7.強制イベント発動予告。
前回のあらすじ。
親睦会してみんなと少し仲良くなりました。
「へへ、うへへへへへへへ」
頬の緩みが、止まらない。
何度閉じても、開いても夢じゃないことが確認できる。
それが嬉しくて、携帯を開くと毎日の日課のように見てしまう。
何度見ても、やっぱりいいなぁ……
「随分ご機嫌だね」
その声に、思わずはっとする。
慌てて直そうとするも、手元がばたついて思うように動かない。
挙げ句、持っていた携帯を落としてしまい、その画面が彼女の目に入ってしまって……
「ち、違うんです!! これはそのっ、連絡先が交換できたのが嬉しかっただけで!! け、決して他意はないんです!!」
「別に何も言ってないでしょ」
僕の見苦しい言い訳にも気にせず、彼女ー青天目さんははいっと携帯を差し出してくれる。
どうも、明音です。先日、とても嬉しいことがありました。
そう、ついに好きな人である青天目さんと、連絡先を交換したのです!!!
「明音君ってば、最近休憩中もずーっと携帯見てたんだよ? ほんと、可愛いよね〜」
一部始終を見ていた紫藤さんが、台所からニコニコ笑顔で喋りかけてくれる。
ことの発端は数日前、親睦会の時。
遅くなるとか、ゆっくり来ていいとかの連絡が取れなかった僕に、紫藤さんから声をかけてくれた。
最初は紫藤さんだけかと思っていたのだけど、仕事柄みんなと取れた方がいいと、彼女が機転をきかせてくれたのだ。
本当、何から何までありがたい……
「……君、本当変わってるよね。連絡先一つでそこまで喜べるなんて」
「す、すみません、お見苦しいところをお見せしました。あ、おはようございます、青天目さん、紫藤さん」
「あ、まぁた苗字呼びに戻ってる〜ダメだなぁ、ルールは守ってもらわなきゃ」
痛いところをつかれ、思わずうっとうなる。
この店で働く以上、タメ語かつ名前呼び。そんなルールがある。
そりゃあ年は僕のほうが上だけど、職歴的には全然先輩な二人を呼ぶには気が引ける。
相手が相手だと、尚更なぁ……
「そーだ、せっかくだし練習しよーよ。なーつーき、はい」
「えっ、えっと……な、那月、さん??」
「さんもいらないんだけど……まいっか! じゃあ次、まーふーゆっ」
後に続いて、とばかりに彼女ー那月さんが笑う。
心なしか、彼女の目線が僕に向いているような……そんな気がして……
「ま、ままふ、まふふふ」
「わりぃ、ちょっといいか?」
「まひゅにゅしゃん!!!」
ほぼ同時に、休憩室がある部屋のドアが開く。
見事に噛んだ僕に対し、彼ー店長さんは
「何やってんだよお前らは」
とあからさまに不機嫌そうな声で答えた。
いつもとかわらない、鬼の面。それでも怪訝な顔をしていそう、というのは声だけでわかる。
恥ずかしさで何も答えられない僕に変わり、那月さんがてへっとウインクしてみせた。
「いやぁ、なかなか明音君が名前呼びに慣れてくれないから、練習してたんだよぉ〜ね、明音君」
「その割には盛大に噛んでなかったか?」
「す、すみません、ちゃんと呼べなくて……あ、あの、やっぱりもう少し、時間を……」
「呼び方なんて人それぞれなんだし、気にしなくていいよ。むしろ無茶振りする那月が悪い」
「あはは、ごめん。ちょっと意地悪しちゃった。それで店長、どうしたの?」
「ああ、そうだった。倉庫の在庫が底を切らしそうなんだ。買い出し、頼まれてくれね?」
店長さんは、思い出したようにポケットから一枚の紙を取り出してみせる。
そこには、コーヒー豆や砂糖など、店で使いそうなものが乱雑に書き殴られていた。
なるほど、自分たちで買ってるのか。
てっきり業者さんに頼んで、郵送してもらったりすると思っていたのだけれど。
ここでは資材調達も、自分たちでするんだなぁ……
「……で、なんでこれを僕に渡すわけ?」
呑気に思っている僕に対し、彼女ー青天目さんは怪訝に顔を顰める。
店長さんが持っていたなぜかその紙はまっすぐ、青天目さんの方へ差し出されていたからだ。
それでも店長さんは、あっけらかんとした様子で
「当番がお前だから」
と、さらっと告げた。
この店では、掃除や買い出しなど、雑用系は三ヶ月交代の当番制にしてるらしい。
なんでも、公平をきすため、なんだとか。
店の壁には名前が描かれた円グラフが貼られており、気がついた頃には確認に青天目さん見に向かっていた。
「確かにそうだけど、そもそもなんでこんなに切らしてるの? 在庫確認担当、君になってるんだけど」
「あーー、色々立て込んでて忘れてた」
「へえぇぇぇぇぇ?」
「そんなに怒るなって。流石に俺も、女一人に買ってこいなんて無理は言わねえよ。だから聖、お前も行ってこい」
「………えっ、僕ですか?」
僕にくると思わず、1テンポ返事が遅れてしまう。
そんな僕に構うことなく、店長は罰が悪そうに頭を掻いた。
「ほら、こういうのは男手が必要だろ? こいつも時期に当番回そうと思ってるし、実際に行ったほうが覚えるだろ」
「な、なるほど……それなら、僕一人でもいいと思いますけど……」
「それがさぁ、うちの素材結構凝ってるから、初見じゃわかりづらいんだよね〜。てことで、二人で行ってきなよ!」
……ん?
「ほら、二人で行けばこんなに買っても問題ないし、明音君も仕事を覚えられる! まさに、一石二鳥♪」
「………那月、わざとやってるでしょ」
「そんなことないって! これも仕事の一環なのは間違いないんだしさ。店のことはうちとなる君に任せて、行ってらっしゃい!」
なんだか、ほぼ強引に話が進められた気がする。
考える間もなく、あっという間に僕は店の外に押し出されていた。
えっとぉ、これってもしかして……もしかしちゃいます……?
恐る恐る隣を見ると、そこには銀髪のショートカットがため息まじりに揺れていてー
「面倒なこと押し付けられたね、お互い」
切れ長の目が、誰でもない僕に向けられている。
やっぱりそうだ、と思えば思うほど体の芯から熱くなっていく。
「いくよ」
もしかして僕、青天目さんと、二人で買い出しってことぉ!?
(つづく!!)
おまけの小ネタ⑥
お面店長(黄河)「つーわけで買い出し頼むわ」
明音「あ、あの当番制って言ってましたけど、他になんの当番があるんですか?」
那月「えーっと、在庫確認とかSNSとか……色々あるけど、最近は固定されてるのが多いんだよね〜(*^^*)」
明音「固定?」
那月「例えばうちがスイーツ作りで、店長がコーヒーとか。ちなみに、真冬はBGM担当で、ここで流れてる音楽は大体真冬の私物だよ♪」
明音(す、素敵……!⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅ )⁝)
真冬「余計なこと言わないでよ、那月。で、彼には、何させるの?」
お面店長「聖か。聖は……( -᷅_-᷄ ก)
明音「(っ ॑꒳ ॑c)」←期待の眼差し
お面店長「…………雑用?」
明音「えっ、雑! 作るの面倒になってませんか!?」
勝手に就任、雑用係( •̀ω•́ )




