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インチキ呼ばわりされて廃業した『調理時間をゼロにできる』魔法使い料理人、魔術師養成女子校の学食で重宝される  作者: 椎名 富比路
第一章 女子魔法使いたちの春メニュー

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第6話 親による、野菜の押し売り

「あなたはご自身がなんのために、この学院に入ったかお忘れなのですか?」


「お忘れでーす」


 舌打ち半分で、プリティカは答えた。


 クリッティカーが私立リックワード女学院・魔法科学校に入った目的は、潜伏である。


 だが、それは表向きだ。実際の理由は、人間の学校に入りたいから。


 父に言われてこれ幸いと、プリティカは俗世に触れまくっている。


 中でもイクタおじさんのカレーは、今まで食べたことのないおいしさだ。


「クリッティカー姫。人間界を見て回るのは、あくまでも我ら魔族が主権を掌握するための情報収集が目的。俗世とのお戯れは、今後お控えなさるように」


「うるっさいなー。くっだらないって」


 リリムの説教には、毎回うんざりする。


「あなたのお母上からも生前、姫様の教育をお願いされております。どうか、この口うるさいメイド長の言葉をお聞きくださいませ」


「くださいませんー。だいたいウチ、妾のコじゃーん」


 ダークエルフ族の姫だった母を父が気に入って、生まれたのがプリティカである。母は父を慕っていたが、プリティカは父が好きではない。頭の硬いお貴族様なところが、プリティカには気に食わないのだ。


 異種族のきょうだいからは、半々で愛情を受けている。半分は異文化に興味津々なグループ。もう半分はリリムのような小言を言ってくる。「魔王の娘なんだから、もっとしっかりした子になりなさい」と。


 妾の子に期待されても、困るだけなんだが。 


 プリティカが求めているのは、自由だ。


 生徒たちも、キライではない。同年代の魔族はみんな、マウント取りに必死で退屈だった。それに比べたら。他愛のない、中身もない会話の素晴らしさよ。


 なのに魔族たちは、未だ偏見にとらわれている。


「あんたもあのおじのカレーを食べてみたら、わかるってー」


「カレーライスを、ですか? あんな邪道な食べ物、我が故郷の料理と比べたら……ひっ!」


 プリティカがひと睨みすると、リリムはさっきまでの威厳を保てなくなった。


「おじさん」のカレーを侮辱するなら、同胞であろうと許さない。


「いいから、食べてみなってー」


「なりません。失礼いたします」


 リリムが、姿を消した。


 元の妖艶な笑顔に戻って、下校を開始する。


 ああ、くだらない。こんなしがらみを抱えて、生きていかなければならないとは。毒親を持つ身は大変だ。


 カレーは中に、スパイスや具材がすべてが溶け込んでいる。


 もっとそんなふうに、種族間で仲良くできたらいいのに。



~*~

 


「ですから、何度も申し上げているとおりでして」


 朝早く倉庫を見ると、なにやら学校関係者が誰かと揉めていた。


 相手は……貴族か。めんどくさそうだな。隣に陣取る馬車に、大量の野菜が積んである。


「ああ、イクタさん! ちょうどいいところに」


 うわあ。飛び止められちまったぁ。


 関係者は貴族に、オレを料理人と告げた。もう逃げられねえ。


「実はイクタさん。こちらの方が、わが校に食材を提供したいと願い出ていまして」


 食材をくれる貴族様は、地球で言えば新進気鋭の若手実業家のような見た目をしていた。舐められないように、身なりを整えている感がバリバリ伝わってくる。だが、若い頃はやんちゃクレだったのだろう。貴金属をジャラジャラと。


「いいじゃないですか」


 タダより怖いものはないというが、別にもらって損するものでもなさそうだ。


「それが、困るんです。どれも高級食材でして」


「となると、話が変わりますね。見せてください」


 たしかに、ジャガイモやニンジンなどの品に至るまで、無農薬を使っている。


 これは、参ったね。


「わが娘が、食べるのです。安全なものを食べさせるのは、親の努めかと思いまして」 


「ですが、アルフェ伯爵。お気持ちだけいただきたく」


「なにがご不満なのですかな? 無償で提供いたすと、申しておりますのに」


 アルフェ伯爵だって。


「失礼ですが、あなたのお嬢さんってのは、もしかして」


「はい。我が娘の名は、クリッティカーといいます」


 やっぱり。しかし、彼の肌の黒さは、プリティカとは違うな。目の色も、プリティカの青と違って金色だ。


「このアルフェが魔族なので、偏見を持たれておいでか?」


「とんでもない! ですが、とてもいただくわけにはいきません」


「あなたは、どうなのです? イクタ殿とやら」


 オレは、相手にジャガイモを見せる。


「結構な逸品です」


「でしょ? 我が農園が技術の粋を集めて手を尽くした作物です」


「だからこそ、子どもたちにはあげられない」


「ほ、ほう」


 そもそも、安い値段で提供している。


「うちには平民も、魔法を習いに来ます。彼女たちが食べられなくなるのは、大変だ」


「ですから、無料で」


「ムリです。うちには、既に契約している農園があります。ねえ、モクバさん」


 ノッシノッシと、ウッドゴーレムが「お待たせしました~」と顔を出す。


「実はわが校の学食は、わたしのお野菜や調味料を使って、最適化されているのですよ~。栄養素もそうですし、彼女たちの魔力回復量も、すべて計算し尽くしているのです~」


 もし野菜が変わってしまうと、また一から料理をカスタマイズし直す必要が出てしまうのだ。

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