー。どうしたの?」


 その中には、プリティカの姿も。


「なんでもありません! 教室に戻って!」


「あ、ちょっとまって! オヤジ、なにやってんの!」


 父親の姿を見つけて、プリティカが詰め寄る。


「お前のために、食材を持ってきたんだぞ」


「余計なお世話だっつーの! 誰も、そこまで頼んでない」


 腰に手を当てて、プリティカは父親を責めた。


 それだけで、伯爵はシュンとなる。結構、娘に頭が上がらない様子だ。


「大事な娘が口にするものだから、食べ慣れた物がいいと思ってな」


「他の生徒は、食べ慣れてないじゃん」


 ど正論を突きつけられて、伯爵も黙り込む。


「それより早く帰って。通学の邪魔だし」


「コホン。わかった」


 騒ぎが大きくなって気まずくなったのか、伯爵が咳払いをする。


「では。イクタさん、みなさん、ご迷惑をおかけしましたな。今日は帰ります。では」


 馬車に乗って、伯爵は帰っていった。その姿は、どこかさみしげである。


「なんだ、あれは?」


「おおかた、ウチに会いに来る口実だけほしかったみたい」


「親と仲が悪いんだな?」


「うん。親の事業を継いだだけの田舎者のくせにー、エラそうなのー」


 仲良くできればいいが。


 

~*~



 プリティカは、的である木人に、ファイアボールを当てる。相手を父親だと思って撃ったら、木人の上半身が吹っ飛んでしまった。


「よ、よくできました」


 実技担当の教師の顔が、引きつっている。

 

 次の授業では、マンドラゴラの正しい扱い方を学ぶ。


 プリティカは土を掘って、三分の一だけ切り取った。


「そうです。後は強い生命力で、勝手に葉っぱが芽吹きます。引っこ抜くから、悲鳴を上げてしまうので」


 切っても悲鳴は出るのだが、土が防音の働きをしてくれる。


「ですが先生、葉を切ってしまっては、成長が止まってしまいます」


 生徒の一人が、質問をした。


「大丈夫ー。葉っぱさんはー、また生えてくるからー」


 マンドラゴラの成長度合いは、計り知れない。水と土さえあれば、また再生をする。にんにくをペットボトルで栽培するのと、同じ原理だ。


「ただ、季節だけには気をつけてねー。暑い寒いは苦手だからー」


 女生徒が、プリティカの解説に「おー」とうなる。


 だいたい、すべて実家で学んた知識なのだが。

 

 田舎魔王の伯爵は、単に先代魔王の遺産を引き継いだだけだ。

 もちろん、娘であるプリティカ自体もエラいわけじゃない。


 なのに、父親はふんぞり返っている。

 遺産を守るために必死なのだろうが、少々いきすぎな気もする。


 なんとか、彼の目を覚まさせられないか。

 


~*~



 その後、何事もなく昼食が進む。


「おじー、カレーほしー」


 食券を持って、プリティカが食べに来た。


「おいよ。そら」


 できたてのカレーを、プリティカに差し出す。


「ありがとー」


「でさ、おじー。頼みあるー」


「なんだよ?」


「カレーの作り方、教えてー」


 意外な頼み事だった。


「どうしたんだ? 料理はできるんだよな?」


「うまく作れない。おじみたいなカレーは難しい」


 実家にもカレーは存在するが、スープカレーだという。


「お前さん、カレーばかりで飽きないか?」


「別にー。郷土料理だもーん」


 カレーは、ダークエルフの伝統料理だとか。


「といっても、ダークエルフの作るカレーってめちゃ辛くてさー。ウチは食べられないんだよねー」


 そのとき、母親が作ってくれたのが、ニホン産カレーライスだったという。


「あれで辛さに慣れていってー。今でも大好きなのー」


「ダークエルフが作っているのは、本格的なヤツだな」


 ライスも使うだろうが、オレたちニホンジンが食ってるカレーはちょいと馴染んでいないんだろう。


 この娘は、舌が敏感すぎるのかもな。


 プリティカのカレー好きが、母親の影響だったとは。


「おじのカレーってさ、ママの作る味と近いんだよねー」


「そうか」


 なんだか、照れくさい。


「教えるのがムリならさ……オヤジに、食べさせてやってくれないかな?」


「そっちの方がいいかもな」


 オレは、プリティカの頼みを聞き入れる。


「ですが、よろしいんですの? なにか納得させられる、秘策なんかがあるとか?」


 デボラは言うが、オレは「ない」とキッパリと言い切った。


「ダメじゃありませんの。普通こういう展開になったら、とびっきりうまいカレーライスを作る流れなのでは?」


「そんなことをしてどうする? 伯爵には、いつものカレーを食べてもらう。そうじゃなかったら、学食を開く意味がない」


 学食は店ではあるが、繁盛すれば勝ちって場所じゃない。


 あくまでも、生徒たちにとっての憩いの場であるべきだ。


 それを忘れて、伯爵の舌に合わせたりなんかしたら、高級志向に走ってしまう。


「ここは、庶民も通うんだ。絶妙な金銭バランスで、成り立っている」


 だから、普通のカレーを味わってもらうんだ。


「それに、オレはこのカレーこそ、あの伯爵を納得させられると思っているんだよ」


「どうして? その確証はなんですの?」


「決まってんだろ。プリティカがうまいって、いってるんだからな」

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