6.テル・ミー・ユー・モア!!
お休みの日に呼び出されたと思ったら
親睦会でした。
四つのコップと、大きな皿が机に並ぶ。
それぞれの椅子に腰掛け、準備万端とばかりに店長へ視線を向ける。
みんなの視線がきまずいのか、店長はわざとらしく咳払いをしつつ、お面を前の方へと向けてしまう。
「んんっ。えーっと、なんだっけ。本日はお日柄もよく、だっけか?」
「あはっ、店長ってば。それ、結婚式の挨拶だよ?」
「あ? そうなのか? じゃあお集まりいただき……なんか堅苦しいな、やめた」
「随分と締まらない挨拶だね」
「うっせ。ともかく、聖。ようこそ、アルカンシエルへ」
三つのカップが、僕のカップとぶつかる。
その優しさに、思わず僕は少し頭を下げた。
本来なら、今日はお休みの日。その夕方にわざわざ呼び出された理由は、なんと親睦会だった。
正直開かれると思っていなかったから、驚きの方が強いけど。
お酒やソフトドリンク等の飲み物だけじゃなく、クッキーやマフィンのようなお菓子……これでもかってほど用意ができている。
わざわざ僕のために用意してくれたと思うと、頭が上がらない。
ここまでしてくれるなんて、なんだか申し訳ないなあ。
「みんな、飲み物何飲む? コーヒーにお茶、ジュースもあるよっ」
「ホットコーヒー。ブラックでお願い」
「あ、あの! 僕が注ぎます!!」
「だーめ、主役なんだから座ってて。店長はどうする? 今日はお酒もあるよぉ?」
「んなの生一択だろ。せっかくの機会だ、お前も飲むだろ那月?」
「あったりまえじゃん! 今日はとことん付き合っちゃうよ〜」
そういいながら、紫藤さんがビールを注いでゆく。
お面をつけているのにどう飲むのかと見てしまったが、絶妙に口元だけずらして飲んでようにみえた。
そこまでして、素顔を見せないつもりなんだろうか。
人見知りって言ってたけど、その割に2人とは仲良いんだよなぁ……
「あの、皆さんってすごく仲良い、ですよね。お互いに呼び捨てだったり、店長さんにタメ……だったり。お付き合い、長いんですか?」
「あれ、そういえば聖君に話してなかったっけ? うちの店、ちょっとかわったルールがあるんだよ」
「ルール、ですか?」
「相手が年上でも先輩でも、敬語禁止、名前呼び強制! ってやつ」
ああ……なるほど、それで……
ん? ちょっと待って?? ってことは……青天目さんのことを名前で呼べ、ってこと!?!?
「無理です! 無理無理無理!」
「あー、聖君もしかして名前呼びに時間かかるタイプ? 大丈夫だって、慣れちゃえば意外と簡単だから」
「そう言うことじゃなくてですね!?」
「そもそも、このルール自体意味不明だけどね。なんでこんなルールにしたの? 言い出したの、君だよね?」
「あ? 苗字ってなんか距離遠い感じがして嫌だろ? あとお前らの苗字呼びにくい」
な、なんとも微妙な理由づけ……
そういえば昔、こうにも同じこと言われたような……
「呼びにくいんだったら、自分のこと話していくのはどうだ?」
「自分のこと、ですか?」
「互いのこと知れば、少しは呼べるようになると思って。ほら、真冬のことも知れるし一石二鳥だろ?」
な、なるほど!! 店長さん、ナイスアイデア!!
