8.銀髪僕っ子クールビューティーに不足なし。
前回のあらすじ。
お面店長に買い出しを頼まれた真冬と、
一緒に行くことになりました。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!
心臓の音が、とにかくうるさい。
緊張のせいなのか、体のあちこちから汗がじんわりでる。
それもそのはずだ。だって今、僕は……
「ここが、いつも買い物してるとこ。店名だけでも覚えといてよ。道に迷った時とか、検索すれば出るから」
綺麗な髪が、目の前を掠める。
聖明音、26歳。現在、好きな人と二人きりです。
なんでこうなったのか、今でもよくわからない。
とはいえこれは仕事の買い物だ、デートとかそういうのではない。
そう自分で言い聞かせていないと、気が気でないのだ。
隣に、目の前に、青天目さんがいる。
そう思うだけで、ドキドキが止まらない。
今まで那月さんとか、誰かがいるのが普通だったのにー
「ここ、調味料も自分で作ったものをだしてるから。この店のじゃないと、味が引き出せないとかであの人がうるさいんだよね」
それにしても、綺麗だなぁ……
他の女性と比べても、彼女だけは一段とキラキラ輝いてるようにみえる。
あ、今日はピアス、雪の結晶なんだ。可愛いなぁ。
ほのかに薫る香水は、柑橘系……かな。確か、那月さんからも同じ匂いがしたから、彼女とお揃いとかなのかなぁ……?
「で、珈琲豆なんだけど………聞いてる?」
はっ! しまった、ついうっかり!!
こ、こういう時は……!
「す、すみません!! あまりの綺麗さに見惚れて、聞いてませんでした!!!」
聞いていた、なんて嘘を言ったところで、バレた時がさらに怒られるだけ。
だから包み隠さず、本当のことを言えばいい!
それが、僕のやり方だった。今までも、これからも。
「……それ、わざわざ僕にいう必要ある?」
けれど彼女は、変なものを見るような目で少し顔を顰めさせる。
きょとんとしてる僕に対し、彼女は諦めたように調味料を一瞥しだした。
「君っていい意味で真面目だよね。見惚れてたって、普通は正直にいわないと思うけど」
「だ、だって、本当のことですし! 僕としては二人きりってだけで、気が気じゃないんですから!」
「……前から気になってたけど、なんでそんなに好きなの? 僕のこと」
不意に聞かれ、へ? と声が漏れる。
彼女はあえて僕から目線を逸らし、買う予定のものをセルフレジで通していった。
「普通、男子なら女性らしさがある人が好きでしょ? 那月みたいに、優しくて明るい子とか……僕のどこがいいのかなって」
「確かに那月さんも魅力的な方ですけど……青天目さんには、他の誰にも真似できない魅力がたくさんあります!!」
「たとえば?」
「全部です!!!!!!!」
すごく低い、は? という声が聞こえた気がする。
それでも僕は、なおも続けてみせた。
「まず、銀髪って容姿が最強ですよね! 休憩中に本読んでるの見た時は、もう絵画かなって思ったくらいで! 何度も見惚れちゃいました!」
「………ちょ、君……」
「あと、冷たいように見えて、すごく優しいところ! この前、メニュー覚えきらなかった僕に、さっと助けてくれましたよね!! あれ、かっこよかったなぁ」
「聖ってば」
初めてちゃんと名前を呼ばれた気がして、嬉しさに思わずはいっ! と大きく返事する。
瞬間、視界が急に真っ暗になる。
それが買った荷物だということに気づき、なんとかどかそうとする。
が、意外にも力が強い。まるで、押さえ込まれてるようだ。
それでもなんとか隙間を掻い潜り、彼女の顔をみてみるとー
「それ以上は恥ずかしいから……やめて………」
赤らんだ頬、困ったようにさがる眉。
ひと目見てわかった、照れているということ。
今まで見てきた彼女と、違う。可愛らしくて、なんとも女の子らしい……
「そんな小っ恥ずかしいことを堂々と言えるよね……那月が面白いって言ってた意味、ちょっとだけ分かった気がする」
「あのぉ、ひょっとして青天目さん……照れてます……?」
「照れてない」
「照れてますよね!? せっかくかわいいのに!!」
「かわいいとかいうな」
「だってほんとのことですもん。もっと好きになっちゃったかも、なんて」
彼女の足が、ふいに止まる。
あまりの唐突さに、僕は首をかしげる。
すると彼女は、まるで意を決したかのように、何か言おうと口を動かす。
「どうしました? 青天目さん」
僕の問いに、彼女はハッとする。
瞬間、唇をきつく結んだ彼女は、僕から目を逸らしてー
「……別に、なんでもない」
一瞬にして、彼女は背を向ける。
なんだろう、今の。 さっきまでと、違う顔だったようなー……
そんな違和感を抱きながらも、足早に行く彼女の後ろ姿を、急いで追いかけたのだった。
(つづく!!)
おまけの小ネタ⑦
二人が買い出しに行った頃、お店ではー
お面店長(黄河)「………暇だな( '-' )」
那月「お客さん、全然こないね〜。あの二人、今頃どうしてるかなぁ〜」
お面店長「あいつのことだ、どーせ冷たくあしらってんだろ」
那月「え〜、でも真冬、優しいとこあるんだよ〜? 私と歩くときは、いつも自然に車道側を歩いてくれるし! この前なんて、うちが眠れなくて困ってるって相談したら、ハーブティーくれたんだよ〜(*^^*)」
お面店長「……それ、本当に真冬か?( ・᷄-・᷅ ) 俺の時なんか、荷物は重いのもたすわ、コーヒーの味が違うからもっかいつくれだわ、喧嘩しかふっかけてこねぇぞ( ・᷄ὢ・᷅ ) 」
那月「真冬、こう君には厳しいからね〜でも、それも真冬の良さじゃない?」
お面店長「なんか思い出しただけで腹立ってきた(・-・ꐦ) 帰ってきたらとっちめるか」
那月「もぉ、そんなこといわないの! なんだかんだ仲良しなんだから」
同時刻、明音&真冬はー
真冬「……なんか、すごい悪寒がする……誰か噂してるな……?( ・᷄-・᷅ )」
明音「どうかしました? 青天目さん」
これでもヒロイン枠です。ε-(`・ω・´)フンッ