「え、えっとじゃあ僕からいきますね。僕の誕生日は、四月十日で牡羊座です! お散歩とか歩き回るのが趣味で、お休みの日は友達とカフェ行ったりしてます!」
「……随分語るね」
「相手を知るには、自分からって言うので! 青天目さんは、お休みの日とか何してるんですか?」
忍ばせておいたメモを手にとり、期待の眼差しで彼女を向く。
こっそり、自分が知りたいことを混ぜたのは、彼女をしれるいい機会だと、店長がいってくれたおかげだ。
その勢いに諦めたのか、彼女ははぁっとため息をつくと、
「読書」
と、最低限事項だけ告げてしまって……
「え、それだけ!? あ、あの誕生日とか、星座とか……」
「じゃあ北極座で」
「そんな星座ないですよ!?」
「真冬の誕生日は、十二月二十日のいて座。趣味は読書で、お休みの日はほとんど本読んでるよ?」
ちなみに今の言葉は、もちろん彼女ではない。
青天目さんのより鋭い眼差しが、向けられる。
それなのに彼女ー紫藤さんは、にっとウインクをしてみせた。
「ごめんねぇ、聖君。真冬ってば、いっつもこんな感じだから」
「……那月」
「そうやって自分で壁作るの、真冬の悪い癖だよ? せっかく聖君が自分から言ってくれてるんだし、真冬のことも教えてあげないとフェアじゃないじゃん? それにぃ、聖君が知りたいのは真冬のことだしねっ」
「……勝手にしたら」
「はーい。えーっと、どこまで話したっけ。そうそう、真冬はとにかく本が好きでね。主に文芸書とか、専門書を読んでるかな? あと、いろんな音楽きいてる! 洋楽とか、クラシックとか!!」
「へぇ〜、お詳しいんですね」
「うち、真冬と家が隣同士なんだよ〜幼馴染ってやつ? だから、真冬のことならなんっでも聞いて! 大体答えられるから!!」
「那月の誕生日は九月十五日、乙女座。スイーツ作り担当。僕と違って、ヘアアレンジとか、いかにも女子ってのが好みだから。あと無駄にSNS見てる暇人」
「おっ、やるねぇ」
淡々と毒を吐く青天目さんに、紫藤さんが意地悪そうに笑う。
やっぱりこの2人は対照的だ。同じ女子なのに、こうも違うのかと思うほど。
それでも仲の良さが垣間見えるのは、幼馴染故なのだろうか。
幼馴染……家が隣同士……い、いいなぁ……
「ちなみに、お面店長の誕生日は六月二十七日生まれのかに座。趣味はカフェ巡りで、暇さえあれば他店舗のコーヒー飲み漁ってるんだって」
「っ、おいこら真冬。勝手に人の誕生日いうな。プライバシーの侵害だろ!」
「この期に及んでそれはないでしょ」
ふむふむ、店長さんの誕生日は六月二十七日っと……
こうと同じなんだ、こんな偶然あるんだなぁ。
「店長ってほんっとかわっててさ。ぶっちゃけていうと、コーヒーよりお酒派なんだよ?」
「ふふっ、面白いですね」
「あーーもういいだろ俺のことは。それより、少しはいけそうか?」
「時間はかかると思いますが……僕なりに頑張ります!」
「うんうん、その意気その意気! じゃあうちも、今日から明音君って呼ぼっかな? ね、真冬」
「はいはい、よろしくね聖」
「おい、真冬!!」
3人の、たわいない会話が弾む。
ほんの少し、みんなとの距離が縮まったような、そんな夜だった。
(つづく!!)
おまけの小ネタ⑤ 親睦会後……
那月「そういえば明音君、スマホ持ってる? メアド、交換しようよ( ^ᵕ^)」
明音「えっ、いいんですか!?。゜ .(*゜▽゜*)゜ .゜」
那月「連絡できないと、今回みたいなことがあったら困るでしょ? 待ってねぇ、今QRコード出すから」
明音は、那月の連絡先を手に入れた!!
那月「はい、これでオッケー!」
明音「あ、ありがとうございま……」
那月「あとこれっ(ノ◕ω◕)ノ➰➰」
明音は、真冬の連絡先を手に入れた!!
那月「真冬のやつも教えとくね? お休みとか、遅れるとかの連絡はみんなあった方がいいでしょ?( •ω- )☆」
明音「ああああありがとうございます!! 嬉しいです!!!⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅ )⁝」
那月「ほんとは店長のもって言いたいんだけど……店長、携帯持ってないからさぁ」
真冬「……入れると即バレするもんね、正体( '-' )」
お面店長(黄河)「勝手に言ってろ、あいつ全然聞いてねぇから」
単純な男。




